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交通事故で仕事を休んだ場合の疑問について、弁護士がお答えします。
目次
交通事故によるけがの治療等で仕事を休むことがあります。
その場合、休んだ間の収入の補償を受けられます。
それが、「休業補償」です。
休業損害
交通事故によって仕事を休まざるを得なくなったために得られなくなった収入。
休業補償
休業損害に対する補償。
休業損害と休業補償については、
と区別する場合もあります。
休業補償額は、
算定基礎日額×実休業日数
で算出されます。
算定基礎日額とは、一日当たりの所得を算出したものです。
算定基礎日数は、自賠責保険会社、任意保険会社、弁護士で算出方法が異なります。
弁護士基準 | 任意保険会社基準* | 自賠責保険基準 | |
---|---|---|---|
基準の根拠 | 過去の判例に基づいた基準 | 会社経営を考慮した基準 | 被害者への最低限の補償を実現する基準 |
給与所得者 | 事故前3か月間の総所得÷90日 | 同左 | 原則日額5,700円 |
自営業者 | 昨年の所得÷365日 | 同左 | |
主婦 | 全女性の平均賃金から算出(10351円ほど) | 原則日額5,700円 |
*弁護士基準とほぼ同じと考えられるが、実際は各社で異なり非公開。
被害者側は、弁護士基準で算出した算定基礎日数をもとにした休業損害額を主張します。
一方、休業損害を支払う加害者側の任意保険会社は、任意保険会社基準での休業損害補償額を主張します。
(詳細は下記「補足」参照)
任意保険会社の基準は、各社で異なり非公開です。
基本的には弁護士基準とほぼ同じと考えられているものの、弁護士基準より低いことも多いです。
また、主婦の算定基礎日額は、自賠責保険基準と同様に考えられることが多いです。
算定基礎日額を算出する際には、過去3か月間の総所得や昨年の所得が用いられます。
しかしこれにはボーナスは含まれないため、注意が必要です。
◎自賠責保険と任意保険の関係性
休業補償を含む被害者への示談金は、
から成り立ちます。
基本的には任意保険会社が一括で補償金を被害者に支払い、あとから自賠責保険会社との間で清算をします。
したがって、休業補償を含む示談金額の交渉は、加害者側の任意保険会社と行うのです。
上で計算した算出方法では、ボーナスなどは考慮されていません。
普段の一日当たりの所得のみが考慮されています。
休業が普段の所得以外の所得にも影響した場合、休業損害に考慮される場合がります。
『損害賠償額算定基準上巻2016』(日弁連交通事故相談センター東京支部)記載の事例を見てみましょう。
土木建設会社部長が、事故による傷害のために有給休暇を使った。
本来なら自分のために使えたはずの有給休暇だとして、取得した有給休暇の日数も実休業日数とした。
ガス配管工の男性の休業による退職金減額分を、事故による休業に付随する損害として認めた。
海上勤務自衛官が陸上勤務に変更したために失った乗組員手当、航海手当等を認めた。
交通事故によるけがでの休業の影響や事情は非常に個別的です。
休業が有給休暇の使用やボーナス・退職金、人事異動などに影響した場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
休業補償は、交通事故による示談金の一部です。
交通事故の示談金は、加害者側の任意保険会社から支払われます。
したがって、休業損害も他の示談金と一緒に、示談交渉ののち、加害者側の任意保険会社に請求します。
示談交渉の際は、休業補償も含めていろいろな項目の金額を話し合うことになります。
参考として、主な示談金の内訳を確認しておきましょう。
内容 | |
---|---|
治療費 | 治療にかかった費用 |
通院交通費 | 通院にかかった費用 |
看護料 | 医師からの指示やけがの状態から必要となった場合に支払われる |
入院雑費 | 入院にかかる費用 |
診断書作成費 | 診断書を作成した費用 |
休業損害 | 交通事故のけがによる減収への補償 |
傷害慰謝料 | けがや入通院による精神的苦痛への補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害により今後も受ける精神的苦痛への補償 |
逸失利益 | 後遺障害による労働力の喪失を原因とした減収への補償 |
休業補償を受けるためには、
が必要です。
具体的にどんな書類が必要なのか、下の表にて確認しましょう。
証明する内容 | 給与所得者 | 自営業者 | 主婦 |
---|---|---|---|
事故前の所得の証明 | ・休業損害証明書 ・源泉徴収票 |
昨年の確定所得申告書 | ✖ |
休業の日数、必要性の証明 | 休業損害証明書 | 医師の診断書や治療の領収書など |
休業損害証明書は勤め先が作成します。
そこには、
など、休業補償の請求に必要な情報が記載されています。
主婦の算定基礎日額は、自賠責保険や任意保険では定額が決まっています。
また、弁護士基準では全女性の平均賃金から算出します。
したがって、事故前の所得を証明する書類は必要ありません。
休業補償額の交渉で争点となるのは、
の2点です。
など、実休業日数の交渉は非常に難しいです。
任意保険会社基準の算定基礎日額の算出方法は、弁護士基準とほぼ同じと考えられています。
しかし、基準が各社で異なり非公開である以上、弁護士基準よりも低く算出されることも多いです。
算定基礎日額をいくらとするかも、争点になりやすいポイントの一つです。
実際に弁護士によって、休業補償額が増額された例を見てみましょう。
以下は、アトム法律事務所での例です。
①相談内容 |
---|
・パートタイマーの女性が交通事故に遭った ・加害者側の保険会社が提示した示談金額は351万円 |
②弁護士の見立て |
・休業補償や逸失利益*が低く算定されていた |
③結果 |
・年収や休業日数を法的根拠や過去の判例に即して再計算 ・315万円→2100万円に増額 |
アトム法律事務所『交通事故の慰謝料.com』(https://xn--u9j691gec457gdmeqoat28s0li.com/zougaku/08)より
*逸失利益とは、後遺障害によって労働力を失ったために得られなくなった収入を補償するもの
「休業補償の補償範囲は?」でみたように、事故でのけがによる所得への影響は非常に個別性が高いものです。
休業によって出世が遅れたり、担当を変更させられたりと、様々な影響が考えられます。
弁護士に相談することによって、そうした個別的な損害に対する補償も受けられる可能性もあります。
弁護士に相談するメリット
弁護士への無料相談を利用することで、事前に懸念点を払しょくしてから依頼をすることができます。
アトム法律事務所では、LINEや電話でも無料相談が可能です。
弁護士との相性や休業補償の増額可能性などを事前に無料で確認できるので、安心ですね。
弁護士費用は、弁護士事務所ごとに決められているため、一概にいうことはできません。
しかし、加入している保険によっては、弁護士費用特約を利用できます。
弁護士費用特約を利用すると、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。
被害者自身で休業補償の交渉をするのは、難しいと言わざるを得ません。
休業補償の算出方法は決まっているものの、所得や休業日数を少なく見積もられることは非常に多いです。
しかし、不当に低く見積もられた休業補償額を、被害者自身の交渉で引き上げるのは簡単ではありません。
交渉相手である加害者側の任意保険会社は、経験も知識も豊富な交渉のプロだからです。
保険会社側としては、できるだけ支払う金額を抑えたいと考えています。
そのため、被害者だからと親身になって、金額を上げてもらうことは期待できないのです。
法的根拠を持って交渉にあたることのできる弁護士に依頼することが最もいい方法でしょう。
最後に、弁護士に交渉を依頼するメリットをまとめておきましょう。
状況 | メリット |
---|---|
低額な休業補償額を提示された | 低額な金額が算出された理由を分析し、法的根拠を持って交渉してもらえる |
普段の所得以外の個別的な損害がある | 個別的な事情についても法的根拠を用いて交渉してもらえる |
示談交渉に費やせる時間が少ない | 弁護士が交渉してくれるので時間の心配がいらない |
交通事故の休業損害では、事故によるけがのために会社を休んだ分の収入が補償対象とされます。ここにはボーナスや賞与は含まれません。また、休業の際に有給休暇を使っていた場合や休業が退職金に影響した場合、けがによる異動が収入に影響した場合は、休業損害の対象となる可能性があります。 休業損害の補償範囲の解説
休業損害は、基本的に加害者側の保険会社に請求します。請求の際は、休んだ日数や事故前の収入、休業の必要性を証明しなくてはなりません。そのため、①給与所得者の方なら休業損害証明書と源泉徴収票②自営業の方なら昨年の確定所得申告書や医師の診断書・治療の領収書③主婦の方なら医師の診断書・治療の領収書が必要です。 休業損害の請求先と必要資料
示談交渉の際に休業損害をめぐって争点となりやすいのは、①実休業日数を何日とするか②1日当たりの収入をいくらとするかということです。実休業日数については、休んでいた日全てが本当に休まざるを得ないものだったのか、半休で病院に行った場合はどう扱うかなどが争点となりがちです。1日当たりの収入については、加害者側任意保険会社は低めに計算してくることがあるため、争点となりやすいのです。 休業損害の争点と示談例
岡野武志
交通事故に遭って仕事を休まざるを得なくなった場合、それは被害者の責任ではありません。
休んだことによって得られなくなった収入を、「休業損害」といいます。
そして、休業損害に対する補償を、「休業補償」といいます。