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交通事故の慰謝料請求方法とは|請求書の書き方テンプレート、請求期限も解説
交通事故の慰謝料請求の仕方・方法はどのようになっているのでしょうか。
- ① 請求書の書き方はどうすればいいのか
- ② 被害者請求・加害者請求の違い、やり方がよくわからない
- ③ 健康保険を使って治療を受けても治療費の請求ができるのか
など、わからないことも多いのではないでしょうか。
目次
交通事故の慰謝料請求の仕方・方法
請求の期限・時効はいつまで?
交通事故に遭ってから慰謝料請求するまでの流れ
まず、交通事故に遭ってから慰謝料請求をする全体の流れが以下の図になります。
上の図の中でも示されている通り、以下のタイミングで加害者側の任意保険会社に請求することがわかります。
慰謝料請求のタイミング
① 後遺障害等級の認定申請をする場合
⇒後遺障害等級の認定結果が出た後
② 後遺障害等級の認定申請をしない場合
⇒ケガの治療が終わり、症状固定した後
請求の期限・時効は3年|後遺障害の有無によって起算点が異なる
請求するにあたって、
- 具体的な請求書の書き方
- 損害賠償項目として請求できるもの
などについては後ほど解説しますが、現時点で特に気をつけておくべきポイントは何でしょうか。
慰謝料の請求をすることができる期限には注意しましょう。
以下のように、請求権には時効があります。
⇒損害賠償請求権は「症状固定日」から3年で時効を迎え、請求権が消滅します。
⇒損害賠償請求権は「交通事故発生日」から3年で時効を迎え、請求権が消滅するケースが多いです。
ただし、場合によっては「治癒日」を起算点とすることもあります。
上記については、以下に引用する民法第724条の中で定められています。
第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法第724条
交通事故の慰謝料請求の期限は、
重要
後遺障害分⇒症状固定日から3年
傷害分⇒事故発生日または治癒日から3年
基本的には上記となるので、忘れないようにしましょう。
後遺障害分 | 傷害分 | |
---|---|---|
期限 | 3年 | 3年 |
起算点 | 症状固定日 | 交通事故発生日 または治癒日 |
請求書の書き方・テンプレートを紹介
疑問①|請求書に決まった書き方はあるのか
損害賠償請求書の書き方にルールがあるのかどうか気になります。
たとえば、「必ずこのテンプレート(雛形)を使用しなければならない」などといった制約はあるのでしょうか。
交通事故の損害賠償請求書に決まった書き方はありません。
しかし、損害賠償請求書に記載することを強く推奨されている事項はあります。
たとえば、以下の項目が該当します。
請求の日付
では、基本的に「請求書」と名が付くものは自由に書いて送付しても支障は無いのでしょうか。
「損害賠償額支払請求書」に関しては決められた書式があります。
後述する被害者請求を行う場合、加害者側の自賠責保険会社に「損害賠償額支払請求書」を送付することになります。
ただ、提出書類に不備がある場合、書類を差し戻されたりして審査期間が延びる可能性がある点にご注意ください。
そのため、「損害賠償請求書」や「損害賠償額支払請求書」などの書き方に不安がある場合、弁護士などに相談することを推奨します。
請求書を作成するタイミングで弁護士に依頼すれば、その後の「示談交渉」も担当してくれる場合があるので安心できるのではないでしょうか。
請求書の種類 | 記載項目 | 送付先 |
---|---|---|
損害賠償請求書 | ①交通事故の発生日時・場所 ②事故当事者の住所・氏名など ③損害賠償請求額 ④請求の根拠となる証拠や資料 ⑤請求の日付 など |
加害者側の任意保険会社 加害者本人 など |
損害賠償額支払請求書 | ①加害者側の自賠責保険証明書番号 ②損害賠償金の受取口座 ③交通事故の発生日時・場所 ④事故当事者の住所・氏名など ⑤請求の日付 など |
加害者側の自賠責保険会社 |
損害賠償額支払請求書: http://jiko110.org/images/pdf/e_jidousya.pdf
疑問②|損害賠償請求書にテンプレート(雛形)はある?
損害賠償請求書の書き方は自由である、と上述しました。
しかし、テンプレート(雛形)に沿って書いたほうが作成する側としては楽になります。
損害賠償請求書のテンプレートのようなものはあるのでしょうか。
個人や企業が作成したテンプレートがインターネット上に公開されているため、そちらを参考にすると良いかもしれません。
ただ、事故態様によって請求項目が異なる場合がある点にご注意ください。
たとえば、以下のような違いがあります。
「物損」なら修理費や代車使用料などが請求項目に含まれる
一口に交通事故の損害賠償請求書といっても、事故の内容によって請求書の書き方が変わることがあります。
テンプレートに沿って請求書を作成する場合であっても、相手方に提出する前に弁護士などに一度チェックしてもらうと良いでしょう。
ここまでのまとめ
損害賠償請求書のテンプレートはインターネット上に公開されている
⇒テンプレート通りに作成した場合でも、弁護士などの専門家にチェックしてもらうことを推奨
交通事故の被害者請求・加害者請求とは?違いも解説
加害者側の自賠責保険に「誰が」請求するかによって呼び名が異なる
交通事故の慰謝料請求で被害者請求と加害者請求という言葉が出てきます。
これらはどういった意味なのでしょうか。
簡単に言うと、以下のようになります。
被害者請求とは
加害者側の自賠責保険会社に「被害者本人」が直接損害賠償請求をすること
加害者請求とは
① 加害者が被害者に損害賠償を支払った後、
↓
② 「加害者本人」が自分の自賠責保険会社に①の支払い分を請求すること
上記の条文に被害者請求と加害者請求に関する記載があるので、確認してみましょう。
第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。
引用元:自動車損害賠償保障法第16条1項
自賠法第16条1項は被害者請求について記載されています。
通常、保険というものは被保険者のみ使用できることになっています。
しかし、自賠責の場合は、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険に直接請求することも認められています。
なお、自賠責の被害者請求では、「物損」の請求は認められない点にご注意ください。
続いて、自賠法第15条を見てみましょう。
被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。
引用元:自動車損害賠償保障法第15条
被保険者=交通事故の加害者ですが、被保険者が自身の自賠責保険に対して請求できる旨が記載されていることがわかります。
請求の種類 | 請求する人 | 請求先 |
---|---|---|
被害者請求 | 被害者側 | 加害者側の自賠責保険 |
加害者請求 | 加害者側 | 加害者側の自賠責保険 |
被害者請求は後遺障害等級の認定申請でも行う
また、後遺障害等級の認定申請を行う際にも、被害者請求をすることがあるようです。
症状固定した後、後遺障害等級の認定申請を兼ねて加害者側の自賠責保険会社に被害者請求をするケースもあります。
その際、「後遺障害診断書」などの提出書類も追加で必要となる点にご注意ください。
後遺障害等級の申請方法に関しては、被害者請求の他に「事前認定」という方法があります。
「事前認定」は加害者側の任意保険会社に申請手続きを行ってもらう方法です。
しかし、「事前認定」だと後遺障害等級の認定のために努力や工夫がされにくいといった懸念があります。
そのため、後遺障害等級の認定申請は被害者請求のほうがオススメと言えます。
なお、後遺障害等級の認定申請に関しては以下のページで詳細に解説されているので、ぜひご参考にしてみてください。
交通事故でも健康保険に請求できる(使える)?
交通事故の治療に健康保険を使うことはできないため、自由診療で治療を受ける必要があると聞いたことがあります。
実際、それは本当なのでしょうか。
交通事故で負ったケガの治療のために健康保険を使用することは可能です。
なお、健康保険を使って治療を受けた場合、「第三者行為による傷病届」を加入している協会けんぽ支部に提出するようにしましょう。
こちらの届出を提出することによって、「健康保険によって立て替えられた被害者の治療費」を全国健康保険協会が加害者側に請求することができます。
全国健康保険協会のホームページでも、「交通事故でも健康保険を使用できる」という記載があることを確認できます。
交通事故(略)によってケガや病気をした場合でも、仕事中または通勤途上のもの以外であれば、健康保険を使って治療を受けることができます。
引用元:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3060/r143
健康保険を使用すれば、
- 受け取れる慰謝料の増額につながることがある
- 治療費の支払いを打ち切られた後も、自己負担額を抑えて通院できる
などのメリットがあるため、場合によっては健康保険を使用したほうが得になることがあります。
健康保険を使うメリット・デメリットについては以下のページで詳細に解説されているため、ぜひご参考にしてみてください。
交通事故の損害賠償項目として請求できるもの・できないもの
Q&A①|通院交通費は請求できる?
損害賠償請求書に請求項目を記載して相手方に送付する、と上述しましたが、中でも気になる請求項目があります。
通院交通費も請求することができるのでしょうか。
治療費や手術費はケガを治すために出費せざるを得ない費用なので、請求できるイメージはあります。
しかし、交通事故で通院した際、その交通費まで請求できるものなのでしょうか。
通院交通費を請求することは可能です。
通院交通費は財産的損害の積極損害のひとつとして相手方に請求することができます。
ただし、タクシーで通院する場合、必要性・相当性を被害者が証明しなければタクシー代が支払われない点にご注意ください。
財産的損害とは、お金の面で直接的に不利益が生じることです。
積極損害とは、交通事故によりせざるを得なくなった支出のことです。
交通事故が原因で通院交通費が発生した場合、相手方に交通費を請求することは妥当と言えるでしょう。
なお、通院交通費に関しては、基本的に実費を請求することができます。
バス・電車の場合は合理的なルートから往復の料金が求められ、自家用車の場合は1kmあたり15円のガソリン代が支給されることが多いです。
どちらの場合も原則領収書は不要ですが、自家用車を有料駐車場に停車した場合、駐車場の領収書が必要になるのでご注意ください。
また、徒歩の場合は交通費を請求することはできません。
- タクシーの場合
- 自家用車で有料駐車場を使った場合
上記2点のみ、領収書が必要になる点に注意しましょう。
通院手段 | 請求可否 | 領収書の要否 |
---|---|---|
電車・バス | 可能 | 不要 |
自家用車 | 可能 | 不要*2 |
徒歩 | 不可 | – |
タクシー | 可能*1 | 必要 |
*1タクシー通院の必要性・相当性を被害者が証明する必要あり
*2有料駐車場の使用時は必要
Q&A②|車の修理代は請求できる?
次に、車の修理代を請求することは可能なのでしょうか。
修理代を請求することはできます。
ただし、請求できるのは交通事故で損傷した箇所を修理するために必要な金額となります。
場合によっては金額が支払われないこともあるのでしょうか。
では、具体的にどのようなケースだと支払われないのでしょうか。
たとえば、
- 事故以前に損傷していた箇所の修理が含まれている場合
- 相場からかけ離れた高額な修理費の場合
などは請求しても金額を支払ってもらえない可能性が高いでしょう。
修理工場が決まったら、事前に相手方に連絡することをオススメします。
そうすることによって、修理後に修理費の争いが起こることを避けられます。
なお、相手方が指定した工場以外でも修理することはできるので、自由に修理工場を選びましょう。
請求可否 | |
---|---|
事故による損傷 | 可能 |
事故以前から損傷 | 不可 |
相場以上の修理費 | 不可 |
Q&A③|弁護士費用は請求できる?
被害者側の任意保険に弁護士費用特約があるなら300万円まで支払ってもらえる可能性あり
最後に、これが一番重要かもしれません。
弁護士費用を請求することはできるのでしょうか。
被害者側が加入している任意保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、ご自分の任意保険に請求できる場合があります。
一般的に、弁護士費用特約では300万円まで弁護士費用を支払ってもらうことができます。
弁護士費用特約とは?
以下が弁護士費用特約について説明した図になっているため、確認してみましょう。
被害者本人だけではなく、その家族も利用できる範囲になっていることがわかります。
ご自分が加入している任意保険に弁護士費用特約が付いているかどうか、ぜひ確認してみてください。
弁護士費用を加害者側に支払ってもらうには裁判?示談?
しかし、弁護士費用特約を使用することができない場合、弁護士費用は自己負担せざるを得ないのでしょうか。
主に、以下2つの方法で加害者側に弁護士費用を請求することが可能です。
② 示談の段階で弁護士費用相当の賠償を加害者側から受け取る
「①裁判を起こす」というのは方法としては理解できますが、手間や訴訟費用がかかるため、少し実行しづらいかもしれません。
② のように、弁護士費用を考慮した高額な賠償金を示談の段階で受け取るにはどうすればいいのでしょうか。
交通事故が刑事事件化されている場合、
② 示談の段階で弁護士費用相当の賠償を加害者側から受け取る
上記の可能性があります。
加害者の手持ち資産から被害者に賠償されると、刑事事件の処分内容が軽減されることがあるためです。
そのため、加害者から弁護士費用相当額の賠償を受け取る代わりに、被害者が寛大な刑罰を望むという嘆願書の作成に協力するケースがあります。
ポイントは刑事事件として加害者が起訴されているかどうかという点のようです。
- 裁判で弁護士費用の支払いを認めさせる見込みはあるのか
- 示談の際に弁護士費用相当額の賠償を受け取ることができないか
などでお悩みの場合、まずは専門家である弁護士に相談してから判断することをオススメします。
ここまでのまとめ
- 弁護士費用特約で300万円以内の弁護士費用を支払ってもらえる可能性あり
- 加害者側に弁護士費用を直接請求する方法は主に以下の2点
- ① 裁判を提起
- ② 示談の条件として受け取る(刑事事件化している場合、実現の可能性が高まる)
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最後に一言アドバイス
いかがでしたでしょうか。
最後に岡野代表弁護士からひと言アドバイスをお願いします。
交通事故で慰謝料請求をする際、わからないことが多く、困惑してしまう被害者の方も少なくありません。
その場合、弁護士に相談すれば、適切な請求の仕方や請求書の書き方などのアドバイスをくれることもあります。
弁護士に相談する際は、交通事故案件を多く経験しているアトム法律事務所にぜひご相談ください。
もし「弁護士費用特約」が使えるようであれば、費用をほとんど負担せずに弁護士に依頼することも可能です。
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まとめ
このページを最後までご覧になってくださった方は、
まとめ
- 交通事故で加害者側に慰謝料請求をする方法
- 請求書の書き方に決まった書式は無いこと
- 慰謝料請求の期限は、事故発生日または治癒日または症状固定日から3年(後遺障害の有無によって起算点が異なる)
ということなどについて、理解が深まったのではないでしょうか。
弁護士に慰謝料に関することで相談したい方は、スマホで無料相談よりご相談ください。
また、関連記事もご用意しましたので、交通事故の慰謝料に関する他記事もぜひご覧になってみてください。
このページが、交通事故の慰謝料請求についてお悩みの方のお役に立てれば何よりです。
岡野武志
基本的には、ケガが治癒してから加害者側の任意保険会社に慰謝料を請求することになります。
しかし、初めてのことで損害賠償の請求方法がよくわからず、困惑してしまう方も少なくないのではないでしょうか。
そういった疑問も本ページで解説していくので、請求方法についてしっかり学び、いざというときに適切な対応を取ることができるようになりましょう。