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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
腓骨神経はひざ下の骨に巻き付くように走る神経です。
ここが損傷すると、足首や足の指が動きにくくなったり、ひざ下にしびれが残ったりします。
歩行に影響を与える可能性もあり、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
腓骨神経麻痺によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
腓骨神経は、ひざ下を走る神経で、足の感覚や足首・足関節の運動を支配します。
体表に近い場所に位置しており、交通事故で損傷を受けやすい部分でもあります。
腓骨神経麻痺には、以下のような症状があります。
腓骨神経は足首や足の指を動かす筋肉を支配しているため、損傷を受けると足首や足指関節がうまく動かせなくなります。
そうなると足首から下がだらんと垂れ下がる下垂足になります。
下垂足になると
など、日常生活に影響が出ます。
また、腓骨神経麻痺によるしびれは主に、
に現れます。
腓骨神経麻痺の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
中には足とともに頭部にもけがを負っており、ひざ下の症状が腓骨神経麻痺によるものなのか、脳神経の損傷によるものなのかわからない場合もあるかと思います。
そのようなときは、脳神経内科に行くことで原因を突き止め、正しい受診先を判断してもらえます。
腓骨神経麻痺の治療としては、手術を行うものと行わないものがあります。
腓骨神経が圧迫されたことによる麻痺など軽度なものであれば、手術は行われません。
などを行い自然治癒を待つ
一方、こうしたいわゆる保存療法では治療が難しいものの場合は、手術が行われます。
神経への圧迫を取り除く
→脛骨や腓骨の骨折などが神経を圧迫している場合がある
神経の縫合・剥離・移植
→腓骨神経の修復・移植で改善を目指す
腱移行手術
→損傷を受けた筋肉の代わりに筋肉別の筋肉を移行する
距踵関節固定術(きょしょうかんせつこていじゅつ)
→下垂足を改善するため足首を固定する
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
腓骨神経麻痺を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で交通事故の加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に腓骨神経麻痺で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
腓骨神経麻痺では、保存療法や手術を行っても足首や足指関節の機能障害が残る場合があります。
具体的には、
が残ります。
そうした場合の後遺障害等級は以下の通りです。
足首・足指関節の機能障害
等級 | 症状 |
---|---|
8級 | 足関節が全く可動しないか、可動域が10%以下に制限される |
9級 | 1足の足指の全部の用を廃した |
10級 | 足関節の可動域が1/2以下に制限される |
11級 | 1足の親指を含む2以上の足指の用を廃した |
12級 | ▼足関節の可動域が3/4以下に制限される ▼1足の親指または他の4つの足指の用を廃した |
13級 | ▼1足の人差し指の用を廃した ▼1足の人差し指を含む2つの足指の用を廃した ▼1足の中指以下の3つの足指の用を廃した |
14級 | 1足の中指以下の1つまたは2つの足指の用を廃した |
下垂足の場合は、上記の表のうち
の2つに該当します。
そのため、2つの等級を合わせて「併合7級」として扱われます。
後遺障害慰謝料の金額水準は、一般的な後遺障害7級の場合と同じです。
足関節・足首関節の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
足首・足首関節の機能障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級 | 324万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
下垂足で併合7級になった場合は、
となっています。
腓骨神経麻痺では、しびれが残る場合もあります。
その場合の後遺障害等級は以下のようになります。
腓骨神経麻痺によるしびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
何を以てこの区別を行うかについては、
が大きな判断要素となります。
しびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、医学的な証明が十分とは言えないものの症状があることは推定できるという場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腓骨神経麻痺によるしびれ
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
腓骨神経は体表に近い位置にあるため、交通事故でも比較的圧迫や損傷を受けやすい部位です。
そして、下垂足をはじめ、歩行に影響を与える可能性があります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
腓骨神経麻痺による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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