作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故刑事罰

交通事故の刑事罰|判例、罰金など刑事罰の種類、同乗者の死亡事例を弁護士が解説

交通事故の刑事罰

この記事では、「交通事故の刑事罰」について弁護士が解説しています。

この記事のポイント
  • 自動車事故をおこすと、危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪などに問われる。
  • 危険運転致死罪には罰金刑はないが、過失運転致死罪の場合には罰金刑がある。
  • 罰金刑が科されるのは、ケガの程度、過失割合、前科の有無などの事情による。

交通事故刑事罰が気になる…」

交通事故の場合、人身事故をおこしたときに刑事罰が問題になります。
物損事故は、過失の器物損壊となり、処罰できる法律がないからです。

人身事故

人がけがをしたり死んだりする事故。特に、交通事故。
※「大辞林 第三版」による

交通事故の刑事罰については、加害者のみならず被害者の方も気になるところだと思います。
同乗者死亡の事故においても、「刑事罰に問われるか」との疑問もよく聞かれるところです。

  • 交通事故の刑事罰の種類は?
  • 加害者が罰金になった判例は?

今回は、このような「交通事故の刑事罰」に関する疑問を弁護士が解説します。

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交通事故の刑事罰|刑事罰の種類は?

交通事故における刑事手続きの流れ

自動車運転処罰法

交通事故のうち自動車事故については、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下「自動車運転処罰法」という。)によって刑事罰が科せられます。

自動車運転処罰法の犯罪
  • 危険運転致死傷罪
  • 過失運転致死傷罪

などの罪に問われ、刑事罰が科せられることになります。

危険運転致死罪は、とくに悪質かつ重大な交通事故に適用されます。
危険運転致死罪には、罰金刑はなく、懲役刑のみ規定されています。

危険運転致死罪(20年以下)

危険運転致死罪とは、一定の危険な運転態様について処罰する犯罪です。

危険運転致死罪では、次のような運転態様が処罰の対象になります。

危険運転の類型
  • 飲酒運転や薬物が原因の危険運転
  • 制御困難な高速度で運転した
  • 運転技能が未熟すぎる場合
  • 通行を妨害する目的で運転した
  • 赤信号無視・高速度で運転した

※自動車運転処罰法2条の犯罪類型

危険運転致死罪の刑罰は、次のとおりです。

危険運転致死罪の刑罰

1年以上20年以下の懲役

※自動車運転処罰法2条の法定刑

運転の危険性の程度が重ければ重いほど、刑事罰は重くなります。
つまり、懲役刑の年数が長くなるということです。
加害者が反省していない場合などの事情も、刑事罰が重くなる理由です。

危険運転致傷罪(15年以下)

上記の危険運転の類型によって、人を負傷させた場合には、1か月以上15年以下の懲役となります。

危険運転致死傷罪にはその他の類型もある・・・

このほか、運転開始時には未だアルコールや薬物の影響が明確ではなくても、それらが運転に影響する可能性がある状態の下で自動車を運転した場合も、処罰の対象になります(自動車運転処罰法3条)。

このような運転によって、

  • 人を死亡させた場合は1ヵ月以上15年以下の懲役
  • 人を負傷させた場合は1か月以上12年以下の懲役

に処せられます。

危険運転致死傷罪(2条・3条)まとめ
条文罪名行為懲役
2危険運転致死飲酒・薬物
・高速度・運転未熟・
通行妨害・赤信号無視など
1

20
2危険運転致傷1ヵ月

15
3危険運転致死酒・薬物・
病気が影響して
正常な運転に支障
1ヵ月

15
3危険運転致傷1ヵ月

12

過失運転致死傷罪(7年以下)

過失運転致死傷罪とは、危険運転の類型には該当しないけれども、不注意な運転をして人を死亡させた場合に成立する罪です。

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要な注意を怠った場合に成立します。

たとえば、

  • わき見運転
  • 信号無視
  • 見落とし
  • ブレーキとアクセルの踏み間違い

などの注意義務違反があげられます。

過失運転致死傷罪で成立する刑罰

  • 1ヵ月以上7年以下懲役(刑務所へ収容+作業)
  • 1ヵ月以上7年以下禁錮(刑務所への収容のみ)
  • 1万円以上100万円以下罰金

とされています。

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交通事故の刑事罰|加害者が罰金になった裁判例は?

罰金になりやすい事例の特徴

交通事故の加害者の刑事罰については、前述のような法定刑をふまえ、個別事案の特殊事情に照らして検討された刑罰(=処断刑)の範囲内の刑罰が言い渡されます(=宣告刑)。

罰金刑が言い渡されやすいケース

  • 被害者が軽症のとき
  • 被害者の過失が大きいとき
  • 被害者が宥恕しているとき
  • 加害者に前科がないとき

などのケースです。

傷害事故が罰金刑になるケース

傷害事故において罰金刑になったケースには、次のような事例があります。

罰金|自動車運転過失傷害
罰金事故
25被害者
左肩鎖関節脱臼
加療約149
加害者
前科あり
30被害者
左下腿骨解放骨折
加療約137
被害者
赤信号侵入
加害者
前科なし
40被害者
左下腿打撲
全治約5
被害弁償あり
宥恕あり
加害者
前科なし
50被害者
外傷性頚部症候群
全治約5
加害者
前科なし
50被害者
頸椎捻挫
頭部打撲
全治約14
加害者
前科あり

第一東京弁護士会 刑事弁護委員会「量刑調査報告集Ⅳ」159頁以下

宥恕(ゆうじょ)というのは、被害者が加害者を許す(ゆるす)という意思表示をすることです。多くは示談書に記載することになるでしょう。
くわえて、交通事故の見舞金も宥恕の延長線上にあり、減刑につながる可能性があるので留意しておきましょう。

死亡事故が罰金刑になるケース

過失致死罪の場合、死亡事故であっても、被害者の過失が重大なものといえるときは、罰金刑にとどまる傾向があります。

罰金|自動車運転過失致死
罰金事故
20被害者
警備員(過失あり)
脳損傷により死亡
70被害者
交差点侵入(過失あり)
胸腔内蔵器損傷で死亡

第一東京弁護士会 刑事弁護委員会「量刑調査報告集Ⅳ」173頁以下

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交通事故の刑事罰|同乗者死亡の刑事罰

同乗者死亡の交通事故についても、刑事罰は同様に適用されます。

上述の各犯罪類型の行為態様に該当するのであれば、同乗者が死亡した場合であっても、刑事罰が科されるのです。

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交通事故の刑事罰…お悩みなら弁護士まで

加害者の刑事罰もさることながら、被害者としては適切な賠償金をうけとることができるのか気になりますよね。
交通事故の示談金の内訳を確認しておくことも重要です。

交通事故損害賠償の内訳
  • 交通事故で入通院を余儀なくされた
  • 交通事故で家族が死亡してしまった
  • 治療費が多額にかかるし、収入がない

このような損害について、被害者の方には人身事故の賠償金を請求する権利があります。

増額交渉(弁護士あり)

人身事故の賠償金は、多くの場合、相手方の保険会社との示談交渉にかかっています。

弁護士に交通事故の示談交渉を依頼すると、弁護士基準による示談交渉がなされるので慰謝料増額の可能性が高まるというメリットがあります。

保険会社は、示談不成立の場合、裁判に持ち込まれるリスクがあるため、弁護士基準による高額の示談交渉を受け入れやすい傾向にあります。

さらに、加入されている自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、費用倒れにならずに交通事故を解決できます。

弁護士費用特約
弁護士費用特約
  • 被害者側が加入する自動車保険の特約
  • 保険会社が弁護士費用の全部または一部を負担する
  • 事故相手が、車やバイクであれば利用できることが多い

ご不安な点については、まずは無料相談をご活用ください。
慰謝料の相場、手続きの流れについても、お気軽にご相談ください。

まずは【無料相談】…お気軽にご相談ください。

  • 交通事故示談金はいくら?
  • 死亡事故慰謝料は正しい?

このようなお悩みで法律事務所をお探しの方へ。

アトム法律事務所では、交通事故弁護士相談窓口を設置しています。

お問い合わせ・相談ご予約の受付時間は・・・

  • 24時間365
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早期のご相談が、お悩み解決の秘訣です。
お電話・メール・LINEにて、お気軽にお問い合わせください。

保険会社との示談においては、保険会社独自の支払基準にもとづく慰謝料が提示されます。
弁護士基準による算定額とは大きな差があるため、提示された金額に疑問がある場合には、まずは弁護士までご相談ください。

弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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