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交通事故によるけが治療に関するこうした疑問に、弁護士が答えていきます。
目次
交通事故によるけがの治療でポイントとなるのが、症状固定の時期と後遺障害等級認定です。
症状固定後、後遺障害がある場合には、後遺障害等級認定の申請を行うことができます。
申請により、後遺障害の症状や状態に合った等級が認定されると、それに応じた慰謝料などを、加害者側に請求できるようになります。
後遺障害等級認定の申請方法には2種類あります。
それが、被害者申請と事前認定です。
つまり、後遺障害等級認定を申請する場合には、上の図の症状固定と示談交渉との間に、以下の画像のどちらかの流れが入ることになるのです。
交通事故の示談金として受け取れる項目は、以下の通りです。
内訳 | 意味 | 死亡事故 | 傷害事故 |
---|---|---|---|
①治療費 | けがの治療費 | 支払われる | 支払われる |
②通院交通費 | 入通院の際の交通費 | ||
③看護料 | 看護が必要だった場合の費用 | ||
④入院雑費 | 入院中の電話代など | ||
⑤診断書作成費等 | 診断書作成の費用 | ||
⑥休業損害 | けがで休業せざるを得なくなった際の減収に対する補償金 | ||
⑦傷害慰謝料 | けがや入通院による精神的苦痛への慰謝料 | ||
⑧後遺障害慰謝料 | 後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛への慰謝料 | 支払われない | |
⑨逸失利益 | 後遺障害による労働能力の喪失で失った収入の補償金 | ||
⑩死亡慰謝料 | 死亡したことに対する慰謝料 | 支払われる | 支払われない |
⑪死亡逸失利益 | 死亡したことで得られなくなった収入への補償 | ||
⑫葬儀関係費 | 葬儀関係の費用 |
⑧⑨は後遺障害等級が認定されたときのみ
このうち、交通事故後早急に必要になるのがけがの治療に関連するお金です。
けがの治療費は示談金の一部であるため、本来ならこれを受け取れるのは示談成立後です。
しかし、交通事故は突然起こるため、特に治療費が高額になった場合、そんな治療費は今手元にない!という可能性もあります。
実は、そんなときのために、治療中の段階でも治療費を加害者側に払ってもらう方法があります。
けがの治療費は、けがの治療中もしくは示談成立後に、加害者側から払ってもらうことができます。
もう少し具体的にまとめた表が、以下のものです。
タイミング | 支払元 | 支払ってもらう先 | |
---|---|---|---|
① | 治療中 | 加害者側の任意保険会社 | 病院 |
② | 治療中 | 加害者の自賠責保険会社 | 被害者 |
③ | 示談成立後 | 加害者の保険会社 | 被害者 |
① の場合、治療を受けた際の請求は被害者ではなく加害者側の任意保険会社に直接送られます。
この時支払ってもらった治療費は、治療終了後に決められる示談金からは差し引かれます。
けがの治療費を直接病院に支払ってもらうためには、けがと事故の関連性や、加害者に賠償責任があることが明らかになっている必要があります。
そこがはっきりしない間は、こうした支払い方をしてもらうことはできません。
治療にかかったお金を実費分、病院に払ってもらえるのが①です。
一方、治療にかかった実費分ではなく、本来治療終了後に確定する自賠責保険金の一部を被害者が先に受け取り、それを治療費に充てる方法もあります。
仮渡金 | |
---|---|
受け取れる人 | 被害者 |
請求先 | 加害者側の自賠責保険会社 |
金額と条件 | 40万円 ・14日以上の入院と30日以上の治療が必要 ・大腿または下腿の骨折 など |
20万円 ・入院14日以上 ・入院と30日以上の治療が必要 ・上腕または前腕の骨折 など |
|
5万円 ・11日以上の治療が必要 |
|
290万円 ・死亡事故 |
|
請求可能回数 | 1回 |
支払までの期間 | 請求後1週間程度 |
必要書類 | ・仮払支払い請求書 ・交通事故証明書 ・事故発生状況報告書 ・医師の診断書 ・加入者の印鑑証明書 ・委任状、委任者の印鑑証明書 ・戸籍謄本 |
※加害者加入の任意保険会社から、内払金として必要金額を先払いしてもらう場合もあります。
基本的に示談金は、加害者の加入している自賠責保険の保険金と任意保険会社の保険金から成り立ちます。
加害者が任意保険会社に入っていなければ、自賠責保険の保険金と加害者自身の負担から成り立ちます。
仮渡金は、そのうちの自賠責保険金の一部を先に支払ってもらう、つまり示談金の一部を先払いしてもらうというものです。
仮渡金では、最終的に算出された自賠責保険金が仮払金を下回った場合は、その差額を返金することになります。
① の方法も②の方法も取らなかった場合、治療費は示談成立後に支払ってもらいます。
治療費は本来示談金に含まれるものなので、要するにそれを前払いで払ってもらうか示談金をもらうタイミングで払ってもらうかの違いだということです。
具体的に、以下のよう場合を仮定して、治療費の支払われ方と示談金の関係を確認してみましょう。
治療費を病院へ直接支払ってもらう場合 | 治療費用に仮払金を受け取る場合 | 示談成立後に治療費を支払ってもらう場合 | |
---|---|---|---|
治療段階 | 3万円 | 5万円 | 0円 |
治療終了、実際に支払われる示談金 | 50万円‐3万円 | 50万円‐5万円 | 50万円 |
加害者側からの支払額合計 | 3万円+(50–3)万円=50万円 | 5万円+(50–5)万円=50万円 | 0円+50万円=50万円 |
治療費を示談成立後に払ってもらう場合、治療時には自分で費用を立て替えることになります。
この時、被害者は自分が加入している保険を使うことができます。
治療費のために使える保険の種類は、以下の通りです。
特徴 | 役立つ場面 | |
---|---|---|
人身傷害補償保険 | 保険契約者やその家族が交通事故でけがをした場合の補償 | ・過失相殺*で十分な補償金が受けられなかった場合 ・加害者が自賠責保険しか加入していなかった場合 ・加害者が保険の利用を拒否した場合 |
搭乗者傷害保険 | 保険契約車の搭乗者が交通事故で死傷した際の補償 | 搭乗者も被害に遭った場合 |
無保険車傷害保険 | ひき逃げ、無保険車との事故で死亡したり後遺障害を被った際の補償 | ・加害者が保険を利用できない場合 ・加害者が分からず請求先の保険会社が分からない場合 |
*過失相殺…交通事故が起こった責任が被害者と加害者にどれだけあるかを示した過失割合を、賠償金額に反映させること
このほかにも、通勤・業務中の事故であれば労災保険、そうでなくても健康保険を使うことができます。
それぞれが負担してくれる割合は、以下の通りです。
労災保険 | 健康保険 | |
---|---|---|
負担してもらえる割合 | 10割 | 7割 |
治療費を立て替えるときには、必ず領収書を保管しておきましょう。
後から加害者側に請求する際に必要です。
交通事故のけがで治療しているとき、病院を変えることは可能です。
病院や医師が合わず、治療から足が遠のいて治療期間が長引いたりけがが悪化したりすると、それは被害者の責任とみなされます。
そうすると、治療費を支払ってもらえなくなる可能性があるため、合わないと感じるのであれば、転院した方がいいでしょう。
ただし、加害者側の保険会社から病院へ直接費用を支払ってもらっている場合には、転院の前に保険会社に連絡をしましょう。
加害者側に賠償責任があれば、基本的には治療費を支払ってもらうことができます。
ただし、以下の場合には治療費を支払ってもらえない可能性があります。
① に当たる例としては、事故でけがをしてから病院で診察を受けるまでに時間があいた場合です。
事故後病院での受診が遅れれば遅れるほど、事故との関連性を疑われる可能性は高くなります。
たとえ大した事故でないと思っても、できるだけ早く診察を受けることをお勧めします。
② に当たるのは、「転院は可能?」で解説したような、被害者の行動によってけがが悪化した場合です。
他にも、医師から処方された薬を正しく使わなかったり、医師の指示に従わなかったりした場合が、これに当たります。
けがの治療をしている段階から弁護士に相談というのは、早いように感じられるかもしれません。
しかし、その段階から弁護士に相談することは非常に大切です。
交通事故でけがをすると、被害者はけがに関する手続きやけがの治療、治療中の仕事や家事のことでいっぱいいっぱいになりがちです。
しかし、弁護士に相談することで、けがに関する手続きの負担を減らすことができます。
また、被害者がけがのことで余裕がなかったとしても、弁護士がいれば早めに示談に向けた対策を練ることができます。
治療後の示談交渉をスムーズに進めるためにも、早い段階から弁護士とコンタクトが取れていると安心です。
アトム法律事務所では、LINEや電話にて、無料相談を受け付けています。
まずはこれを利用して、けが治療に関する知識を聞いたり、今から何をしておくべきなのかを確認したりすることが大切です。
本格的に依頼することになると弁護士費用が掛かると思いがちですが、加入している保険に弁護士費用を負担してもらえることもあります。
一度加入している保険を確認してみましょう。
岡野武志
症状固定とは、けがの治療をこれ以上続けても、大幅な改善は見込めないという状態になることです。
完治または症状固定をもって、治療は終了となります。