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通退勤中や業務中に交通事故に遭うと、労災を利用することができます。
こうした交通事故での労災利用に関する疑問に、弁護士とともにお答えしていきます。
目次
労災とは、通退勤中や勤務中に遭った事故、つまり労働災害のことを指します。
労働者は労災保険に強制加入しており、労災に遭った場合にはこの労災保険から補償を受けることができます。
労災保険の補償項目には、実際に発生した損害金額分をそのまま補償するものと、労災の基準に従って計算した金額を補償するものがあります。
ではまず、実際に発生した損害金額分をそのまま補償、または定額が定められているものを見てみましょう。
補償項目名 | |
---|---|
治療関係費 | 療養給付 |
介護費 | 介護補償給付 |
葬儀費 | 葬祭料 |
治療費である療養給付は、全額支払われます。
療養給付には、診察料・薬や治療材の費用・治療費・看護費が含まれます。
介護料については、
等によって金額が変わります。
例えば常時介護で親戚等の介護は受けず介護支出がある場合は、105,290円を上限としその費用が支払われます。
葬祭料は基本的に、315,000円+給付基礎日額×30日となります。
続いて、労災の定める基準・計算式で金額が決まるものを見ていきましょう。
補償項目名 | |
---|---|
休業損害 | 休業補償給付 休業特別支給金 傷病補償給付 |
後遺障害逸失利益 | 障害補償給付 障害特別支給金 障害特別金 |
死亡逸失利益 | 遺族補償給付 |
後遺障害逸失利益
後遺障害による労働能力の喪失で失った収入に対する補償
死亡逸失利益
交通事故で死亡したために得られなくなった収入に対する補償
それぞれについて、詳しい内容と計算方法を確認していきます。
休業に関する補償項目には、
があります。
これらは以下のように支払われます。
治療開始~1年6ヵ月
→休業補償給付・休業特別給付金
治療開始後1年6ヵ月~
傷病等級に認定
→休業補償給付・休業特別給付金から傷病補償給付へ切り替え
傷病等級に非認定
→引き続き休業補償給付・休業特別支給金
休業補償給付、休業特別支給金は以下のように計算されます。
傷病補償給付には、傷病補償年金・傷病特別支給金・傷病特別年金があります。
1~3級まである傷病等級に認定されると、その等級に応じて以下のように傷病補償給付が支払われます。
給付基礎日額=A、算定基礎日額=Bとして、金額の計算方法を確認しましょう。
傷病補償年金 | 傷病特別年金 | |
---|---|---|
1級 | A×313日 | B×313日 |
2級 | A×277日 | B×277日 |
3級 | A×245日 | B×245日 |
*毎年2ヵ月毎に、前2ヵ月分が支払われる形式
次に、一時金形式のものを見てみましょう。
傷病特別支給金 | |
---|---|
1級 | 114万円 |
2級 | 107万円 |
3級 | 100万円 |
*一度支払われるだけの形式
後遺障害残存に対する補償項目には、
があります。
障害特別支給金は、労災で認定された後遺障害の等級に関わらず一時金形式で支払われます。
障害補償給付・障害特別金は、後遺障害等級が
となります。
ではまず、障害特別支給金の額を、一部見てみましょう。
等級 | 金額 |
---|---|
1級 | 342万円 |
2級 | 320万円 |
略 | |
13級 | 14万円 |
14級 | 8万円 |
次に障害補償給付、障害特別金について一部見てみましょう。
給付基礎日額=A、算定基礎日額=Bとします。
等級 | 障害補償給付 | 障害特別金 |
---|---|---|
1級 | A×313日 | B×313日 |
2級 | A×277日 | B×227日 |
略 | ||
6級 | A×156日 | B×156日 |
7級 | A×131日 | B×131日 |
続いて、8~14級の金額について一部見てみましょう。
等級 | 障害補償給付 | 障害特別金 |
---|---|---|
8級 | A×503日 | B×313日 |
9級 | A×391日 | B×227日 |
略 | ||
13級 | A×101日 | B×101日 |
14級 | A×56日 | B56日 |
被害者が死亡したときに支払われる遺族補償給付には、
があります。
遺族特別支給金は、一時金として一律300万円となっています。
遺族補償年金、遺族特別年金は、遺族の人数によって変わります。
給付基礎日額=A、算定基礎日額=Bとして、見てみましょう。
遺族 | 遺族補償年金 | 遺族特別年金 |
---|---|---|
1人* | A×153日 | B×153日 |
2人 | A×201日 | B×201日 |
3人 | A×223日 | B×223日 |
4人以上 | A×245日 | B×245日 |
*55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合は175日分
労災から交通事故の補償を受ける際に気を付けるべきこととして、
慰謝料は労災保険の補償対象外
ということがあります。
交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料があります。
しかしこれらに対応する項目は、労災の補償には入っていません。
これらについては、被害者側に対して別途請求していく必要があります。
休業補償給付や休業特別給付金を請求する場合には、
を所轄の労働基準監督署に提出します。
なお、これらは事故後4日目からの休業が対象です。
事故後3日間の休業損害については、雇用主に請求しましょう。
1年6カ月がたってもけがが治っていない場合には、1ヵ月以内に傷病等級の認定を受けましょう。
「傷病の状態等に関する届」を提出することで手続きができます。
1年6ヵ月が過ぎても怪我が治らず休業が必要であるものの、傷病等級には当たらないという場合は、引き続き休業補償給付を受けます。
この場合には、毎年1月分の請求時に「傷病の状態等に関する報告書」を労働基準監督署に提出します。
労災で後遺障害に対する補償を受けるためには、労働基準監督署にて後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級が認められると、認定を伝える支給決定通知が送られてきます。
この支給決定通知は、後遺障害に対する補償金の支払振込通知も兼ねています。
つまり、労災で後遺障害等級が認められると、その流れで支給額が振り込まれるということです。
労災での後遺障害等級認定の申請については、以下の記事をご覧ください。
交通事故が労働災害に当たる場合、労災保険から補償を受けることができます。
ただ、労災保険を使わずに、通常の交通事故と同じように加害者側の自賠責保険・任意保険に賠償請求することも可能です。
労災保険と自賠責・任意保険は、その補償項目が重複しない部分においては併用可能です。
重複する部分においても、金額を調整することで請求が可能です。
労災保険と自賠責・任意保険で重複している項目は以下の通りです。
労災から補償を受けていても、上記以外の補償項目は通常の交通事故と同様に請求できるということです。
重複しない項目とは、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料、物損に関する損害のことです。
労災保険と自賠責・任意保険とで重複している項目については、二重取りにならないよう調整が行われます。
例えば自賠責保険から治療費で50万円受け取っていて、労災保険の療養給付では60万円受け取れることが分かったとします。
この場合、50万円はすでに自賠責から受け取っているので、労災保険からは10万円が振り込まれるということです。
もし労災から先に60万円受け取っていた場合は、自賠責への請求はできません。
ちなみに、金額調整の円滑化の観点から、厚生労働省は労災保険よりも自賠責保険から先に補償金を受け取ることを勧めています。
交通事故で労災を使うメリットとしては、以下のものがあります。
①過失割合が適用されない
労災保険からの補償金には、過失割合が適用されません。
過失相殺後の自賠責・任意保険からの賠償金よりも労災の補償金の方が大きくなる場合もあります。
労災保険と自賠責・任意保険の重複項目では、高い方の金額が採用されます。
したがって、労災保険の方が高い金額になるのであれば、労災保険を使った方がいいということです。
②自賠責・任意保険にはない補償項目がある
休業特別支給金や傷病特別年金、傷病特別支給金は、休業に関する補償です。
障害特別給付金や障害特別金は、後遺障害に関する補償です。
しかしこれらは、労災福祉の観点から支給されるものです。
つまり、自賠責や任意保険からの補償金額とは重複せず、金額が調整されることはないということです。
金額の調整によって、労災と自賠責・任意保険で重複する補償項目の二重取りはできません。
しかし、労災には自賠責や任意保険からは受けられない補償を受けられます。
一方、労災の補償には慰謝料や物損に関する補償は含まれません。
労災に当たる交通事故に遭った時には、労災と自賠責・任意保険のどちらかだけを使うのではなく、両方を使うことが大切だということです。
交通事故で労災保険を利用する際には、弁護士に相談することがお勧めです。
労災保険の仕組みは複雑で、ここでの内容通りにならない場合もあります。
また、労災保険を利用する場合でも、ただ申請をして振り込みを待てばいいわけではありません。
慰謝料は加害者側と交渉しなければ得ることができません。
休業開始から3日間の休業補償は労災の対象外なので、これについても加害者側や雇用主に交渉する必要があります。
加害者側との交渉には、任意保険会社が出てくることが多いです。
任意保険会社は示談交渉のプロであるため、被害者本人が対等に交渉を行うのは簡単ではありません。
雇用主との交渉も、雇用主と従業員という立場から、強く出られない可能性があります。
だからこそ、弁護士に相談することが重要です。
弁護士に相談しよう!と思っても、
等の事情があることも考えられます。
そのようなときには、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
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です。
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弁護士費用特約は、自動車保険のオプションとしてついていることが多いです。
加入していてもそれを把握していないケースが多いので、ぜひ一度、確認してみてください。
弁護士費用特約についての詳細はこちら
成瀬潤
労災の補償金額を確認していくにあたって最初に、「給付基礎日額」と「算定基礎日額」を確認しておきましょう。
労災保険の補償金額計算で用いられます。