作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故の慰謝料計算機|損する前にまずはシミュレーション
「交通事故の慰謝料はどう計算すればいい?」という質問はとても多く寄せられます。慰謝料の金額確定には色々な要素が関係しています。
今回は、便利な慰謝料計算機と、慰謝料を計算するときの3つの基準を紹介します。
また、具体的に主婦がむちうちや骨折になった場合を例に、実際に慰謝料を計算してみます。
- 交通事故の慰謝料計算機はある?
- 自賠責保険の慰謝料はどう計算する?
- 主婦がむちうちや骨折の被害者になったら?
順番に確認していきましょう。
目次
交通事故の慰謝料計算機|かんたん10秒の慰謝料算定ツール
慰謝料計算機はここからすぐ使える
慰謝料計算機をつかえば、簡単に慰謝料が計算できます。個人が特定されるような氏名や住所の入力は一切不要です。
計算機を使うには、ケガの内容や治療・通院の程度、事故前の収入などの入力が必要です。
つまり慰謝料の確定には、これらの要素が関連しているということです。この記事でこれから解説していきます。
「慰謝料」と「示談金」の違いは?
まず、慰謝料の意味を確認しておきましょう。
慰謝料
交通事故など、他人の不法行為によって被った精神的苦痛を緩和・除去するための金銭的補償のこと
慰謝料は、「精神的苦痛」に対して支払われる金銭的補償を意味します。「示談金」という言葉を耳にすると思いますが、厳密には意味が少しちがいます。
示談金は、交通事故が解決したときに最終的に被害者に支払われる金銭的補償の総額を指します。たとえば、交通事故の影響で壊れたもの(物損)への損害賠償も、示談金には含まれています。
慰謝料にはどんなものが含まれる?
「慰謝料」は「示談金」の一部です。もっと具体的に「示談金」の内訳をみてみます。
- 治療費
- 休業損害
- 入通院慰謝料
後遺障害が認定された場合は以下の2つも追加されます
- 逸失利益
- 後遺障害慰謝料
この記事では「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」を重点的にみていきます。
入通院慰謝料は、交通事故のケガの治療で入院・通院した日数に応じた金銭的補償です。後遺障害慰謝料は、治療を継続したけれども完治せず、後遺症として残ったものが「後遺障害」と認定された場合に、支払われる金銭的補償です。
ここで、後遺症と後遺障害の違いを確認しておきましょう。
後遺障害
- ① 交通事故による傷病が原因である
- ② 医学的治療を継続するなど適切な治療をしたが、症状が残存している
- ③ 将来にわたって回復が難しいとおもわれる肉体的・精神的な症状
- ④ 症状の存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの
4つの条件を満たすものを後遺障害としています。後遺症のうち、4つの条件を満たすものを「後遺障害」と呼ぶ、と考えるとわかりやすいと思います。
障害は、程度に応じて「後遺障害等級」という一定の基準で区分されます。具体的な等級は次の記事でご確認ください。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料、逸失利益が被害者に支払われます。つまり、最終的に受け取る慰謝料が増えるということです。
後遺障害なし | 後遺障害あり | |
治療費 | 支払われる | 支払われる |
休業損害 | ||
入通院慰謝料 | ||
後遺障害慰謝料 | 支払われない | |
逸失利益 |
治療費・休業損害・逸失利益は「慰謝料」の定義には当てはまりませんが、示談金として支払われます。それぞれの意味を確認してみましょう。
治療費
治療内容に応じて支払われる金銭的補償です。
入院費や、交通費、診察台などが含まれます。
休業損害
事故により仕事ができなくなったことへの金銭的補償です。
休業した日数に応じて支払われます。
逸失利益
事故の後遺障害で労働能力が低下し、本来得られた経済的利益を失ったことによる損害です。
年収・労働能力喪失率・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を掛け算して算出します。
計算の仕方が変われば、被害者が受けとる示談金の金額も変わります。具体的な計算方法を確認してみましょう。
後遺障害等級の認定について、もっと詳しく知りたい方は次の記事も参考にしてください。
後遺障害等級認定について
交通事故の慰謝料の計算方法は?自賠責保険の1日4,200円って何?
交通事故の被害者が受けとる金銭的な補償は、どうやって計算するかで大きく変わります。「1日4,200円」という金額を提案された方、聞いたことのある人もいるかもしれません。この4,200円とは、自賠責保険の基準で計算した1日あたりの入通院慰謝料です。
慰謝料の計算には3つの基準があります。
- 自賠責保険の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士基準
それぞれの違いは後ほど解説します。まずは、「自賠責保険」の基準を確認してみましょう。
【計算式】交通事故の慰謝料「自賠責保険」の計算方法
自賠責保険での計算方法は以下の通りです。
計算方法(自賠責基準)
- 治療費:入院料、診察料、看護料など
- 休業損害:日額×実際に休んだ日数
日額:原則5,700円
- 入通院慰謝料:4,200円×実際の治療日数
- 後遺障害慰謝料:等級に応じる
- 逸失利益:年収・労働能力喪失率・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を掛け算
入通院慰謝料の治療日数は、いずれか少ないほうを採用します。
- ① 実際に治療のために通院した日数×2
- ② 治療開始から終了までの日数
慰謝料計算の3基準:自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準とは?
先ほども紹介しましたが、慰謝料計算には3つの基準があります。
- 自賠責保険の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士基準
まず、自賠責保険と任意保険のちがいを確認しましょう。
自賠責保険は、車の運転者に加入の義務があります。補償の上限が120万円と決まっています。任意保険は任意は任意です。交通事故やケガの程度によっては、この金額を超過することも多いです。そこで、120万円を超えた分をカバーすることが目的です。
自賠責保険 | 任意保険 | |
加入 | 義務加入 | 任意加入 |
保障目的 | 被害者救済のため 最低限の補償 | 自賠責保険の 追加補てん |
補償内容 | 上限あり (最大120万円) | 保険により 異なる |
交通事故がおこると、保険会社とのやり取りがスタートします。被害者は、加害者と直接交渉するのではなく、基本的には加害者の保険会社とやり取りをします。そして、加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社の担当者とやりとりします。これは任意一括払といい、自賠責保険会社の支払い分も、任意保険の会社が対応する仕組みがあるためです。
まとめ
- 自賠責保険は義務加入、任意保険は任意加入
- 自賠責保険の補償金額は最大120万円
- 交通事故直後に、必ず加害者に保険加入状況を確認
任意保険の基準は、自賠責保険の基準とは違い一般に公開されていません。しかし、これまでの事例から、自賠責保険から大幅に増額される基準とはいえません。
イラストは、3つの基準の慰謝料の相場です。「自賠責保険の基準」や「任意保険の基準」とくらべて、「弁護士基準」での慰謝料相場が最も高い結果が出ています。計算方法を確認しましょう。
計算方法(裁判・弁護士基準)
- 治療費:入院料、診察料、看護料など
- 休業損害:日額×実際に休んだ日数
日額:事故前3か月の給料の合計額÷90日(又は3か月の稼働日数)
- 入通院慰謝料:過去の裁判例を根拠とする
- 後遺障害慰謝料:等級に応じる
- 逸失利益:年収・労働能力喪失率・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を掛け算
事故前3か月の給料は、手取りではなく控除前の支給額です。基本的に、自賠責保険の基準日額5,700円を下回ることはありません。
まとめ
- 弁護士基準での慰謝料相場が最も高い
- 弁護士基準は被害者にできるだけ有益になる計算ができる
弁護士基準の入通院慰謝料については、以下のページで具体的に紹介しています。ダウンロードもできますので、参考にしてください。
弁護士基準の入通院慰謝料算定表(軽傷・むちうち)
弁護士基準の入通院慰謝料算定表(重傷)
交通事故の慰謝料計算をしてみた主婦のケース|むちうちで67万円以上?
主婦が交通事故の被害者になったらどう計算する?
慰謝料は交通事故で受けた苦痛に対するものです。それは被害者が主婦であっても同じですから、計算方法も同じです。
少し複雑なのが「休業損害」です。休業損害とは、事故がなければ働いて得られたと想定される給料・ボーナスなどを指します。主婦の場合は家事労働が該当します。家事労働以外から収入を得ている主婦(例えば就労している主婦※以下、兼業主婦とします)の場合は、下に示す①②の方法で算出して日額の高い方を採用することになります。
主婦の日額
自賠責保険の基準
自賠責基準:1日あたり5,700円
弁護士基準
<専業主婦の場合>
事故前年の賃金センサスを元に算出:10,351円(平成29年・女性の平均年収3,778,200円)
<兼業主婦の場合>
- ①「実際の収入から算出した日額」
- ②専業主婦で算出した「10,351円」
① ②で金額の高い方を採用します。
算出する方法は「弁護士基準」が最も慰謝料増額が見込めそうです。被害者が主婦であっても、変わりません。
交通事故慰謝料|主婦がむちうちで通院3か月・休業14日間
むちうちは、交通事故のケガで多い症状です。ここでは通院3か月(実際に通院した日数は60日間)、休業14日間の場合のむちうちの「入通院慰謝料」と「休業損害」を、異なる2つの基準で計算してみましょう。弁護士基準の計算は、既出の軽度・むちうちの入通院慰謝料算出表を元にしています。
弁護士基準 | 自賠責保険の基準 | |
休業損害 (休業日数14日) | 144,914円 (10,351円×14日) | 79,800円 (5,700円×14日) |
入通院慰謝料 (通院3か月) | 530,000円 | 378,000円 (4,200円×90日) |
合計 | 674,914円 | 457,800円 |
原則の基準を元に算出
受けとる金額には217,114円もの差が出ています。
交通事故慰謝料|主婦が骨折で入院1か月・通院2か月・休業20日間
骨折も、交通事故のケガで大変多いものです。ここでは入院1か月・通院2か月(実際に通院した日数は46日間)、休業20日間の場合の「入通院慰謝料」と「休業損害」を、異なる2つの基準で計算してみましょう。弁護士基準の計算は、既出の弁護士基準の入通院慰謝料算定表(重傷)を元にしています。
弁護士基準 | 自賠責保険の基準 | |
休業損害 (休業日数20日) | 207,020円 (10,351円×20日) | 114,000円 (5,700円×20日) |
入通院慰謝料 (入院1か月 通院2か月) | 980,000円 | 378,000円 (4,200円×90日) |
合計 | 1,187,020円 | 492,000円 |
原則の基準を元に算出
受けとる金額には695,020円の差が出ています。計算する基準が異なるだけで、これだけの違いが出ることが分かります。
主婦の慰謝料に関する記事は、以下の関連記事も参考にしてください。
主婦が交通事故の被害者になった場合の関連記事
【無料相談窓口】交通事故の慰謝料を、適正な金額で受け取るには…
同じケガでも「弁護士基準」で計算すると、自賠責保険や任意保険の基準で算出した金額と比べ、慰謝料は大幅にアップします。弁護士基準での交渉のプロは弁護士です。適正な慰謝料を受けとるためにも、示談交渉は弁護士に任せることをおすすめします。
アトム法律事務所は、交通事故の解決実績が豊富です。
電話の相談窓口は24時間・365日無料です。時間の経過とともに事故現場の状況が変わってしまうのが、交通事故の特徴です。被害者・加害者の主張が食い違っていたり、食い違う恐れがある場合は、特にお早めのご連絡をお願いします。LINE相談も、「ライフスタイルに合わせて利用できた」と好評です。
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まとめ
交通事故の慰謝料は、誰もが適正な金額を受けとりたいものです。同じようなケガ・治療の経過でも、計算方法が変われば、金額も大きく変わります。今回は主婦の例を参考にしましたが、慰謝料の計算は交通事故の程度・ケガの程度など個別に変わります。「慰謝料はいくらになるのだろう?」という疑問は尽きないでしょう。算出基準や計算方法が分かっても、実際に、事例に合わせた慰謝料の計算をするのは、複雑で難しいことです。専門家である弁護士への相談・依頼をおすすめします。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。