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交通事故の損害額算定基準はどこに記載されているのか?
それは赤本と呼ばれる書籍に記載されています。
赤本内に慰謝料を計算する表が掲載されていて、弁護士はこの表を基準にして慰謝料を計算します。
目次
赤本は通称であり、正式名称は以下の通りです。
民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(日弁連交通事故センター東京支部発行)
また、青本と呼ばれる書籍もありますが、こちらの正式名称は以下の通りです。
交通事故損害額算定基準(日弁連交通事故相談センター本部発行)
詳細な違いに関しては後述します。
まずは、「赤本」に掲載されている慰謝料の表について見ていきましょう。
交通事故の損害額算定基準について
まず、赤本内に掲載されている慰謝料の表はどういったものになるのでしょうか。
慰謝料の表には「入通院慰謝料」や「後遺症慰謝料」があります。
交通事故のケガで入院・通院をすることになった際、精神的苦痛を受けたものとして慰謝料を受け取ることができます。
その場合、
○ヶ月入院・通院すれば慰謝料をいくらもらえるのか
ということをまとめたものが入通院慰謝料の表となります。
なお、他覚所見がある場合・ない場合で使用する入通院慰謝料の表が異なる点にご注意ください。
補足として、「他覚所見」とは、画像検査等で外部から確認できるケガの症状のことです。
むちうちなどの場合、他覚所見なしと判断されるケースが多いです。
続いて、「後遺症慰謝料」とは何なのでしょうか。
以上①~⑤の要件を満たすものが後遺障害で、後遺障害が残った場合、「後遺症慰謝料」が支払われます。
「後遺症慰謝料」の表では後遺障害の等級に応じた慰謝料金額の基準がまとめられています。
たとえば、
むちうちで手のしびれが残った
という場合、局部に神経症状を残すものとして、14級9号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
では、実際に「入通院慰謝料」と「後遺症慰謝料」の表を見ていきましょう。
入院 | |||
---|---|---|---|
通院 | 0ヶ月 | 1ヶ月 | 3ヶ月 |
0ヶ月 | 0 | 53 | 145 |
1ヶ月 | 28 | 77 | 162 |
2ヶ月 | 52 | 98 | 177 |
3ヶ月 | 73 | 115 | 188 |
4ヶ月 | 90 | 130 | 196 |
5ヶ月 | 105 | 141 | 204 |
6ヶ月 | 116 | 149 | 211 |
7ヶ月 | 124 | 157 | 217 |
8ヶ月 | 132 | 164 | 222 |
9ヶ月 | 139 | 170 | 226 |
10ヶ月 | 145 | 175 | 230 |
11ヶ月 | 150 | 179 | 234 |
12ヶ月 | 154 | 183 | 236 |
※慰謝料の単位は万円
入院 | |||
---|---|---|---|
通院 | 0ヶ月 | 1ヶ月 | 3ヶ月 |
0ヶ月 | 0 | 35 | 66 |
1ヶ月 | 19 | 52 | 83 |
2ヶ月 | 36 | 69 | 97 |
3ヶ月 | 53 | 83 | 109 |
4ヶ月 | 67 | 95 | 119 |
5ヶ月 | 79 | 105 | 127 |
6ヶ月 | 89 | 113 | 133 |
7ヶ月 | 97 | 119 | 139 |
8ヶ月 | 103 | 125 | 143 |
9ヶ月 | 109 | 129 | 147 |
10ヶ月 | 113 | 133 | 149 |
11ヶ月 | 117 | 135 | 150 |
12ヶ月 | 119 | 136 | 151 |
※慰謝料の単位は万円
等級 | 慰謝料 |
---|---|
1 | 2,800 |
2 | 2,370 |
3 | 1,990 |
4 | 1,670 |
5 | 1,400 |
6 | 1,180 |
7 | 1,000 |
8 | 830 |
9 | 690 |
10 | 550 |
11 | 420 |
12 | 290 |
13 | 180 |
14 | 110 |
※慰謝料の単位は万円
なお、上記は個別事情を考慮していない慰謝料金額です。
そのため、
○○という特別な事情があるので、慰謝料を増額してほしい
などの要望がある方は、弁護士などに相談するようにしましょう。
交通事故の専門家に相談すれば、何かしらアドバイスをもらえる可能性があります。
そもそも、赤本の慰謝料金額は何を基準にして決められているのでしょうか。
東京地裁の実務が基準となっています。
裁判例の傾向を考慮した上で、損害賠償金を計算するための基準が作成され、掲載されています。
弁護士の実務でも広く用いられていて、赤本に掲載されている基準は弁護士(裁判)基準とも呼ばれています。
実際の裁判例に基づいて作成されているので、内容の信ぴょう性は高いと言えるでしょう。
では、赤本に掲載されている慰謝料金額をそのまま請求すれば、加害者側の任意保険会社は素直に支払ってくれるのでしょうか。
被害者本人が弁護士基準で損害賠償請求しても、そのままの金額では通常支払ってもらえません。
ただ、
示談交渉を弁護士に依頼する
という方法を取れば、示談の段階で弁護士基準の慰謝料を受け取ることができる可能性が高まります。
どういった理由で、弁護士に依頼すると示談の段階で弁護士基準の慰謝料が支払われるのか。
一連の流れを確認してみましょう。
① 弁護士が弁護士基準で慰謝料を請求したものの、示談が不成立になったので裁判を提起したとする
↓
② しかし、裁判では過去の判例に基づいて作成された弁護士基準の金額の判決が出る可能性が高い
↓
③ その場合、加害者側の任意保険会社からすると、裁判をする・しないに関わらず支払う慰謝料金額があまり変わらない
↓
④ 結果、加害者側の任意保険会社は弁護士基準の慰謝料で示談に応じる
裁判をしても無駄に手間がかかってしまうだけなので、素直に示談に応じてくれる、ということですね。
被害者が交渉 | 弁護士が交渉 | |
---|---|---|
慰謝料金額 | 低額 | 高額 |
交通事故の損害額算定基準は「赤本」に掲載されている、ということはわかりました。
では、赤本に掲載されている弁護士基準で慰謝料をカンタンに計算する方法はあるのでしょうか。
以下の慰謝料計算機を使用すれば弁護士基準で計算できます。
治療終了までかかった日数や事故前の年収などを入力した後、「慰謝料を計算する」ボタンを押せば自動的に計算がされます。
ただ、
個別事情を考慮した正確な慰謝料金額を知りたい
という場合は、弁護士に相談することを推奨します。
こちらの計算機を使用すれば、
ということを事前にチェックし、今後の計画も立てやすくなるのではないでしょうか。
「赤本」の他に「青本」もある、ということを冒頭で触れました。
赤本と青本の違いは何なのでしょうか。
まず、発行元が異なります。
赤本は公益財団法人日弁連交通事故センター「東京支部」から発行されています。
青本は同センターの「本部」から発行されています。
掲載されている慰謝料にも違いがあります。
赤本
⇒慰謝料の基準が明記されていて、幅を持たせていない
青本
⇒慰謝料の基準に幅を持たせている
なぜ、青本では慰謝料金額に幅を持たせているのでしょうか。
主な理由として、以下が考えられます。
ただ、特別な事情が無い限り、青本のほうが赤本よりも低い慰謝料金額になる可能性があります。
実際に、青本に掲載されている入通院慰謝料の表を見てみましょう。
月数 | 通院慰謝料 | 入院慰謝料 |
---|---|---|
1 | 16~29 | 32~60 |
2 | 31~57 | 63~117 |
3 | 46~84 | 92~171 |
4 | 57~105 | 115~214 |
5 | 67~123 | 135~252 |
6 | 76~139 | 153~284 |
7 | 84~153 | 168~312 |
目安としては、
とされています。
では、一例としてむちうちで3ヶ月通院したケースを赤本と青本で比較してみましょう。
赤本 | 青本 | |
---|---|---|
3ヶ月 | 53 | 46 |
*慰謝料の単位は万円
赤本で53万円、青本で46万円なので、7万円の差があることがわかります。
赤本は東京支部から発行されている書籍ですが、東京以外の実務でも赤本の基準は広く使われているようです。
そのため、
東京に住んでいないから、高額な赤本の基準で慰謝料を請求できない
と諦めたりせず、赤本の基準で請求できるかどうか、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
では、赤本と青本を購入する場合、どちらで購入することができるのでしょうか。
ネット通販サイトなどから購入できるのでしょうか。
赤本や青本は日弁連交通事故相談センターから購入できます。
を購入できますが、FAXで購入申込書を送れば配送してくれます。
また、一般の書店では赤本と青本を購入できない点にご注意ください。
ただ、赤本や青本は示談交渉において必須の書籍ではありません。
弁護士ではない一般の方が赤本の基準で慰謝料を請求しても、通常、相手はその条件に応じません。
しかし、上述したように弁護士に依頼すれば赤本の基準で慰謝料を支払ってもらえる可能性が高まります。
そのため、赤本や青本の内容は参考程度に留め、大事な示談交渉の部分は弁護士に任せてしまうことを推奨します。
交通事故に遭遇した後、慰謝料はいつ請求できるのでしょうか。
通常、
上記①②③それぞれのタイミングで請求可能です。
基本的に、
損害額がいくらになるのか
を計算できるタイミングになってから請求する、ということですね。
なお、慰謝料を請求することができる期限(時効)などは以下のページで解説されているため、ぜひご参考にしてみてください。
前章で述べたように、慰謝料の請求は基本的に治療が終わった後に行います。
しかし、できれば早めに、おおよそでもいいので通院期間から慰謝料を算定しておきたいものですね。
交通事故でよくあるむちうち、骨折の入通院期間は大体どの程度になるのでしょうか。
個人差があるため一概には言えません。
ただ、参考までに、
の入通院期間になる場合があります。
具体的に通院期間の目安がわかるような統計はないのでしょうか。
一般社団法人JA共済総合研究所が公開している研究報告を見てみましょう。
交通事故で負ったむちうちの治療期間に関して、以下の統計データが記載されています。
データ元:各損害保険会社が受付けた事例
調査時期:1991年6月1日~8月2日
平均治療期間:入通院者全体で73.5日(中央値49日)
骨折の平均治療期間に関しては、ニッセイ基礎研究所が公開している「年齢別の骨折部位と治療期間」から読み取れます。
内容を一部抜粋してみましょう。
年齢:20-34歳(男女計)
平均治療期間:2.2ヶ月(全部位平均)
なお、骨折の場合、年齢や性別、部位によって治療期間が異なってくるため、上記はあくまで参考程度に留めるようご注意ください。
具体的な統計資料があるととても参考になりますね。
むちうちと骨折の平均治療期間をまとめた表が以下なので、ぜひご参考にしてみてください。
データ元 | 各損害保険会社が受付けた事例 |
---|---|
調査時期 | 1991年6月1日~8月2日 |
平均治療期間 | 入通院者全体で73.5日 (中央値49日) |
参考: https://www.jkri.or.jp/PDF/2017/sogo_75kagawa.pdf
『交通事故によるいわゆる”むち打ち損傷”の治療期間は長いのか―損害賠償を含む心理社会的側面からの文献考証―』一般社団法人 JA共済総合研究所
年齢 | 平均治療期間 (男女計・全部位平均) |
---|---|
00–04歳 | 1.8ヶ月 |
05–19歳 | 2.1ヶ月 |
20–34歳 | 2.2ヶ月 |
35–49歳 | 2.5ヶ月 |
50–64歳 | 3.0ヶ月 |
65歳以上 | 4.9ヶ月 |
参考: https://www.nli-research.co.jp/files/topics/41080_ext_18_0.pdf
『年齢別の骨折部位と治療期間 』ニッセイ基礎研究所
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スマートフォンから弁護士とのLINE相談、対面相談予約などが可能ですので、ぜひお気軽にご利用ください。
受け付けた後に順次、弁護士が対応します。
いかがでしたでしょうか。
最後に岡野代表弁護士からひと言アドバイスをお願いします。
交通事故の損害額算定基準が赤本や青本に掲載されていることがおわかりになったでしょうか。
弁護士に相談すれば、赤本の基準で慰謝料を請求することが可能です。
その場合、高額な慰謝料が支払われる可能性があります。
アトム法律事務所には交通事故案件の経験豊富な弁護士が在籍しているので、ぜひご相談ください。
対面相談が難しい場合は、スマートフォンのLINE無料相談からお気軽にご連絡ください。
このページを最後までご覧になってくださった方は、
ということなどについて、理解が深まったのではないでしょうか。
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また、関連記事もご用意しましたので、交通事故に関する他記事もぜひご覧になってみてください。
このページが、交通事故の損害額算定基準についてお悩みの方のお役に立てれば何よりです。
「赤本」を見ると、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の金額表を確認することができます。入通院慰謝料は入通院日数、後遺障害慰謝料は後遺障害等級に応じて決まっています。ここに記載されている金額は裁判例の傾向をもとに作成された基準に則っており、これを「弁護士基準」といいます。 赤本の内容の解説
赤本と青本は、①発行元②記載している慰謝料金額が異なります。発行元は、赤本なら公益財団法人日弁連交通事故センター東京支部、青本なら公益財団法人日弁連交通事故センター本部です。記載している慰謝料は、赤本は明確の金額を記載し幅を持たせていないのに対し、青本は幅のある金額を記載しています。基本的には赤本に記載されている金額の方が青本に記載されているものよりも高額になっています。 赤本と青本の違いを解説
交通事故の慰謝料が請求できるのは、①死亡事故の場合は被害者の方が亡くなられたとき②後遺障害が残った事故の場合は、後遺障害等級認定の結果が出てたとき、③けがのみの事故(傷害事故)の場合は入通院が終わったときからになります。 交通事故の慰謝料を請求できる時期
岡野武志
このページでは、赤本に掲載されている慰謝料の表の内容を中心に紹介します。
加えて、
などといったことも解説していくので、交通事故の損害額算定基準についてしっかりと学んでいきましょう。