作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
死亡事故の慰謝料相場および遺族がすべきことは?
交通死亡事故に関し、以下のような疑問・お悩みがある方もいるのではないでしょうか?
- 慰謝料や賠償金はいくら位が相場なのだろうか?
- 被害者遺族になってしまった場合、賠償金をしっかり受け取るには何をすればいいのか?
- 交通事故による死亡者数や死亡率は一体どれくらいなのだろうか?
このような疑問・お悩みに交通死亡事故を数多く取り扱ってきた弁護士がお答えします。
目次
交通死亡事故で突然ご家族を失われた遺族の方々の悲しみは心中察するに余りあります。
しかし、今後の生活のために適切な賠償金を受け取れるよう対応しなければなりません。
それ以外の方も、ご自身やご家族がいつ交通死亡事故に巻き込まれるとも限りません。
そのような事態に備えて、交通死亡事故についての情報を知っておくのは有益でしょう。
本記事では、すべての方が知っておくべき交通死亡事故についての知識をお伝えします。
交通死亡事故における慰謝料などの相場
交通事故で死亡した場合に受け取れる損害賠償金は大きく
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 葬儀費
という項目にわけられ、それぞれの項目に相場や計算方法が定められています。
死亡慰謝料相場は弁護士への依頼で変わる
交通事故により被害者が死亡した場合には
- 生命を奪われてしまわれたことによる被害者本人の苦痛や無念
- 大事な家族を失うことになった遺族の辛い思い
といった精神的苦痛に対する償いのお金として死亡慰謝料が支払われます。
被害者本人の死亡慰謝料は遺族に相続され、遺族が賠償金請求していくことになります。
精神的苦痛は様々ですが、公平・迅速な支払のため、慰謝料には一定の相場があります。
自動車運転者が加入を義務付けられている自賠責保険からは以下の金額が支払われます。
被害者本人 | 遺族※1 | 被扶養者あり | |
350+ | 1人 | 550 | +200 |
2人 | 650 | ||
3人以上 | 750 |
※ 数字の単位は万円
※1 被害者の父母、配偶者及び子供
上記を超える分は、任意保険会社との示談交渉により受け取れる金額が決まります。
任意保険会社は保険会社内部にて定められた
任意保険基準
を用いて算定された一定の相場の金額を示談交渉で提示してきます。
遺族の方が直接示談交渉する場合、提示された相場の金額からの大幅な増額は困難です。
しかし、弁護士に示談交渉を依頼すれば、過去の裁判例を基に作成された
弁護士基準(裁判基準)
を用いて算定された高額な相場の金額で示談交渉が可能になります。
その結果、受け取れる死亡慰謝料の相場が大幅に増額することになります。
具体的な任意保険基準と弁護士基準の死亡慰謝料の金額相場は以下の表のとおりです。
死亡者の属性 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
一家の支柱 | 1700 | 2800 |
母親、配偶者 | 1450※3 | 2500 |
高齢者※1 | 1250 | 2000~2500 |
子供※2 | 1400 | |
上記以外 | 1450 |
※ 数字の単位は万円
※1 65歳以上
※2 18歳未満の未就労者
※3 高齢者の場合除く
いずれの場合も、弁護士基準の死亡慰謝料の方が1000万円前後高額になっています。
なお、任意保険基準の死亡慰謝料は、高齢者や子供の場合に金額が低くなっています。
しかし、弁護士基準の死亡慰謝料は、高齢者や子供であっても金額に違いはありません。
死亡逸失利益相場は高齢者と子供で違う!?
冒頭でお伝えしたとおり、交通事故により死亡してしまった場合、慰謝料だけでなく
死亡逸失利益
も損害賠償金として受け取れます。
死亡逸失利益とは
被害者が死亡したことにより、本来得られたはずの将来の利益の喪失
死亡逸失利益の基本的な計算方法は以下のとおりです。
(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
先ほどお伝えしたとおり、弁護士基準であれば80歳でも18歳でも死亡慰謝料は同じです。
一方、死亡逸失利益については
高齢者より子供の方が相場が高くなる傾向
にあります。
子供の方が「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」が大きくなるからです。
年齢 | 80歳 | 18歳 |
ライプニッツ係数 | 3.546(給与等) 7.1078(年金) | 18.1687 |
※ 男性を想定
また、上記の基本的な計算方法は共通ですが、「生活費控除率」については
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
で以下の表のような違いがあります。
基準 | 自賠責 | 任意保険 | 弁護士 |
被扶養者なし | 50 | 50 | 男:50 女:30 |
被扶養者1名 | 30 | 40 | 40 |
被扶養者2名 | 35 | 30 | |
被扶養者3名以上 | 30 |
※ 数字の単位は%
※ 相場にとどまるため例外あり
さらに、自賠責保険から受け取れる損害賠償金は総額で3000万円という上限があります。
そのため、死亡逸失利益についても弁護士に依頼することによる増額が見込めます。
アトム法律事務所では、弁護士に依頼した場合に交通死亡事故の遺族の方が受け取れる
死亡慰謝料及び死亡逸失利益の金額
の相場を簡単に確認できる慰謝料計算機をご用意しております。
収入や年齢などいくつかの項目を入力するだけですので、お気軽にご利用ください。
ただし、計算機で確認できるのはあくまで一般的な相場である点にはご注意ください。
逸失利益について詳しく知りたい方には、岡野弁護士監修の以下の記事がおすすめです。
葬儀費の相場はいくら位?
葬儀費を支払った遺族は、加害者側に対しその後賠償請求することができます。
もっとも、掛かった葬儀費用が全額請求できるとは必ずしも限りません。
賠償金として請求できる葬儀費には一定の相場があります。
さらに、自賠責基準では上限額も決まっています。
具体的な金額は以下の表のとおりです。
基準 | 自賠責 | 任意保険 | 弁護士 |
相場 | 60万 | 60万 | 150万※1 |
上限 | 100万 | なし※2 | なし※2 |
※1 掛かった費用が相場を下回る場合にはその金額
※2 立証資料などにより妥当な額と認められた場合
加害者に請求できる葬儀費の項目や相場以上の金額が認められた判例など、詳しい情報は
「交通事故被害者の方のお葬式|通常とは日程が違う?葬式代は加害者に請求できる?」
という記事に記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
死亡事故で被害者の遺族がすべきこと
死亡事故に直面することになった遺族の方は、損害賠償金や保険金の請求以外にも
- 死亡に伴う役所での手続き
- 加害者が起訴された場合の刑事裁判への対応
などすべきことは色々とありますが、本記事ではお金の部分に絞ってお伝えします。
それ以外の部分について知りたい方は「死亡事故の被害者遺族が対応すべきこと|示談交渉・保険金請求・刑事裁判・相続」の記事をご覧ください。
相続人(保険金受取人)や税金に関する確認
交通死亡事故の場合、被害者の損害賠償は
被害者の損害賠償請求権を相続した遺族
が請求していく形になります。
もっとも、被害者遺族の全員が被害者の相続人になるわけではありません。
民法上、相続人になれる可能性がある法定相続人は被害者の
- 配偶者
- 子供
- 父母(直系尊属)
- 兄弟姉妹
であり、具体的な相続割合はケースに応じて以下のようになります。
立場 | 相続割合 |
配偶者 | 1/2 |
子 | 1/2 |
父母 (直系尊属) | なし |
兄弟姉妹 | なし |
※被害者に配偶者がいる場合を想定
立場 | 相続割合 |
配偶者 | 2/3 |
父母 (直系尊属) | 1/3 |
兄弟姉妹 | なし |
※被害者に配偶者がいる場合を想定
立場 | 相続割合 |
配偶者 | 3/4 |
兄弟姉妹 | 1/4 |
被害者が死亡した場合、被害者加入の保険会社から保険金を受け取れる場合があります。
その場合の受取人は、
- 人身傷害保険
- 無保険車傷害保険
- 搭乗者傷害保険
- 自損事故保険
などの自動車保険の場合、原則として被保険者の法定相続人になります。
ただし、生命保険の場合、受取人を誰にするかを契約者が決めることができます。
そのため、保険によって受取人が誰になるか違いが出る場合があります。
賠償金や保険金を遺族の誰がいくら受け取れるかを知るには上記の点の確認が必要です。
受け取ったお金に税金かかるか
交通死亡事故で遺族が受け取れる慰謝料を含む損害賠償金には原則税金はかかりません。
このことは、国税庁のタックスアンサーでも明確に回答されています。
交通事故の(略)被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。
この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として税金はかかりません。(略)
なお、被相続人が損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたが、受け取らないうちに死亡してしまった場合には(略)相続税の対象となります。
ただし、損害賠償としての性質を有しない死亡保険金には税金がかかります。
遺族が実際に使えるお金がいくらかを把握するためには、上記の点の確認が必要です。
どのような死亡保険金に税金がかかるかを知りたい方は、「交通事故の慰謝料には税金かかるの?死亡した場合の保険金の税金には要注意!」の記事をご覧ください。
過失割合に関する証拠収集
交通死亡事故の発生には、加害者だけでなく被害者にも原因がある場合もあります。
この場合、法律上は「被害者にも過失割合が認められる」といわれます。
過失割合は以下のように定義されます。
交通事故の過失割合とは
交通事故発生に対する加害者側・被害者側双方の責任を割合で示したもの
遺族が最終的に受け取れる賠償金は被害者の過失割合分が差し引かれたものになります。
このことを過失相殺といいます。
交通死亡事故では、賠償金総額が1億を超えるような高額になることも珍しくありません。
たとえば、交通死亡事故の慰謝料を含む損害賠償額の最高額の判例は5億を超えています。
その場合、過失割合が10%違うだけで、受け取れる賠償金は数千万円以上変わります。
実際、上記の判例では、被害者の過失割合が60%認められました。
その結果、過失相殺後の実際に受け取れる損害賠償金は2億程度になっています。
損害賠償金総額 |
5億853万8,910円 |
被害者の過失割合 |
60% |
過失相殺後の金額 |
2億341万5,564円 |
※ 横浜地裁平成23年11月1日判決
※ 弁護士費用、遅延損害金を除く
このように、交通死亡事故の被害者が適切な損害賠償金を受け取るためには
過失割合に関する証拠収集
が必要になりますが、死亡事故では被害者の言い分を聞けないことが多くなります。
そのため、遺族が何もしないと加害者側の主張する過失割合が認定されてしまいます。
そこで、遺族の方の過失割合に関する迅速かつ積極的な証拠収集が重要となります。
交通死亡事故における過失割合をより詳しく知りたい方向けの記事
裁判提起時の賠償金受け取り見込みの検討
交通事故における損害賠償請求の裁判を提起し、判決まで至った場合には通常
- (過失相殺後の)損害賠償総額の10%程度の弁護士費用相当額
- 交通事故発生時から賠償金支払時までの遅延損害金
も受け取れることになります。
遅延損害金は、現在5%ですが、2020年4月1日は3%に改正予定です。
さらに、裁判であれば、個別事情により相場以上の慰謝料が認められることもあります。
具体的な判例は以下のとおりです。
慰謝料相場 |
2800 |
慰謝料認容額 |
3300 (本人:3000) (近親者:合計300) |
個別事情 |
・加害者居眠り運転 ・加害者居眠りを否認 |
※ 数字の単位は万円
※ 神戸地裁平成29年1月27日判決
慰謝料相場 |
2500 |
慰謝料認容額 |
3200 (本人:2700) (近親者:合計500) |
個別事情 |
・加害者居眠り運転 ・死に至る態様が凄惨で残酷 |
※ 数字の単位は万円
※ 名古屋地裁平成19年7月31日判決
裁判をする場合、解決までに労力・時間・費用を要するというデメリットもあります。
そのため、交通死亡事故の遺族の方は
裁判を提起した場合の賠償金増額見込みと上記のデメリットを比較
して、裁判を提起すべきかどうか検討することが求められます。
なお、交通死亡事故の裁判についてより詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
交通死亡事故の最近の特徴
最後に、交通死亡事故の最近の傾向や特徴についてお伝えします。
ご自身やご家族が交通死亡事故の当事者とならないためにも、以下の情報は有益です。
お伝えする情報は、警察庁が発表している以下の最新の統計資料を参考にしています。
死亡者数・死亡率は減少傾向で推移してる
交通事故の
- 死亡者数
- 死亡率(人口10万人当たりの死亡人数)
- 死亡事故件数
について、2018年の年間の数値は以下の表のとおりです。
死亡者数 |
3,532人 |
死亡率 |
2.79 |
死亡事故件数 |
3,449件 |
警察庁交通局「平成30年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」参照
いずれの数値も最近は減少傾向で推移しており、2018年は統計開始時以来最少です。
ただし、上記の死亡者数は
交通事故発生から24時間以内に死亡した人数
と定義されており、数日後に死亡した人や後遺症が原因で死亡した人は含みません。
そのため、交通事故により死亡してしまう方は、一日平均で10人以上と考えられます。
なお、2018年の47都道府県ランキングでは
- 死亡者数では愛知県の189人
- 死亡率(人口10万人当たりの死亡人数)では福井県の5.26人
がワーストになっています。
考え方次第ではあるものの、交通事故により死亡する確率は決して低いとはいえません。
交通事故の死亡者数や死亡率は減少傾向にあるものの、確率が低いとまではいえない
高齢者は死亡者の半数以上で死亡率も高い
交通事故の死亡者に関する2018年の統計では、65歳以上の高齢者の死亡者数は
1,966人
であり、全体の死亡者に占める割合は56.2%と過去最大となっています。
それだけではなく、死亡率(人口10万人当たりの死亡人数)についても
5.59人
と高齢者は全年齢層の2倍以上高い割合になっています。
さらに、高齢者の死亡者の中でも、歩行中の死亡者の割合が最も高く
899人と全体の死亡者の1/4以上の割合
を占めています。
そのため、高齢者のご家族が徒歩でお出かけになる際は特に注意を払う必要があります。
交通死亡事故は、歩行中の高齢者の方が一番被害者となる確率が統計上高い
スマホ使用中の交通死亡事故件数が増加中
スマホの普及により、画像目的使用中の死亡事故が増えているのも最近の特徴です。
従来は、携帯電話使用中の交通事故とは、通話中のものを指すのが一般的でした。
しかし、最近では画面を見たり操作したりする際の事故の割合の方が多くなっています。
平成29年中に死亡事故は32件発生しており、そのうち画像目的使用の事故は、24件(75%)を占めています。
スマホ使用中の交通死亡事故は、ニュースで話題となった加害者の場合に限られません。
歩きスマホをして気を取られている際に車両にひかれて被害者となる場合もあります。
交通死亡事故の当事者にならないためには、移動中はスマホを使わないことが重要です。
交通死亡事故のお悩みは弁護士に相談
- 交通事故で死亡した場合の慰謝料や賠償金の相場はいくら位なのか
- 適切な賠償金額をしっかりと受け取るために遺族は何をすればいいのか
- 弁護士への依頼や裁判によって、受け取れる賠償金がいくら位増える見込みがあるのか
このような悩みを持つ被害者遺族の方も多いかと思います。
そういった方のため、アトム法律事務所では弁護士による無料相談を実施しています。
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交通死亡事故で最終的に受け取れる賠償金は、過失割合の影響が大きいところ
適切な過失割合が認定されるには死亡事故直後の証拠収集が重要になる
ため、早期にご相談頂ければ、その分受け取れる賠償金が増える可能性が高まります。
アトム法律事務所では
- 24時間・土日祝日も相談予約を受け付けている
- 来所相談以外に電話・LINE・メールによる相談も行っている
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弁護士特約とは何かについては、以下の動画で弁護士が分かりやすく解説しています。
弁護士特約は、自動車保険のオプションとしてついていることが多いです。
まずは加入している保険の内容を確認してみてください。
よくわからない場合は、その点も含めて弁護士にお気軽にご相談ください。
弁護士特約の解説記事
まとめ
このページでは、交通死亡事故に関する疑問に回答してきました。
- 慰謝料や賠償金の相場は?
- 遺族になってしまった場合、賠償金をしっかり受け取るには何をすればいい?
- 交通事故による死亡者数や死亡率は?
まとめ
- 弁護士に依頼した場合の賠償金相場は2000~2800万の慰謝料+逸失利益・葬儀費
- 相続人が誰かを確認し、過失割合の証拠を収集して、場合によっては裁判を行う
- 死亡者数は3,532人であり、死亡率と共に減少傾向だが、決して少なくはない