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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
脛骨高原はすねに位置する脛骨の上端部、膝下部分に当たる部分の骨を骨折することです。
日常生活の中でも非常によく使う膝関節に大きな影響をもたらすということもあって、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
脛骨高原骨折によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
脛骨とは、すねにある2本の骨のうち太い方の骨です。
脛骨高原骨折はこの脛骨の上端部を骨折することで、脛骨顆部骨折、プラトー骨折とも呼ばれます。
脛骨高原骨折には、以下のような症状があります。
脛骨高原部はひざ関節を構成している部位であるため、ここを骨折すると膝に関する症状が出てきます。
また、同じく膝関節を構成している膝蓋靱帯・前十字靭帯・半月板なども一緒に損傷を受ける場合があります。
脛骨高原骨折など骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
整形外科では、骨のずれなどを確認するためレントゲン撮影やCT検査が行われます。
また、靱帯などの損傷を調べる場合にはMRI検査が行われることもあります。
脛骨高原骨折は、原則として手術による治療が行われます。
具体的な内容としては、
というものがあります。
また、骨折の状態から膝関節を人工関節に置換する手術が行われる場合もあります。
ただし、極めて軽度な骨折であったり、被害者の状態を見て手術が困難であると判断されたりすると、手術ではなく保存療法がおこなわれます。
保存療法では、ひざに装具を付けて固定し、骨癒合を待つという方法がとられます。
骨折部分にプレートやスクリューを埋め込む手術の費用は、使用するプレートやスクリューの種類などによっても異なります。
また、適用される保険などによって負担割合も変わりますが、入院40日程度と仮定した場合の骨折観血的手術の費用の概算は以下のようになります。
1割負担の場合 | 3割負担の場合 |
---|---|
6万円~12万円 | 40~50万円 |
参考:https://www.dou-kouseiren.com/byouin/kutchan/inpatient/vt1bv7000000eti0-att/vt1bv7000000etm3.pdf
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
脛骨高原骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で交通事故の加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に脛骨高原骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
脛骨高原骨折によって、ひざ関節の可動域制限が後遺症として残る可能性があります。
その場合の後遺障害等級は以下の通りです。
脛骨高原骨折による膝関節の可動域制限
等級 | 内容 |
---|---|
10級11号 | ひざ関節の可動域が1/2以下に制限されるもの |
12級7号 | ひざ関節の可動域が3/4以下に制限されるもの |
膝関節の可動域は、
で確認します。
なお、これはどこまで自力で動かせるかではなく、医師など 他人が動かしたときにどこまで動くかが判断されます。
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
脛骨高原骨折による膝関節の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
脛骨高原骨折による膝関節の可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
10級11号 | 187万円 | 550万円 |
12級7号 | 93万円 | 290万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
脛骨高原骨折では、ひざ関節を人工関節に置換する場合もあります。
この人工関節への置換は、後遺障害として認められています。
対応する後遺障害等級は以下のようになります。
脛骨高原骨折による人工関節
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 膝に人工関節・人工骨頭を挿入し、かつ、可動域が1/2以下に制限されるもの |
10級11号 | 膝に人工関節・人工骨頭を挿入したもの |
脛骨高原骨折の夜人工関節に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
脛骨高原骨折による人工関節
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級7号 | 245万円 | 690万円 |
10級11号 | 93万円 | 290万円 |
脛骨高原骨折では、骨盤骨の一部を骨折部に移植して治療を行う場合があります。
その結果骨盤骨に裸眼で分かる程度の変形が生じた場合には、後遺障害等級が認められます。
その場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
脛骨高原骨折による骨盤骨の変形
等級 | 症状 |
---|---|
12級5号 | 骨盤骨に著しい変形を残すもの |
ただし、レントゲン写真等で初めて確認できる変形はこれに該当しません。
脛骨高原骨折による骨盤骨の変形に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
脛骨高原骨折による骨盤骨の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級5号 | 93万円 | 290万円 |
脛骨高原骨折では、骨折自体が治っても痛みが残る場合があります。
特に膝関節は体重などがかかることが多いため、歩行時や重いものを持った時、ひざを曲げた時など日常的に痛みを感じる場合があります。
その場合の後遺障害等級は以下のようになります。
脛骨高原骨折による痛み
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
具体的には、
という点を中心に区別されます。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
脛骨高原骨折による痛みの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
脛骨高原骨折による痛み
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
脛骨高原部は膝関節を構成する一つの部位であり、ここを損傷すると日常的な動作に影響が出てきます。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
脛骨高原骨折とは、脛骨の上端部を骨折することで、「脛骨顆部骨折」、「プラトー骨折」とも呼ばれます。脛骨高原骨折をすると、膝の痛み、膝の腫れ、膝の変形、膝の変色(内出血)といった症状がみられるようになります。 脛骨高原骨折の症状
脛骨高原骨折では、膝関節の可動域制限、人工関節への置換、骨盤骨の変形、膝の痛みといった後遺症が残る可能性があります。これらの後遺症に対して後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を請求することができます。 脛骨高原骨折の後遺症
脛骨高原骨折で後遺症が残り、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を請求できます。後遺障害慰謝料は、後遺症が残った精神的苦痛に対する補償で、後遺障害等級に応じて金額が決まります。後遺障害逸失利益は、後遺症により得られなくなった将来の収入に対する補償です。 後遺症が残るともらえる慰謝料と計算方法
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。それぞれ、被害者自身で集める資料の種類やその資料の提出先が異なります。審査は損害保険料率算出機構で行われます。そこで後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。 後遺障害等級認定の申請方法・流れ