作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
脊椎骨折(脊椎圧迫骨折)の後遺症|どんな手術?後遺障害慰謝料はいくら?
この記事のポイント
- 脊椎骨折の後遺障害には「変形障害」「運動障害」などがみられる
- 慰謝料の金額は、後遺障害の程度・重さごとにさまざま
- 弁護士に依頼することで2~3倍程度の慰謝料増額が見込める
脊椎とは背骨のことで、背骨の中には脊髄とよばれる神経の束が通っています。脊椎の骨折の仕方によっては脊髄にまで影響がおよび、手足の麻痺やしびれなどの障害が起こる可能性があります。脊髄は傷つくと現代の医学では完全に元に戻るのは困難とされているため、受傷時の症状が後遺症として残ってしまう可能性が高いです。
後遺症が残れば、将来にわたって色々な損害を被ることになります。損害に対して適正な慰謝料などの補償を得ることはできるのでしょうか。
- 脊椎骨折は手術が必要?
- どんな後遺症の症状がある?
- 脊椎骨折は後遺障害に認定される?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
脊椎骨折は脊椎を構成する複数の椎骨が骨折することで、骨が完全に折れる以外にもヒビが入る・へこむ・粉砕するなどの状態も骨折に該当します。
脊椎骨折の基礎知識|脊椎圧迫骨折とは?
脊椎骨折(脊椎圧迫骨折)と症状
脊椎骨折は脊椎(背骨)が骨折することです。代表的な脊椎骨折の種類としては、
- 脊椎圧迫骨折:脊椎を構成する椎骨が圧迫されてつぶれるように折れる
- 脊椎破裂骨折:脊椎を構成する椎骨が楔状に亀裂が入って折れる
があります。脊椎骨折の中でも、脊椎圧迫骨折がよく知られています。
脊椎圧迫骨折は高齢者の場合だと骨粗しょう症などによって引き起こされることが多いようですが、若い人でも交通事故などの強い外傷によって生じることがあります。
脊椎骨折、脊椎圧迫骨折には以下のような症状があります。
脊椎骨折の症状
- 骨折した部位に強い痛み
- 骨折した部位の腫れ
骨折したことで活動性が低下し、筋力低下につながることになります。
脊椎骨折は何科に行く?
脊椎骨折は、整形外科を受診しましょう。
交通事故などで強い外傷を負った場合はもちろんですが、もともとの骨の状態によっては転んだりぶつけたりしただけで骨折することもあります。背中の痛みがつづくなどという方は、早急に整形外科を受診していただきたいです。
脊椎骨折の治療&手術|ベッドで安静?
基本的に、コルセットなどの専用装具をつけてベッド上で安静にする保存療法がとられるのが主です。3~4週間で骨が形成されてくるので、痛みは次第におさまってくるでしょう。
脊椎骨折のなかでも、脊椎圧迫骨折や脊椎破裂骨折などによって骨の破片が脊髄を圧迫している場合、
- 金属プレートで脊椎を固定
- 骨セメントを注入して脊髄を固定
などの手術が緊急でおこなわれます。
脊椎骨折の後遺症|変形は後遺障害?
後遺症(後遺障害)
十分な治療をおこなっても、これ以上に良くも悪くもならない状態で残った症状
交通事故では障害の部位・程度に応じて14段階の後遺障害等級で区分される
脊椎骨折で生じる可能性のある後遺障害には、以下のようなものが考えられます。
脊椎骨折の後遺症
- 変形障害
- 運動障害
- 神経障害(痛み・しびれ)*
- 麻痺(手足が動かない)*
* 脊髄損傷をともなった場合
脊椎は脊髄を守る骨であり、骨折すると脊髄損傷におよぶ可能性があります。脊髄損傷を負うと、神経障害や麻痺などの後遺症が残る可能性が高くなります。
それぞれがどのような症状で、何級の等級になるかは次章にて詳しく説明します。
【参考】脊髄損傷におよんだ場合
脊椎骨折のなかでも脊椎圧迫骨折は比較的、骨折のみで済むこともあり幸いにも脊髄損傷まで及ばないケースもあるようです。しかし、脊椎破裂骨折は脊髄損傷を併発する可能性がより高くなり、後遺症が残る可能性も高いといわれています。
もっとも、脊髄を守る脊柱が折れるわけですからリスクとしてはどちらも脊髄損傷の可能性は大いにあります。
脊椎骨折で慰謝料を増加させる方法
脊椎骨折の後遺症で増える保険金|後遺障害慰謝料・逸失利益
後遺障害等級に認定されることで事故の相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残ったときに追加で支払われる金銭の一つが後遺障害慰謝料です。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことで受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
後遺障害慰謝料の他に、追加で支払われる金銭として逸失利益があります。
後遺障害の逸失利益
後遺障害を負ったことで労働能力が失われ、収入が減ることに対する補償
(計算式)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお「労働能力喪失率」については、障害の部位・程度、被害者の年収・職業などを考総合的に判断して増減することがあります。
主婦などの場合における年収算定方法・ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
適正な等級で後遺障害が認定されるには、
- 記載が充実している後遺障害診断書
- 十分な画像所見がそろっている
- 事故と脊椎骨折による後遺障害の因果関係が説明できる
このような点が大切です。弁護士がつくことで、後遺障害が認定されやすくなるポイント・見通しについてのアドバイスができます。
後遺障害等級の申請方法|脊椎骨折の場合
脊椎骨折で実際に後遺障害等級の申請をするところから後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
①症状固定の診断
治療をつづけても症状が改善する見込みがなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合、原則として事故から約6カ月以上経っている必要があります。
6カ月よりも治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなってしまいます。
②後遺障害診断書・医学的資料の用意
症状固定の診断を医師から受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書、レントゲン画像など医学的資料といった資料を準備します。
後遺障害の申請は、2種類の方法があります。
事前認定▶被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出
被害者請求▶被害者が後遺障害診断書とその他資料も用意して自賠責保険に提出
被害者請求は資料収集の手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利となる資料を自分で精査できるのが強みとなっています。弁護士に依頼することで資料収集作業も任せることができます。
比較
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を精査できる |
デメリット | 自分で資料を精査できない | 資料収集の手間がかかる |
③損害保険料率算出機構による審査
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構という専門の認定機関が後遺障害等級の審査を行います。
脊椎骨折における後遺障害等級の認定では、
- 「脊椎骨折」や「脊椎圧迫骨折」といった診断名が記載された診断書があること
- CTやMRIなどの画像所見があること
- 交通事故との因果関係が説明できること
このような点が重要になってきます。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。
後遺障害等級の申請について
脊椎骨折による「変形障害」の後遺障害
脊椎骨折による「変形障害」の後遺障害等級
脊椎骨折を負うと脊椎に変形障害が残ると正常なバランスを保つことがむずかしくなります。
- まっすぐ立てない
- まっすぐ歩けない
などの症状が生じる可能性があります。
脊椎骨折による「変形障害」で認定の可能性がある後遺障害等級はつぎの通りです。
後遺障害等級
脊椎骨折による「変形障害」
等級 | 内容 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残す |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残す |
11級7号 | 脊柱に変形を残す |
用語解説
▼脊柱に著しい変形を残す
…画像で圧迫骨折や脱臼などが確認できる場合であって、つぎの【1】【2】のいずれかが認められる場合
【1】圧迫骨折などにより、2個以上の椎体の前方の高さが「著しく減少」し、後彎が生じているもの。「著しく減少」とは、減少したすべての椎体の後方の高さの合計と、同じ椎体の前方の高さの合計の差が減少した椎体の後方の1個当たりの高さ以上であるものをいう。
【2】圧迫骨折などにより、1個以上の椎体の前方の高さが「減少」し、後彎が生じるとともにコブ法による側彎度50度以上になっているもの。「減少」とは、減少したすべての椎体の後方の高さの合計と、同じ椎体の前方の高さの合計の差が減少した椎体の後方の1個当たりの高さの50%以上であるものをいう。
▼脊柱に中程度の変形を残す
…画像で圧迫骨折や脱臼などが確認できる場合であって、つぎの【1】【2】【3】のいずれかにあてはまる場合
【1】 圧迫骨折などにより、1個以上の椎体の前方の高さが「減少」し、後彎が生じているもの。
【2】コブ法による側彎度が50度以上であるもの。
【3】環椎または軸椎の変形・固定により、つぎのA.B.Cのいずれかに当てはまること。
A. 60度以上の回旋位となっているもの。
B. 50度以上の屈曲位または60度以上の屈伸位となっているもの。
C. 側屈位となっており、X線写真などにより矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
▼脊柱に変形を残す
…つぎの【1】【2】【3】のいずれかが認められる場合
【1】画像で圧迫骨折や脱臼などが確認できるもの。
【2】脊椎固定術がおこなわれたもの(移植した骨が脊椎に吸収されたものを除く)。
【3】3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの。
脊椎骨折による「変形障害」の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料などの金額は、事故の相手方が算定する際に用いる基準(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が示談交渉に介入する際に用いる基準(弁護士基準)で大きく異なります。
最も高額で適切な慰謝料を得るためには、弁護士基準による算定を実現させることが重要になります。
脊椎骨折による「変形障害」の症状に対する後遺障害慰謝料はつぎのとおりです。
後遺障害慰謝料
脊椎骨折による「変形障害」
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 498万円 | 1180万円 |
8級相当 | 324万円 | 830万円 |
11級7号 | 135万円 | 420万円 |
等級によって異なりますが、弁護士への依頼で弁護士基準による請求ができれば2~3倍程度の後遺障害慰謝料の金額となる可能性が高くなります。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階からの弁護士相談をご検討ください。
脊椎骨折による「運動障害」の後遺障害
脊椎骨折による「運動障害」の後遺障害等級
脊椎骨折が原因で脊柱に変形障害が残ると、
- 首が曲げられない
- 腰をひねれない
などの症状が生じることになり、日常の何気ない行動に支障が出ることが考えられます。
脊椎骨折による「運動障害」で認定される可能性がある後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
脊椎骨折による「運動障害」
等級 | 症状 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残す |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残す |
脊椎骨折による「運動障害」の後遺障害慰謝料
脊椎骨折による「運動障害」の症状に対する後遺障害慰謝料はつぎのとおりです。
後遺障害慰謝料
脊椎骨折による「運動障害」
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 498万円 | 1180万円 |
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
脊椎骨折による「神経障害」の後遺障害
脊椎骨折による「神経障害」の後遺障害等級
脊椎骨折が原因で脊髄などの神経が損傷されると「神経障害」の後遺症が残る可能性があります。
脊椎骨折による「神経障害」で認定される可能性がある後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
脊椎骨折による「神経障害」
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残す |
14級9号 | 局部に神経症状を残す |
脊椎骨折による神経症状が後遺障害として認定されるには、約半年以上の通院と画像検査を受けることがポイントとなります。
- 神経学的な検査結果があるか
- レントゲンやMRI画像などの所見があるか
このような点が判断要素として大きくあつかわれます。
痛み・しびれ症状が医学的に証明可能であれば12級13号、一応の説明や推定が可能であれば14級9号に該当します。
脊椎骨折による「神経障害」の後遺障害慰謝料の相場
脊椎骨折による「神経障害」の症状に対する後遺障害慰謝料はつぎのとおりです。
後遺障害慰謝料
脊椎骨折による「神経障害」
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
脊椎骨折による「麻痺」の後遺障害
脊椎骨折による「麻痺」の後遺障害等級
脊椎骨折が原因で脊髄など神経が損傷されると「麻痺」の後遺症が残る可能性があります。
脊椎骨折による「麻痺」で認定される可能性がある後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
脊椎骨折による「麻痺」
等級 | 症状 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
脊椎骨折による「麻痺」の後遺障害慰謝料の相場
脊椎骨折による「麻痺」の症状に対する後遺障害慰謝料はつぎのとおりです。
後遺障害慰謝料
脊椎骨折による「麻痺」
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1163万円 | 2370万円 |
3級3号 | 829万円 | 1990万円 |
5級2号 | 599万円 | 1400万円 |
7級4号 | 409万円 | 1000万円 |
9級10号 | 245万円 | 690万円 |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
脊椎骨折の後遺症に関するお悩みは弁護士へ
脊椎は体幹を支える重要な骨なので、障害が残ると立っているだけでも辛かったりと日常生活に大きな影響を与えることになります。また、重篤なケースだと脊髄損傷までおよび、最悪の場合は寝たきりの状態になってしまう可能性も十分にあります。
にも関わらず、相手方から提示される損害賠償の金額は被った損害に対して適切ではない低額であることが多いのが実情です。
損害に対して十分な補償が得られるようにするためには、弁護士に依頼することが一番です。
弁護士に依頼することで、
- 慰謝料などの損害賠償が増額する可能性が高まる
- 保険会社とのやり取りすべてを任せられる
このようなメリットが得られます。
脊椎骨折による慰謝料はどのくらいが妥当か、後遺障害等級の申請方法など、どのような疑問でも結構です。
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岡野武志弁護士