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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
大腿骨転子部は下の図からもわかるように、太腿の付け根付近の骨です。
大腿骨転子部を骨折すると、痛みや歩行のしにくさなどが生じ、日常生活への影響も大きいです。
もしこのまま歩行が難しくなったり痛みが取れなかったりといった後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
大腿骨転子部骨折によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
大腿骨転子部は、比較的骨癒合がしやすい部位です。
とはいえ治療開始が遅れると回復にも影響が出ますので、まずは診察を受けることが大切です。
大腿骨転子部骨折には、以下のような症状があります。
引用元:https://medley.life/diseases/54eaae319711e78b251b6298/
骨折の有無は基本的にレントゲン検査で確認されます。
ですが、骨のずれが大きくない場合にはレントゲン写真では骨折を確認できないこともあります。
そうした場合には、MRI検査やCT検査を行い、さらに詳しく調べることになります。
大腿骨転子部骨折など骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
整形外科では、骨折部分の撮影の他、骨折による出血の程度を調べたり手術に耐えられる状態かどうかを調べたりするため、採血検査も行われます。
大腿骨転子部を骨折した場合、基本的には手術が行われます。
具体的には、骨折部にプレートや髄内釘、スクリューを埋め込み固定し骨癒合を待つことになります。
大腿骨転子部は筋肉に引っ張られて本来の位置からずれてしまうことも多いため、内部からしっかり固定するのです。
この手術方法を、骨折観血的手術といいます。
ただし、骨折が軽度である場合や年齢・容態から手術が難しいと判断された場合には、保存療法がとられることもあります。
この場合は、プレート等を埋め込むのではなく、外部から骨折部を固定して骨癒合を待ちます。
大腿骨転子部の骨折に対する骨折観血的手術の費用は、使用するプレートやスクリューの種類などによっても異なります。
また、適用される保険などによって負担割合も変わりますが、入院40日程度と仮定した場合の骨折観血的手術の費用の概算は以下のようになります。
1割負担の場合 | 3割負担の場合 |
---|---|
6万円~12万円 | 40~50万円 |
参考:https://www.dou-kouseiren.com/byouin/kutchan/inpatient/vt1bv7000000eti0-att/vt1bv7000000etm3.pdf
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
大腿骨転子部骨折により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
大腿骨転子部は、骨癒合しやすい部位であると言えます。
また、基本的にはスクリューなどを埋め込みしっかりと固定させて骨癒合させますので、比較的後遺障害が残りにくいと言われています。
とはいえ後遺障害が残る可能性もありますので、それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるか、次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に大腿骨転子部骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
大腿骨転子部は股関節付近の骨であるため、ここを骨折することによって股関節に可動域制限が生じることがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による股関節の可動域制限
等級 | 内容 |
---|---|
8級7号 | 股関節の可動域が10%以下に制限された |
10級11号 | 股関節の可動域が1/2以下に制限された |
12級7号 | 股関節の可動域が3/4以下に制限された |
股関節の可動域制限は、
という点から判断します。
この可動域は、本人が自力でどれだけ動かせるかということではなく、医師などが手で動かしてどこまで動くかという点で判断します。
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
大腿骨転子部骨折による股関節の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による股関節の可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級7号 | 324万円 | 830万円 |
10級11号 | 187万円 | 550万円 |
12級7号 | 93万円 | 290万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
折れた大腿骨転子部が癒合したとき、そこにずれがあると足が短くなる場合があります。
大腿骨転子部の骨折によって足が短くなった場合の後遺障害等級は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による足の短縮
等級 | 症状 |
---|---|
8級5号 | 5㎝以上短縮 |
10級8号 | 3㎝以上短縮 |
13級8号 | 1㎝以上短縮 |
大腿骨転子部の骨折による足の短縮に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による足の短縮
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級5号 | 324万円 | 830万円 |
10級8号 | 187万円 | 550万円 |
13級8号 | 57万円 | 180万円 |
大腿骨転子骨折が治っても、骨折部に痛みが残り続ける場合があります。
こうした痛みも、後遺障害として考えられます。
大腿骨転子部骨折による痛みに対する後遺障害等級は、以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による痛み
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
とはいっても障害の程度のみではなく、
が大きな判断要素となります。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
痛みの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による痛み
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
大腿骨転子部は足の付け根付近にある骨であり、歩行に大きく影響します。
また、日常的によく動かす部位であるため、後遺症が残れば生活への影響度も大きいです。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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