作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
症状固定とは?慰謝料・後遺障害診断書と関連?むちうちは3か月で症状固定?
症状固定は、交通事故の解決において重要な意味を持ちます。
- 治療
- 後遺障害(後遺症)
- 慰謝料
被害者にとって、どれも気になるものばかりです。この3つに症状固定は深く関連しています。
- 症状固定とは?何が変わる?
- 診断書で後遺障害申請、どうすれば?
- むちうちは3か月で症状固定?慰謝料はいくら?
症状固定の定義を確認することから、順番にみていきましょう。
目次
症状固定・症状固定日は治療費・後遺障害・慰謝料の3つにかかわる
症状固定の定義は?
症状固定とは、傷病の治療を進めてきたけれども、これ以上治療を続けても症状の改善がみられない状態を言います。
イラストのように、治療をして歩けるようにはなったけれども、腰痛が残っている状態などです。
症状固定・症状固定日は誰が決める?
症状固定(症状固定日)は医師の意見が尊重されます。よくあるのが、保険会社から「そろそろ症状固定ですね」と打診されるケースですが、保険会社には症状固定を決める権限はありません。
保険会社は、なぜそのように連絡をしてくるのでしょうか。それは、被害者への補償を変更したいからです。症状固定前と症状固定後、被害者が受ける保障はどう変わるのでしょうか。
症状固定でどう変わる?症状固定後の通院・治療費は?
症状固定をむかえるということは、以後は治療を継続しても症状の改善が見られないということです。極端に言うと症状固定後の通院・治療は症状の改善につながらないということです。
症状固定の「被害者への補償の何が変わるか」をまとめました。
症状固定前 | 症状固定後 | |
---|---|---|
治療費など | あり | なし |
休業損害 | あり | なし |
傷害慰謝料 | あり | なし* |
後遺障害慰謝料 | なし | あり** |
逸失利益 | なし | あり** |
*傷害慰謝料の算定の基礎となる入通院日数に数えられなくなる
**後遺障害等級認定された場合のみ
加害者側は、治る見込みがない治療には費用を支払いません。つまり症状固定後の通院・入院に関する費用(治療費)は被害者自身で負担することになります。同様に、休業損害についても支払われません。
しかし治療の継続は被害者の自由です。治療には健康保険を使うことができます。今後の交渉次第では、加害者側に支払いを求めることができるかもしれませんので、治療費は必ず領収書を保存しておきましょう。
健康保険を使った通院をご検討の際には、下記の関連記事も併せてお読みください。
交通事故の治療に健康保険を使う際のポイント
また、むちうちに関しては整骨院・接骨院の利用を考えている人もいるでしょう。気を付けたいポイントをまとめていますので、ぜひ読んでみてください。
「症状固定」の目安は?/打撲・むちうち・顔の傷・tfcc損傷・肩腱板断裂(損傷)
代表的なケガについて症状固定の目安を確認していきましょう。記載されている時期はすべての事故に当てはまるものではなく、参考情報としてご理解ください。
打撲
1か月程度
むちうち
3か月~6か月程度
骨折
6か月から1年半程度
髄内釘などで骨を固定した場合:除去されるまでの約1~2年
顔の傷
6か月程度
肩腱板損傷・断裂
6か月以上
高次脳機能障害
1年以上
tfcc(三角線維軟骨複合体)損傷
6か月~1年半程度
症状固定のタイミングは、事故の様子・ケガの程度で大きく変わります。まずは治療に専念し、症状固定の時期が気になる場合は、医師にたずねてみてください。
また、交通事故の被害は身体的なものだけではありません。精神障害として残ることもあるでしょう。精神障害(うつ病)に関しても、後遺障害として認められています。しかし、交通事故との因果関係を示すことの難しさなどもあり、認定を受けることは簡単ではありません。
気になる方は、関連記事「交通事故での後遺症で精神障害に…」もあわせてお読みください。
被害者ご自身や周りの方だけで悩まず、弁護士への相談もご検討ください。これまでの後遺障害認定例もふまえて、一緒に考えていきましょう。
さらに、多くの身体的・精神的症例の実例をデータベースにしてまとめています。ケガの部位や名称でも調べることができ、参考になる情報がたくさんあります。
むちうち(頚椎捻挫)…症状固定は3か月?NGな後遺障害診断書とは?
発生頻度の高いむちうち(頸椎捻挫)を具体例として、ここまでをふりかえってみます。
むちうちは3か月で症状固定?治療費の打ち切りは確定?
症状固定は「目安」とされている時期があります。加害者側の保険会社が症状固定かを確認してきたり、治療費の打ち切りを打診してくるのは、目安を根拠にしていると考えてください。
症状固定:むちうち
一般的に3か月~6か月とされています。
治療費の打ち切りは確定ではありません。症状固定の時期は医師の見解が重視されます。保険会社に感情的になっても状況は好転しません。まずは医師に状況を相談してみましょう。
医師が「まだ症状固定ではない」と判断した場合は、保険会社にそのことを伝えてください。保険会社が治療費の打ち切りを延期してくれる可能性があります
もし医師からも「症状固定です」と言われた場合は、
- 後遺障害等級認定の準備を進める
- セカンドオピニオンを受ける
のような選択肢が考えられます。
症状固定について悩んでいる方、お困りの方は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。弁護士と話しあい、あなたにとって良い選択肢を一緒に考えていきましょう。
つづいて、症状固定となり、後遺障害認定を受けるフローを確認します。
良い診断書とNGな診断書?後遺障害認定の秘訣を解説
後遺障害診断書を弁護士視点で解説します。
後遺障害診断書
症状固定後に、医師が作成する診断書です。
実は、この時点では身体に残るものは「後遺症」であり、「後遺障害」とはまだ認定されていません。
認定を受けるために、後遺障害診断書を提出する必要があります。
後遺障害とは・・・
交通事故による傷病が原因
医学的治療を継続するなど適切な治療をしたが、症状が残った
将来にわたって回復が難しいとおもわれる肉体的・精神的な症状
症状の存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの
このような要素を持つ「後遺症」のことです。
POINT
「後遺障害」と認められるには、「後遺障害」の要件を満たしていると「後遺障害診断書」に明記することが重要です
申請には事前認定と被害者請求の2つがあります。
イラストを見ながら流れと2つの方法の違いを確認しましょう。
事前認定
被害者請求
2つを比べてみると、
- 申請にはどちらも後遺障害診断書が必要
- 必要書類の準備者が異なる
- 被害者の診断書提出先が異なる
などが分かります。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
書類準備 | 加害者の任意保険会社 | 被害者自身 |
被害者の 書類提出先 |
加害者の任意保険会社 | 加害者の 自賠責保険会社 |
事前認定は被害者の手間・負担が少ない方法です。
しかし、慰謝料の増額が見込めるのは被害者請求でしょう。
なぜなら、被害者に有利な書類・根拠を考え、準備できるからです。
「むちうち」の場合、有利な書類や根拠とは何でしょうか。考えてみます。
ココが違う
むちうちの後遺障害等級・「12級」と「14級」の分かれ目は医学的な証拠
むちうちは後遺障害等級でいうと12級14号か14級9号と認定されることが多いです。
12級14号 |
---|
✓局部に頑固な神経症状を残すもの ・後遺障害慰謝料:290万円 |
14級9号 |
✓局部に神経症状を残すもの ・後遺障害慰謝料:110万円 |
金額は弁護士基準で算出した場合
2つの違いは「頑固な」という表現のみです。そして判断の差は、MRIやCTで神経症状の原因が確認できれば12級とされることが多いです。被害者請求であれば、画像検査結果なども併せて提出できますので、12級認定を目指しやすくなります。
被害者請求の詳細が気になる方は、関連記事「事前認定と被害者請求の違いは?」も読んでください。
後遺障害は損害保険料率算出機構が書面審査します。審査者は医師ではありません。後遺障害診断書は、「被害者に会ったことがない」、「治療に立ち会っていない」、「第三者」に治療の経過や被害者の状況が分かるものでなくてはいけません。
書いていませんか?
- 交通事故との因果関係が不明や定かではない
- 将来改善する
- 仕事に支障はない
していませんか?
- 通院頻度は1か月に1回程度
- 忙しいからMRIやCTは撮っていない
- 接骨院への通院だけ続けて病院へは行っていない
もう一度確認
後遺障害とは・・・
- ① 交通事故による傷病が原因
- ② 医学的治療を継続するなど適切な治療をしたが、症状が残った
- ③ 将来にわたって回復が難しいとおもわれる肉体的・精神的な症状
- ④ 症状の存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの
先ほどのNG事項は、①~④のいずれかに当てはまっています。後遺障害等級認定を受けるためには。避けたほうがよいでしょう。
後遺障害等級の認定は簡単なことではありません。また、一度認定された等級を覆したり、「後遺障害に該当しない(非該当)」の結果を変えることは、難易度が高いことです。
後遺障害等級認定の申請は
- 後遺障害診断書の中身は適切か
- 後遺障害を認めてもらいやすい資料は用意できているか
経験豊富な弁護士に依頼することでクリアーできます。実際に、申請時の書類を弁護士が代わりに収集することも可能です。準備を十分行うためにも、早めの相談・依頼をおすすめします。
後遺障害等級認定を受けるためのポイントは以下の関連記事もぜひお読みください。
症状固定後は…慰謝料は便利な<慰謝料計算機>で確認
むちうちで通院3か月|入通院慰謝料(傷害慰謝料)は?
症状固定は、示談に向けて話し合いを始めるタイミングともいえます。(後遺障害等級申請をしている場合は、認定通知後に開始となります)。
実際に次の事例をもとに、入通院慰謝料(傷害慰謝料)を計算してみましょう。
むちうちで通院
- 入院:なし
- 通院期間:3か月(90日)
- 実通院日数:60日
慰謝料の計算基準は3つあります。
(1)自賠責保険の基準
(2)任意保険の基準
(3)弁護士基準
自賠責保険は、車の運転者に加入の義務があります。自賠責保険での補償内容には、傷害部分は120万円までという上限があります。超えた分を、任意保険でカバーします。まずは、この自賠責保険の基準で計算してみましょう。
計算式:自賠責保険の基準
- ① 4,200円×治療期間
- ② 4,200円×(実入通院日数×2倍)
- ① ②は少ない方を採用します。
- 通院期間:3か月(90日)
- 実通院日数:60日⇒2倍すると120日
この場合は、通院期間のほうが短くなるので、通院期間「90日」を計算に使います。
計算結果は<4,200円×90日=378,000円>
弁護士基準
弁護士基準の入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、「弁護士基準の入通院慰謝料算定表」にしたがって、通院期間3か月の欄を確認してみましょう。表によると、通院期間は3か月ですので、530,000円であるとわかります。
慰謝料の相場が最も高いのが「弁護士基準」で算出したときです。
事故によってケガの程度・通院の期間・入院の有無など千差万別です。また、後遺障害等級が認定された場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益も加わります。複雑な計算を自動で、簡単に行える慰謝料計算機を使ってみませんか?
慰謝料計算機で簡単に慰謝料をチェック
慰謝料計算機は、後遺障害等級の認定が終わっていれば使うことができます。簡単な情報入力だけで、すぐに慰謝料が計算できます。
慰謝料計算をしてみて、
- 加害者の保険会社から提案されている金額と違う
- どうしたらこの金額を受け取れる?
弁護士がお答えしますので、お気軽にご相談ください。
症状固定に関する疑問、慰謝料、後遺障害認定のご相談はこちらまで
LINE・電話OK|<24時間・365日>無料相談の窓口
突然「症状固定」と言われたり、さらには治療費が打ち切られたりすると、なんだか不安になったり、どうしていいかわからなくなった、という方は少なくありません。しかし、なんらかの後遺症が残ってしまったならば、症状固定は事故解決にむけて誰もが通る「必要な過程」なので、特別にかまえることはありません。
アトム法律事務所は「交通事故と刑事事件の地域一番の弁護士事務所として、 相談者のお悩みとお困りごとを解決すること」を目指しています。交通事故に関する解決実績が多数ありますので、ご安心ください。
無料相談の受付窓口は24時間365日ご利用いただけます。電話・LINE・メールなど、使いやすい方法でお問い合わせください。混み合う時間帯や土日祝は順番をお待ちいただくこともありますので、早めにご連絡ください。
弁護士無料相談をご利用ください
相談依頼は今すぐ!
まとめ
「症状固定と言われても、どう自分に影響するのかピンと来ない」という声をよく聞きます。たとえば「症状固定すると治療費がもらえなくなる」と言われると、「症状固定ってマイナス?」と感じる人もいるでしょう。しかし、症状固定となって初めて「後遺障害認定の申請」が可能になります。また、症状固定前ですと賠償額が確定せずに示談もできません。症状固定でお悩みの方、一度ご状況をお聞かせください。一緒に、あなたにとって一番いい選択を考えていきましょう。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
岡野武志弁護士