作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

肩甲骨骨折後遺症

肩甲骨骨折の後遺症(後遺障害)には何がある?|治療や手術は必要?

肩甲骨骨折の後遺障害って?
この記事のポイント

肩甲骨骨折により肩関節が動かせない、肩甲骨の変形、痛みやしびれなどの後遺障害が残ることがある

肩関節が動かせない後遺障害等級は、関節の可動域で決定する

可動域などによって後遺障害等級が決まり、それにより慰謝料の金額も決まる

肩甲骨(けんこうこつ)は、背中側の肩の部分についている逆三角形の骨です。
多くの筋肉によって補強されていますが、交通事故など強い衝撃を受けた際に骨折することもあります。
肩甲骨が骨折した場合、骨折自体が治癒しても後遺障害が残ってしまうかもしれません。
それぞれの症状がどのようなものか、後遺障害等級何級になるのかを解説していきます。

  • 肩甲骨骨折の後遺障害にはどのようなものがある?
  • 肩関節を曲げられない後遺症の等級はどのように決まる?
  • 後遺障害が残った場合に受け取れる慰謝料はいくら?


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交通事故の肩甲骨骨折はどのようなもの?

肩甲骨は背中から肩にかけて位置する骨であり、肩関節や肩鎖関節などを構成しています。
損傷しにくい部位ですが、交通事故などで大きな衝撃があると、その他の骨と一緒に骨折してしまうことがあります。

肩甲骨骨折の症状

肩甲骨の骨折によって、以下のような症状が生じます。

肩の後方部分の痛み

肩の後方部分が青黒く変色する

痛みで肩や肘を動かすことが出来ない

また、肩甲骨単独で骨折が発生することはまれです。
その他に鎖骨の骨折や肩鎖関節脱臼、腱板損傷など、様々な外傷を伴います。

肩甲骨骨折の治療&手術

肩甲骨は周囲を筋肉に囲まれているため、骨折しても骨の安定性は保たれやすくなっています。
また十分な血流により、多くの骨折は肩を固定して治す保存療法が一般的で、手術することは稀です。
骨が固定されたならば、運動療法や温熱療法などのリハビリを行います。

肩甲骨骨折の後遺症(14段階区分)

後遺症(後遺障害)

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状。
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される。

通常、肩甲骨のみの骨折であれば骨もくっつきやすく、後遺症(後遺障害)が残ることはまれです。
なおその他の部位の骨折などの影響もあり、次のような後遺障害が残る場合があります。

肩関節を動かすことができない

肩甲骨が変形する

痛みやしびれが残る

肩甲骨骨折で受け取ることのできる慰謝料はいくら?

後遺障害が残った場合に支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

慰謝料金額相場の3基準比較

後遺障害等級に認定されると、その等級に応じて後遺障害慰謝料を得ることができます。

後遺障害慰謝料を含む慰謝料には、3つの算定基準があります。

自賠責保険での金額算定に使われる自賠責基準

各保険会社での金額算定に使われる任意保険基準

過去の裁判例に基づいた弁護士基準

それぞれの後遺障害でいくらの金銭を受け取ることができるのかは次の章で紹介します。

肩甲骨骨折で後遺障害等級を認定してもらうには?

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
怪我から約6カ月経った時期が判断の目安とされています。

②後遺障害診断書の用意

症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
その提出方法には、2種類あります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ

被害者は後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する事前認定

被害者自身が資料を用意して自賠責保険に提出する被害者請求

被害者請求は手間がかかりますが、資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる

③損害保険料率算出機構が後遺障害等級を審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
また提出された審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。

後遺障害等級は原則として書面のみで審査されるため、提出書類は非常に重要です。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。

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肩甲骨骨折による「肩関節が動かせない」後遺障害

イメージ画像

肩関節が動かせない後遺症は後遺障害何級になる?

関節付近の骨を損傷してしまうことで、関節が動かせなくなってしまうことがあります。
特に肩甲骨のみならず、鎖骨や肩鎖関節脱臼などを生じていると肩関節の可動域制限が生じることがあります。
その場合に該当する後遺障害等級は以下の通りです。

後遺障害等級
86
上肢の3大関節中の1関節*の用を廃したもの
1010
上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
126
上肢の三3関節中の1関節の機能に障害を残すもの

*肘・手首関節にも障害が生じている場合は、より上の後遺障害等級が認定される

用いられている専門用語をわかりやすく言い換えると、以下のようになります。
なおここでの角度は、主要運動である屈曲(体の前面で腕をあげる動き)・外転(体の側面で腕をあげる動き)のものです。
(もう一つの主要運動である内転運動は常に0度となる)

用語

関節の用を廃す

… 関節がまったく動かない~または障害のない関節と比べ可動域が1/10程度以下のもの

(肩関節では目安として屈曲20度以下、外転20度以下両方の基準を満たす)

関節の機能に著しい障害を残すもの

… 障害の無い関節と比べ可動域が1/2以下のもの

(肩関節では目安として屈曲90度以下、外転90度以下いずれかの基準を満たす)

関節の機能に障害を残すもの

…障害の無い関節と比べ、可動域が3/4以下に制限されているもの

(肩関節では目安として屈曲135度以下、外転135度以下いずれかの基準を満たす)

さらに、可動域がわずかに基準を上回る場合であっても、等級に認定されることがあります。
その場合、伸展(体の背面に腕をあげる動き)の角度と外旋と内旋の合計値(床と並行に腕を移動させる動き)の角度のどちらかが基準を満たす必要があります。

可動域1/2制限の超過が10度までの場合

…障害の無い関節と比べ伸展の可動域が1/2以下(肩関節では目安として25度以下)、または外旋と内旋の合計値が1/2以下(肩関節では目安として70度以下

可動域3/4制限の超過が5度までの場合

…障害の無い関節と比べ伸展の可動域が3/4以下(肩関節では目安として40度以下)、または外旋と内旋の合計値が3/4以下(肩関節では目安として105度以下

以上の情報を簡単にまとめなおすと、以下のようになります。

まとめ

肩甲骨骨折により肩関節*が動かせない症状

等級 内容
86 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/10程度以下
1010 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/2以下
126 障害の無い関節と比べ関節の可動域が3/4以下

*ここにある基準を超えても、等級が認められる場合もある

なお、角度については

他者が手を添えて曲げた角度(他動値)で比較を行う

角度は5度単位で切り上げる

ことになっています。
つまり、後遺障害診断書に以下のような記載があれば誤りということになります。
×「屈曲、他動値で92度」(正しくは「屈曲95度」)
また、誤りが疑われる記載には以下のようなものがあります。
×「外転、自動値で70度、他動値110度」(他動値は自動値+5度が目安であり、痛みを無視して関節を動かした恐れがある)

肩関節が動かせない後遺症の慰謝料はいくら?

後遺障害等級に応じ、後遺障害慰謝料が支払われます。
肩関節が動かせない後遺障害の等級に応じた後遺障害慰謝料額は、以下の通りです。

後遺障害慰謝料

肩関節*が動かせない

等級 自賠責基準 弁護士基準
86 324万円 830万円
1010 187万円 550万円
126 93万円 290万円

*肩関節以外に手首・肘関節にも可動域制限がある場合はより上位の等級が認定される

どの等級であっても、自賠責保険の基準よりも2倍以上の金額を請求することが可能です。
また、等級が大きくなるほどに増額幅も大きくなりますので、重篤な後遺障害が残った時こそ弁護士への依頼が有利になります。

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肩甲骨骨折による「肩甲骨の変形」の後遺障害

肩甲骨の変形は後遺障害何級になる?

まれなことですが、骨折した肩甲骨がくっつく際に通常とは異なる位置でくっつき、肩甲骨が変形することがあります。
その場合に認められる後遺障害等級は以下の通りです。

後遺障害等級

肩甲骨骨折による肩甲骨の変形

125
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

ここでいう「変形」とは、裸体になったとき変形が明らかにわかる程度のものであることが必要です。
例えば、レントゲンなどで変形が発覚する程度のものでは12級に該当しません。

肩甲骨の変形の慰謝料はいくら?基準次第で290万円にも

肩甲骨の変形の後遺障害等級に応じた後遺障害慰謝料額は、以下の通りです。

後遺障害慰謝料

肩甲骨骨折による肩甲骨の変形

自賠責基準 弁護士基準
125 93万円 290万円
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肩甲骨骨折による「痛み・しびれ」の後遺障害

肩甲骨骨折の痛み・しびれは後遺障害何級になる?

以上の様々な後遺障害に該当せずとも、骨折によって肩や手などに痛み・しびれが残っている場合は後遺障害として評価されることがあります。
その場合に認められる後遺障害等級は以下の通りです。

後遺障害等級

肩甲骨骨折による痛み・しびれ

1213
局部に頑固な神経症状を残すもの
149
局部に神経症状を残すもの

ここでの等級は、主に検査結果やレントゲン・MRI画像など他覚的所見があるかで決定します。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
そのため、等級認定を目指す場合は必ず後遺障害診断書検査結果を記入し、また画像所見を同封するようにしましょう。

肩甲骨骨折の痛み・しびれの慰謝料はいくら?

骨折による痛みやしびれの後遺障害等級に該当する後遺障害慰謝料は以下の通りです。

後遺障害慰謝料

肩甲骨骨折による痛み・しびれ

自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円
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肩甲骨骨折で後遺障害が複数ある場合は?

肩甲骨骨折はその他の骨折を伴いやすく、複数の後遺障害が生じる場合があります。
たとえば、肩関節が動かない症状(10級10号)、鎖骨の変形(12級号)、肩に痛み(14級9号)が残った場合、最終的な後遺障害等級はどうなるのでしょうか。
そのように複数の後遺障害がある場合、併合というルールが用いられます。

後遺障害の併合ルール
存在する後遺症 併合の結果
5級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を3つ繰り上げる
8級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を2つ繰り上げる
13級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を1つ繰り上げる
14級の後遺障害が2つ以上残存 14級のまま
それ以外 最高等級を後遺障害等級とする

先ほどの例では13級以上の後遺障害が2つ以上あります。
よってルールに基づくと、重い方の等級が1つあがるため併合9級として扱われます。

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肩甲骨骨折の後遺症についてのご不安は弁護士にご相談ください

LINE相談

実は肩甲骨骨折に限らず、後遺障害等級を認めてもらうのは簡単ではありません。
原則として後遺障害等級は書面のみで審査を行うため、過不足のない後遺障害診断書を作ってもらわなければなりません。
医師は治療のプロですが、治療後に残る後遺障害にも精通しているとは限りません。
そのため、しばしば記載上の不備や検査結果の不足などで後遺障害慰謝料が受け取れない、ということになるのです。
後遺障害診断書に必要な記載は何か、するべき検査は何か、相手方から提示された慰謝料額は適切か…そのようなお悩みはアトム法律事務所にご相談ください。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

全国10事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業依頼、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2019年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。