作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
鎖骨骨折|後遺症の症状と慰謝料・等級認定
鎖骨骨折はあまりなじみがないという方も多いかと思いますが、実は骨折の中でも発生率の高い類型の一つです。
- 鎖骨骨折ではどんな後遺症が残る?
- 鎖骨骨折で後遺症が残ったらどうしたらいい?
- 鎖骨骨折の後遺症でもらえる慰謝料は?
交通事故で鎖骨骨折になった場合に、今後残る可能性のある後遺症やそれに伴う後遺症の等級認定、得られる慰謝料について知っておくことは重要です。
ぜひ確認してみてください。
目次
鎖骨骨折|後遺症や原因を解説
鎖骨骨折とは?症状は?
鎖骨骨折とは、その名の通り鎖骨が骨折してしまうことです。
症状としては、以下のようなものが見られます。
鎖骨骨折の症状
- 痛み、腫れ
- 肩が痛くて上げられない
- 骨の不安定感を感じる
- 鎖骨が出っ張る
鎖骨は、内側は胸骨とつながりそこから背骨へとつながっています。
外側は肩甲骨とつながっていて、腕と胴体をつなぐ役割をしています。
鎖骨は、腕、肩、胸、背骨をつないで動きを連結させるという、重要な役割を持つ骨なのです。
鎖骨骨折|交通事故での原因は?
交通事故で鎖骨骨折が生じる原因としては、事故の衝撃により腕や肩に強い衝撃が加わることが挙げられます。
実際に被害者が鎖骨骨折を負った事故についてご紹介します。
鎖骨骨折の事故①
路線上に立っていた被害者に、加害者が運転する自動車が衝突した
(名古屋地方裁判所平成27年(ワ)第3171号)
鎖骨骨折の事故②
被害者の乗る自動車が停車していたところ、加害者の普通貨物自動車が前方から後退してきて衝突した
(東京地方裁判所平成28年(ワ)第1417号)
鎖骨骨折の後遺症①|痛み・しびれ
痛み・しびれ|後遺症の具体例
鎖骨骨折によって周辺の神経に損傷が生じると、後遺症として痛みやしびれが残る可能性があります。
日常生活への影響としては、以下のようなものがあります。
- 肩が痛くて上げられない
- 重いものを持つことがつらい
- 寝返りを打つと痛い
鎖骨骨折|痛み・しびれの後遺症等級
しびれや痛みが該当する後遺症の等級は、以下の通りです。
等級 | 定義 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
「頑固な神経症状」と「神経症状」を分けるのは、
医学的所見で症状を証明できるかどうか
です。
医学的所見
レントゲン写真やMRI画像のような客観的で医学的な証拠のこと
痛みやしびれは、後遺症として残ったとしても、レントゲン写真やMRI画像には異常が写らないということがあります。
異常がレントゲン写真等に写れば「頑固な神経症状」、写らないけれど症状があると認められる場合には「神経症状」と考えられるということです。
鎖骨骨折|痛み・しびれの慰謝料
それぞれの等級の後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
12級13号 | 290万円 | 100万円 |
14級9号 | 110万円 | 40万円 |
慰謝料の金額は、示談交渉で加害者側と話し合って決められます。
その際に
となっています。
鎖骨骨折の後遺症②|可動域制限
可動域制限|後遺症の具体例
鎖骨骨折の結果後遺症として残る可動域制限は、主に肩周りに影響を及ぼします。
日常生活に以下のような影響が出てきます。
- 肩が硬くなって上げられない
- 洋服の背中のジッパーが上げられない
- 車のハンドルを左右にきれなくなった
鎖骨骨折|可動域制限の後遺症等級
鎖骨骨折による後遺症で可動域制限が生じた場合、該当する可能性のある後遺障害等級は以下の通りです。
等級 | 定義 |
---|---|
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
定義の内容について詳しく解説します。
1上肢の3大関節中の1関節
1上肢の3大関節とは、肩・肘・手首を指します。この中の1関節とは、鎖骨骨折の後遺症の場合は、肩関節が該当します。
著しい障害を残す
もう片方の関節に比べ、可動域が1/2以下になること
障害を残す
もう片方の関節に比べ、可動域が3/4以下になること
つまり、鎖骨骨折の可動域制限による後遺症の等級を簡単に言うと、以下のようになります。
- 肩関節の可動域が1/2以下:10級10号
- 肩関節の可動域が3/4以下:12級6号
鎖骨骨折|可動域制限の慰謝料
それぞれの等級に対する後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
10級10号 | 550万円 | 187万円 |
12級6号 | 290万円 | 93万円 |
鎖骨骨折の後遺症③|変形障害
変形障害|後遺症の具体例
鎖骨骨折は、手術ではなく鎖骨バンドや三角巾を使って骨折部分を固定する、保存療法がとられることもあります。
しかしこの場合、骨がずれてくっついてしまう骨癒合不全が発生する可能性があります。
骨癒合不全が発生すると、見た目にも骨がずれていることがわかる、変形障害が生じることがあります。
鎖骨骨折の後遺症で変形障害が残ると、日常生活に以下の影響が出る可能性があります。
- 片方の肩だけ上がったようになり、スーツなどのオーダーメイドが必要になる
- 神経症状の原因となる
鎖骨骨折|変形障害の後遺症等級
鎖骨骨折の後遺症で変形障害が残った場合には、以下の等級に該当する可能性があります。
等級 | 定義 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
「著しい変形」とは、服を脱いだ状態でも目視で変形が確認できる程度の変形ということです。
したがって、レントゲン写真やMRI画像で撮ればわかるという変形は、これに当てはまりません。
鎖骨骨折|変形障害の慰謝料
上の等級に応じた後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
12級5号 | 290万円 | 100万円 |
鎖骨骨折で後遺症が残ったら
注意点|後遺症の等級認定
※後遺障害等級認定の申請、診断書の書き方のコツの詳細はこちら
後遺症の等級認定審査は、主に提出された資料を用いて行われます。
そのため、提出資料については以下のポイントを押さえることが大切です。
ポイント
- レントゲン写真等は、異常箇所が分かりやすいよう印などをつける
- 自覚症状は実際の影響も合わせて書く
- 診断書は以下の3点をおさえる
- 後遺症と交通事故の因果関係を明確に
- 今後回復が困難であることを明記
- 症状を裏付ける証拠と、後遺症による労働能力の喪失を明記
レントゲン写真やMRI画像に異常が写っていても、確認しにくく審査の際に異常箇所を見つけてもらえない可能性があります。
誰が見ても明らかに異常箇所が分かるというほどでない場合には、どこに異常箇所があるのか印をつけておく方がベターです。
自覚症状は、あくまでも主観的なものとなります。信ぴょう性を高めるためには、実際の影響を合わせて書きましょう。
以下は例文です。
✖ | 肩に痛みがある |
---|---|
〇 | 肩に痛みがあり、一人での洗髪が難しくなった |
こうした等級認定のポイントについては、後遺障害等級認定のサポート経験がある弁護士に聞くことで、アドバイスをもらえたり、申請準備を代行してもらえたりします。
注意点|後遺症の慰謝料請求
後遺障害等級認定が終わり、慰謝料請求の段階に入ると、加害者側との示談交渉が始まります。
ここで最終的な示談金額が決まります。
この際の注意点は、以下の通りです。
- 加害者側の提示してくる金額は低め
- 弁護士の主張でないと聞き入れてもらえない可能性が高い
ここまでご紹介してきた弁護士基準の金額と任意保険基準の金額を比べてみても、任意保険基準の金額は弁護士基準に比べかなり低いことが分かります。
しかし、保険会社から提示された金額を示談交渉で増額させようとしても、加害者側の保険会社は初めから、弁護士にしよる主張でないと聞き入れないという方針であることがあるのです。
したがって、妥当な金額を得るためには、弁護士に示談交渉を代行してもらうことが重要です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士