作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故妊婦慰謝料

交通事故|妊婦編の慰謝料~死亡・流産の場合も

妊婦の交通事故慰謝料は?
  • 交通事故における妊婦の慰謝料はどうなるのだろう
  • 交通事故で妊婦が流産したら、死亡慰謝料はもらえるのだろうか

妊婦の方が交通事故に遭った場合の慰謝料は、妊婦でない方のそれとは異なる部分もあります。そんな妊婦の方の交通事故慰謝料について、解説していきます。


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妊婦の交通事故|慰謝料の相場は?

妊婦の入通院慰謝料|入通院日数から算出

入通院慰謝料とは、交通事故による入通院で被った精神的苦痛に対する補償のことです。
傷害慰謝料と呼ぶこともあります。
被害者が弁護士を立てて示談交渉を行う際には、以下の「弁護士基準」による表から入通院慰謝料を算出し、交渉相手に提示します。

重傷の慰謝料算定表

重傷の慰謝料算定表

なお、むち打ちなど軽度のけがである場合には、以下の表から傷害慰謝料を算出します。

軽症・むちうちの慰謝料算定表

軽症・むちうちの慰謝料算定表

妊婦の後遺障害慰謝料|後遺障害等級から算出

交通事故によって後遺障害等級を受けた場合には、後遺障害慰謝料を請求できます。
後遺障害慰謝料は、弁護士基準の場合以下のようになっています。

弁護士基準の後遺障害慰謝料
弁護士基準
1 2800万円
2 2370万円
3 1990万円
12 290万円
13 180万円
14 110万円

事例も|子供が死亡…流産は慰謝料の増額事由になる

交通事故に遭ったことで、流産してしまうこともあります。このような場合、母親の入通院慰謝料の増額事由となります。

流産した場合の慰謝料
  • 死亡した胎児自身に対する死亡慰謝料は認められない
  • 母親の入通院慰謝料が増額される

損害賠償請求権などの権利は、出生を以て有効となります。
したがって、出生前に亡くなった胎児本人に対する慰謝料等は認められないのです。

どの程度増額されるかについては、妊娠期間や流産後の身体への影響等を考慮して決められます。
胎児が死亡した際に認められた金額について、例を見てみましょう。

流産で認められた慰謝料
妊娠期間 慰謝料 参考
2ヵ月 150万円 ・大阪地判平8.5.31
12週未満 200万円 ・大阪地判平18.2.23
・被告が救護義務違反
・妊婦の傷害慰謝料込み
18 350万円 ・大阪地判平13.9.21
・初産
・流産後妊娠できていない
出産予定日4日前 800万円 ・高松高判平4.9.17

なお、胎児が死亡したことによる父親への慰謝料については、認められる場合と認められない場合があります。認められた事例について、一つご紹介しておきます。

妊婦(母)が受傷したことにより妊娠36週の胎児が死亡したとして、母700万円、父300万円を認めた
(事故日平9.12.1 東京地判平11.6.1 交民32・3・856)

引用元:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(基準編)2019』日弁連交通事故相談センター東京支部

流産による慰謝料増額がどの程度認められるか、父親への慰謝料も認められるかは、示談交渉次第です。
示談交渉は加害者側任意保険会社と行うことが多く、弁護士の主張でなければ聞き入れられないことも多いです。

示談交渉でも話がまとまらない場合には、裁判などで争うことになります。
示談交渉にしても裁判にしても、弁護士に相談し、協力してもらうことが非常に大切です。

母子ともに死亡した場合の死亡慰謝料と相続人

交通事故でお腹にいる胎児だけでなく母親も亡くなってしまう場合もあります。
この場合、母親の損害賠償請求権は相続人が相続します。
夫が相続人なら、母親自身が請求するはずだった慰謝料等を夫が代わって請求するのです。

母子ともに死亡した場合でも、死亡した胎児の死亡慰謝料は、上で解説した通り請求できません。
弁護士基準による子供の母親(妻)に対する死亡慰謝料は、以下のように決められます。

弁護士基準の死亡慰謝料
母親
配偶者
2500万円
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妊婦の交通事故治療|胎児や慰謝料への影響

妊婦のムチウチ治療|慰謝料に影響することも

妊婦が交通事故でムチウチの症状を負った場合、注意点があります。

ムチウチ治療の注意点
  • 治療内容
    できる治療が制限される
  • 治療期間
    上記の理由から、治療期間が長引く可能性がある
  • 慰謝料
    通院期間が長引いた場合、入通院慰謝料算出に用いる通院日数の数え方が変わることがある

ムチウチの場合、通常湿布やコルセットを用いたり、首の牽引、温熱治療、電気治療、マッサージなどを行います。
ただ、妊婦の場合には湿布や鎮痛剤などの利用、電気治療ができない場合があります。

また、牽引やマッサージも弱めの力でしかできなかったり、うつぶせでのマッサージができなかったりします。
こうした事情から、通常通りの治療を行うよりも治療期間が長引くことがあります。

治療期間が長引いた場合には、入通院慰謝料を算出する際、通院日数の変わり方が変わることがあります。

入通院慰謝料を算出する際、通院日数は通常、通院開始から通院終了までの期間の日数をカウントします。
しかし、通院期間が長引いた場合には、実通院日数×3とカウントすることもあるのです。

交通事故や治療が胎児に影響した場合の慰謝料

交通事故でお腹の胎児は死亡しなかったものの、事故やその後の治療の影響が及ぶ可能性があります。
事故やその治療の影響で障害のある子供が生まれた場合には、慰謝料を請求することができます。

その障害が死にも比肩するようなものだった場合には、両親に対する慰謝料も請求可能です。

妊婦の交通事故|中絶の慰謝料とその事例

交通事故やその治療の影響を胎児が受けるかもしれないということを考慮し、中絶を考える人もいます。
この場合、交通事故との関連性が認められれば、慰謝料を請求することができます。
交通事故による治療の中で中絶し、その慰謝料が認められた例として、以下のものがあります。

中絶で慰謝料が認められた例
事故内容
被害者が同乗する加害者運転の原付バイクが交差点で他車両と衝突
中絶に至る理由
事故後の容態や薬剤の服用による胎児への影響を考え、妊娠の継続は不可能と判断
妊娠期間
妊娠34か月
中絶による慰謝料
100万円程度
備考
事故当時17歳であり、元々出産する可能性がどの程度あったのかは不明であることを考慮

横浜地方裁判所平成19年(ワ)第92号

交通事故後、治療中に妊娠した場合にも、薬や治療の影響が胎児に及ぶ可能性から中絶することがあります。
その場合も、慰謝料が認められることが多いです。

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妊婦の交通事故慰謝料は弁護士に相談

妊婦の交通事故を弁護士に相談するメリット

増額交渉(弁護士なし)

妊婦の交通事故慰謝料を弁護士に相談するメリットは以下の通りです。

弁護士相談のメリット
  • 示談交渉を代行してもらえる
    →適切な増額、慰謝料が期待できる
  • 示談交渉の準備も代行してもらえる

交通事故で加害者側に支払ってもらえる金額は、示談交渉で決まります。
妊婦の場合は妊婦であるがゆえの事情を考慮し、慰謝料等が増額される可能性も高いです。

しかし慰謝料の増額を示談交渉で決定するのは難しいと言わざるを得ません。
交渉相手である加害者側任意保険会社は、弁護士の主張でないと増額を聞き入れないことも多いからです。

示談交渉で加害者側任意保険会社が提示してくる慰謝料額についてはこちらをご覧ください。

また、妊婦の方は交通事故後、体調の観点から安静にしなければならなかったり、精神的ショックが一層大きかったりします。
そのような時、弁護士がいれば示談交渉の準備もしてもらえます。
そうした意味でも、弁護士に相談することは重要です。

その場でできる!無料相談とは?

弁護士に相談したいけれど弁護士費用が気になる、弁護士事務所まで行けない、という場合もあります。
そのようなときは、アトム法律事務所無料相談をご利用ください。

アトム法律事務所の無料相談
  • 費用:無料
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小さな疑問でも、お気軽にご連絡ください。

無料相談ののち、ご契約となる場合には加入している保険を確認してみてください。
弁護士費用特約を使うことで、弁護士費用を保険会社に負担してもらえます。

弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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妊婦の慰謝料に関するQ&A

交通事故で流産した場合の慰謝料は?

交通事故により流産した場合は、母親の入通院慰謝料が増額されます。残念ながらお腹の赤ちゃんに対する死亡慰謝料は、基本的に認められません。人が損害賠償請求権を持つのは、生まれてきてからであると考えられているからです。母親の入通院慰謝料がいくら増額されるかは、流産による母体への影響等を考慮して決められます。 流産した場合の慰謝料の事例

交通事故やその治療が胎児に影響した場合は?

交通事故や交通事故による治療が胎児に影響し、障害のある子が生まれたという場合は、その分の慰謝料を請求することができます。その障害が死にも比肩するような重いものだった場合には、子供だけではなく両親も慰謝料を請求することができます。 交通事故や治療が胎児に影響した場合

交通事故が原因で中絶した場合の慰謝料は?

交通事故による治療の影響を考え中絶した場合や、治療中に妊娠して治療のために中絶した場合、慰謝料を請求することができます。ただし慰謝料の請求が認められるためには、中絶と交通事故との関連性を証明する必要があります。 中絶で慰謝料が認められた事例

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