作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故で骨盤骨折|後遺症が残ったら後遺障害申請!適正な慰謝料を得るには
本記事は「交通事故における骨盤骨折と後遺症」について弁護士が解説します。
本記事のまとめ
- 交通事故の骨盤骨折は後遺症が残ることがある
- 適正な慰謝料を得るには、後遺障害等級の認定が必要
- 骨盤骨折の後遺症は、症状ごとに後遺障害等級がさまざま
交通事故の骨盤骨折による後遺症が残り、
「後遺障害等級は認定してもらえるのか」
「保険会社が提示する慰謝料は適正な金額なのか」
などの不安を抱えられていることと思います。弁護士が、交通事故の後遺症が残ったときの対応について解説します。
目次
交通事故が原因の骨盤骨折
どんな交通事故で骨盤骨折に?
骨盤骨折は交通事故・転落などをきっかけとして生じることが多くなっています。交通事故では具体的にどのような事故が骨盤骨折にいたる可能性があるのでしょうか。
骨盤骨折がおこる交通事故の内容
- 歩行者の骨盤付近に車両が接触した
- バイク事故で転倒した際、ガードレールに骨盤を強打した
など、骨盤に強い衝撃が加わると骨折する可能性が高くなります。
外部からの直接的な衝撃だけでなく、間接的な強い衝撃でも骨盤骨折にいたる可能性はあります。
骨盤骨折とは?骨折の分類と症状
骨盤骨折は、交通事故の衝撃などの大きな外力が加わっておこる骨盤の骨折のことです。骨盤骨折は、大きく2つの骨折に分類されます。
骨盤骨折の分類
- 安定型骨盤骨折:骨盤を構成する骨の1ヶ所で骨が折れる
- 不安定型骨盤骨折:骨盤を構成する骨の複数箇所で骨が折れ、骨折部がずれやすくなる
骨盤は、
- 左右の寛骨(恥骨、腸骨、坐骨)
- 仙骨
- 尾骨
といった複数の骨で構成されています。そのため、骨折した場所ごとにあらわれる症状は異なります。
骨盤骨折の症状
骨盤骨折そのものによる激しい痛み
骨盤骨折にともなう他臓器の損傷(血尿、腟粘膜の出血、血便など)
貧血
など、骨盤骨折ではこのような症状が代表例としてみられます。
骨折のなかで骨盤骨折が占める割合は少なくなっていますが、骨盤は臓器や血管が周りに存在しています。そのため、骨盤の骨折にともなう血管損傷によって
- 出血性ショック
- 各臓器の機能障害
などがおこり、とくにこれらは死につながる可能性もあります。
骨盤骨折の治療法とリハビリ
骨盤はいくつかの骨から構成され、複雑であるため、
- 血圧
- 意識状態
- 骨折のタイプ
- 骨のズレの程度
- 臓器の損傷の有無
などを精密に調べて、治療方針が決定されます。
骨盤骨折の治療法
▼応急処置としての治療
サムスリング
シーツラッピング
▼骨のズレが少ないケース
保存的療法(手術なしで安静にして治癒をはかる)
▼骨のズレが著しいケース
創外固定術(骨盤に打ち込んだ金属棒同士を体の外でつなぎ固定する)
内固定術(金属プレートで骨盤を固定する)
など、骨盤骨折ではこのような治療法がとられることになります。特徴としては、手や足の骨折と違って骨盤はギプスによる固定ができないため、通常は金属で骨を固定する手術がおこなわれます。
また、骨盤骨折ではリハビリもおこなわれることが多くなっています。
骨盤骨折のリハビリ
▼第一段階
マッサージ・ストレッチで、股関節の可動域運動と簡単な筋力訓練
▼第二段階
骨盤に多少の体重負荷をかけながらの歩行訓練
▼第三段階
骨盤に全体重の負荷をかけながらの動作訓練
など、回復に向けて状態に合わせたリハビリがおこなわれます。
交通事故の骨盤骨折で残る可能性のある後遺症
交通事故で骨盤骨折の傷害を負い、治療やリハビリをおこなっても後遺症が残ってしまうことがあります。骨盤骨折で残る可能性のある代表的な後遺症の症状を解説します。
骨盤骨折の後遺症①変形障害
骨盤骨折では、変形障害の後遺症が残る可能性があります。変形障害は、骨折した部分が元通りにくっつかず、変形した形で固まってしまう状態をさします。
骨盤骨折における変形障害では、
- 外傷で負った骨折そのものによる変形障害
- 腸骨採取術による変形障害
に大きく分けられることになります。
腸骨採取術とは、他の骨欠損部の補てんなどの目的で骨盤の一部である腸骨を移植することを言います。腸骨の一部を採取することになるので変形障害が残る可能性があります。
骨盤骨折の後遺症②股関節の可動域制限
骨盤骨折では、股関節の可動域制限の後遺症が残る可能性があります。股関節の可動域制限は、関節が動きづらかったり、曲がりにくくなる状態をさします。
足の大腿骨と骨盤は股関節部分が接してるので、骨盤の骨折による影響を受けることがあります。
骨盤骨折の後遺症③神経障害
骨盤骨折では、神経障害の後遺症が残る可能性があります。神経障害は、骨盤の外傷部分に痛みやしびれが残ってしまう状態をさします。
骨盤の骨折部分が癒合する過程で発生する仮骨という組織が過剰に発生することで、神経障害が生じる可能性があります。
交通事故の骨盤骨折で後遺症が残ったらすべきこと
交通事故の骨盤骨折で後遺症が残ったらその損害に対する適正な慰謝料を得るために、さまざまなことを心得ておく必要があります。
心得を確認する前に、骨盤骨折の後遺症で得られる損害賠償の項目について確認しておきましょう。交通事故による損害では、大きく傷害部分と後遺障害部分で損害賠償の項目がわけられることになります。
主にこのような項目の損害賠償を事故の相手方に請求することができます。
後遺障害部分における損害賠償を請求するには、後遺障害等級の認定が必要になります。後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の有無が慰謝料をはじめとした損害賠償の金額に大きく影響することになります。
後遺障害申請をおこなう
後遺障害等級の認定は、後遺症が残ったすべての人が認められるというわけではありません。後遺障害の申請をおこない、専門の認定機関による審査を経て等級が決定される流れとなります。
申請には、医師が作成する「後遺障害診断書」が必須となります。
申請方法は、2通りの方法があります。
被害者請求では、後遺障害の認定に有利となる医学的な証拠を添付することができます。
適正な等級が認定されるためには、「被害者請求」を選択することをおすすめします。
後遺障害申請の手続き方法、後遺障害診断書について詳しくはこちら
認定の可能性のある後遺障害等級を知る
骨盤骨折の後遺症が残ったら、どのような後遺障害等級が認定される可能性があるのか知っておきましょう。
変形障害、股関節の可動域制限、神経障害それぞれで認定される可能性のある等級はつぎのとおりです。
変形障害
等級 | 後遺障害 |
---|---|
12級5号 | 骨盤骨に著しい変形*が認められる |
*裸体になったとき、外部から見てあきらかに変形している程度
股関節の可動域制限
等級 | 後遺障害 |
---|---|
12級7号 | 股関節の可動域が通常の75%以下に制限 |
10級11号 | 股関節の可動域が通常の50%以下に制限 |
人工関節などに置換 | |
8級7号 | 股関節の関節が硬直 |
股関節の完全弛緩性麻痺(力が入らない状態)またはこれに近い状態 | |
人工関節などに置換した場合で、その可動域が通常の50%以下に制限 |
神経障害
等級 | 後遺障害 |
---|---|
14級9号 | 神経症状が骨盤骨の外傷によるものと医学的に説明できる |
12級13号 | 神経症状が骨盤骨の外傷によるものと医学的に証明できる |
骨盤骨折では、このような後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害における後遺障害慰謝料などの損害賠償は、等級に応じた基準があらかじめ設定されており、その基準にもとづいて算定されることになります。したがって、適正な等級の認定が適正な慰謝料の支払いにつながるとも言えます。
後遺障害の等級は、一覧表として確認することができます。詳しくは、「後遺障害等級表」のページをご確認ください。
後遺障害で得られる慰謝料相場をチェック
交通事故による骨盤骨折の後遺症で支払われる慰謝料などは、金額を明示するのはむずかしいです。
- 症状の内容や軽重
- 治療期間
- 交通事故にあう前の収入
など状況は個人ごとに異なるため、骨盤骨折による後遺症が残ったことに対してはっきりと「慰謝料〇〇円」と示すことができません。
とはいえ、目安として損害賠償の相場を知っておきたいと思われるのが本音だと思います。そんなときは、慰謝料相場を今すぐ確認できる自動計算機をお使いください。
事前の会員登録などは一切不要で
- 入院期間
- 後遺障害等級
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交通事故の骨盤骨折で慰謝料に関してお悩みの方
慰謝料増額に向けた相談は弁護士へ
「保険会社から提示された慰謝料が少ないのではないか」
「慰謝料の相場と比べると低い金額で示談をせまられている」
慰謝料に関して、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。
お一人で交通事故処理のプロである保険会社と示談交渉をおこなうのには限界があります。専門用語を使って話をむずかしくし、保険会社の都合で話をすすめられてしまう可能性があります。
慰謝料増額の可能性を高めるには、弁護士にまずはご相談いただくことをおすすめします。交通事故の案件に注力する弁護士を選んで相談することがポイントです。交通事故の知識をもつ弁護士であれば、保険会社と対等な立場で交渉に臨むことができます。
アトム弁護士による無料相談のご案内
アトム法律事務所の弁護士は、交通事故の案件を積極的に取り扱っています。無料相談をおこなっていますので、アトムの弁護士に気軽に相談してみてください。
相談の予約窓口は24時間・365日受付しています。日中は仕事や家事で時間が取れないという方でも、ご利用いただきやすいと思います。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
骨盤骨折の後遺障害Q&A
どんな交通事故で骨盤骨折を負う?
骨盤骨折は、骨盤に強い衝撃が加わることで発生します。具体例としては、歩行者の骨盤付近に車両が接触したり、バイク事故で転倒したことで骨盤をガードレールにぶつけるなどが考えられます。外部からの直接的な衝撃だけでなく、間接的な衝撃でも骨折する可能性があるようです。 交通事故による骨盤骨折
骨盤骨折はどんな後遺症が残る?
骨盤骨折における後遺症としては、骨盤の変形障害・股関節の可動域制限・神経障害といった後遺障害が残る可能性があります。変形障害は骨折した骨がくっつく過程で変形したまま固まってしまう状態をいいます。股関節の可動域制限は股関節が動かしにくくなってしまう状態をいいます。神経障害は痛み、しびれ、麻痺などが残る状態をいいます。 骨盤骨折の後遺症を解説
骨盤骨折の後遺障害等級は?
骨盤骨折による後遺障害では、骨盤の変形障害で12級5号、股関節の可動域制限で8級7号・10級11号・12級7号、神経障害で12級13号・14級9号の等級が予想されます。等級の数字が低いほど残存した症状は重くなっています。 骨盤骨折に関する後遺障害等級