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交通事故の治療を続けていると、医師や保険会社の担当者から症状固定と告げられることがあります。
症状が固定した、なんとなく良い響きに頷いてしまいたくなることもあります。
ですが、少しお待ちください。
症状固定は、その後に重大な効果を及ぼすことがあるのです。
目次
症状固定の前後で何が変わるのかについて知り、通院の方針を見定めましょう。
交通事故の怪我の治療中、医師や保険会社の担当者からこのように言われる場合があります。
これらは、いずれも症状固定ではないかという確認です。
では症状固定とは、どのような状態なのでしょうか?
傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた治療方法を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態
つまりこれ以上健康保険に準拠した治療を行っても、その症状が回復・改善しない状態を指します。
例
腰部捻挫による腰痛症の急性症状は消退したが、疼痛などの慢性症状が持続している場合であっても、その症状が安定し、その後の療養を継続しても改善が期待できなくなったとき。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/110427-1.pdf
症状固定が認定されると、それまで補償されていた損害などが補償されなくなります。
一方で、症状固定後にも後遺症が残っていることへの補償が新たに発生します。
それぞれの損害が補償されるか
症状固定前 | 症状固定後 | |
---|---|---|
治療費など | 〇 | × |
休業損害 | 〇 | × |
傷害慰謝料 | 〇 | ×* |
後遺障害慰謝料 | × | 〇** |
逸失利益 | × | 〇** |
*傷害慰謝料の算定の基礎となる入通院日数に数えられなくなる
**後遺障害等級が認定された場合
また、原則として症状固定後から開始する手続きもあります。
① | 後遺障害等級認定の申請 |
---|---|
② | 示談交渉の開始* |
*車など物品への損害(物損)についてのみ先んじて示談することもある
それぞれ、具体的にどのような変化があるのかは次章で確認します。
症状固定の判断は医学的な判断であるので、医師の判断が重視されます。
形式的には、医師の書く後遺障害診断書の「症状固定日欄」が記載された日となるのが原則です。
症状固定日として、最終通院日が記載されることが多いです。
ですがその日は診断書をとりにいくだけで、実質的には診療がなされていない場合もあります。
症状固定日が争いとなる場合は、医師の判断を前提として
① 傷害および症状の内容②症状の推移③治療・処置の内容④治療経過⑤検査結果⑥症状固定までの通常の期間⑦事故状況
などの観点からより適切な時期を症状固定日とすることがあります。
また、保険会社から医師や被害者の方に対し、症状固定を打診する働きかけがあることもあります。
言われるがままでは、まだ治療が必要なのに治療費が打ち切られてしまうこともあります。
被害者の立場から症状をしっかり伝え、医師と相談しながら症状固定日を決めることが重要です。
以下は、症状固定の目安となる時期です。
いずれも、事故の具体的な事情により変化するため絶対的なものではありません。
打撲の場合は、1カ月が症状固定の目安となっています。
むちうちの場合は、3カ月が症状固定の目安となっています。
なお、症状によっては固定までに6カ月~1年かかることもあります。
むちうちは客観的な証明が困難な症状です。
よって、後遺障害として認定されるためには通院期間が重要となります。
保険会社から早期に症状固定の打診をされても、自覚症状がある場合は通院を続けましょう。
骨折の場合は、6カ月が症状固定の目安となっています。
ですが髄内釘などを遣って骨を固定した場合、その除去がされる約1~2年が症状固定までの期間となります。
傷口を処置した後は自然経過に任せるか、形成術により傷跡が目立たなくなるような治療を行います。
おおむね、6カ月が症状固定までの目安期間です。
ですが傷の程度などにより、さらに長期化することがあります。
症状固定までの目安*
症状 | 期間 |
---|---|
打撲 | 1カ月 |
むちうち | 3~6カ月 |
骨折 | 6カ月~1年以上 |
顔の傷 | 6カ月 |
*後遺障害として申請する場合は、6カ月以上の通院が目安となる
上記のいずれも、今までの事例の平均にすぎません。
同じ症状であっても、事故態様が異なれば症状固定までの期間も大きく変わってきます。
複数の傷害がある場合、一括して同じ症状固定日とすることがあります。
一方で、受傷部位により異なる症状固定日を認定することもあります。
慰謝料などの面でどちらが有利になるかは事案により異なりますので、ご不安があれば弁護士にご相談ください。
後遺障害として認定を受ける場合、最低でも6ケ月以上の通院期間が必要であると言われています。
後遺障害等級認定を視野に入れている場合は、念のため6ケ月以上通院を行うのが良いでしょう。
では実際に、症状固定日前後で何が変わるのかを順に見ていきましょう。
治療費などは、原則として症状固定日まで相手方保険会社から支払われます。
症状固定後は、自費で通院する必要があります。
靱帯断裂などは、症状固定後も治療を施さないと症状が悪化するおそれがある場合もあります。
そのような場合は例外的に、症状固定後の治療費も損害として認められることがあります。
症状固定日以後は、将来にむけての介護費・自宅改造費などの請求が可能となります。
治療費が支払われなくとも、治療を行えないというわけではありません。
症状固定後は、自費で通院・治療することになります、
その場合、負担を減らすためにも自身の健康保険を利用することをお勧めします。
健康保険利用のために必要な手続きなどについては、以下をご覧ください。
なお、症状固定後の通院も、必要性が認められれば後遺障害慰謝料の算定で考慮される場合があります。
休業損害は、入通院などで受け取ることのできなかった収入に対する賠償金です。
症状固定日までの休業日数に応じて支払われます。
症状固定日後は支払われず、かわりに逸失利益の点で考慮されます。
交通事故で支払われる慰謝料には3つの種類があります。
その中でも、傷害慰謝料と後遺障害慰謝料が特に重要になってきます。
傷害慰謝料は、怪我をしてから治療が終わるまでの精神的苦痛に対して支払われる補償金です。
原則として、症状固定日までの入通院期間で決定します。
よって症状固定後の通院期間が長引いても、傷害慰謝料が増えることはありません。
多くの傷害慰謝料をもらうためには症状固定までの期間が長ければいいか、というとそうではありません。
例えばむちうちで通院のみの場合、12ケ月以降は月ごとに1万円しか受け取れない、ということもあります。
症状固定前の傷害慰謝料がいくらになるかについては、以下の記事をご覧ください。
後遺障害慰謝料とは、後遺症を負ってしまったことへの精神的苦痛に対して支払われる補償金です。
症状固定後の後遺障害等級認定とその他の要素により決定します。
後遺障害慰謝料
1級 | 2級 | 3級 | 4級 |
---|---|---|---|
2800万 | 2370万 | 1990万 | 1670万 |
5級 | 6級 | 7級 | 8級 |
1400万 | 1180万 | 1000万 | 830万 |
9級 | 10級 | 11級 | 12級 |
690万 | 550万 | 420万 | 290万 |
13級 | 14級 | ||
180万 | 110万 |
*過去の裁判例に基づいた基準
上記の後遺障害慰謝料は、過去の裁判例から導き出された弁護士基準です。
個人で同じ額を請求するのは困難なので、より高額の慰謝料を請求したい場合は弁護士に相談しましょう。
逸失利益とは、後遺障害により労働能力を喪失し、得られなくなった収入に対する賠償金です。
休業損害とは反対に、症状固定後の収入を補償するものです。
症状固定後もなお症状が残っている場合、後遺障害として申請することが出来ます。
後遺障害診断書を提出し、認定されることで後遺障害慰謝料・逸失利益を受け取ることが出来ます。
実際の申請方法については、以下の記事を参照してください。
交通事故の解決に向けた示談をするには、交通事故による損害額が確定していなければなりません。
すなわち、治療費や傷害慰謝料などを計算するために症状固定日まで待つ必要があります。
示談に向けた交渉は症状固定後から始まりますが、事前の準備も大切です。
早いうちから弁護士に相談しておくことで、示談交渉をスムーズに進められます。
症状固定前と後とでは、保険会社や病院への対応が異なってきます。
治療費の打ち切りや長引く通院など、金銭的・精神的な負担も増えてきて不安になることもあると思います。
そのような時は、どうか交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所ではLINE、電話での無料相談を受け付けています。
症状固定以後も弁護士に相談することで
など、納得のいく解決に向けてのお手伝いをすることが出来ます。
ご不安解消のためにも、まずはお気軽にご相談ください。
野尻大輔
あくまで「これ以上よくならない」状態であるので、完治したとは限らないという点に注意が必要です。
いわゆる後遺症は、症状固定以後も残る傷病のことを指します。