作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故の死亡慰謝料|高齢者の相場や相続を解説
交通事故で被害者が死亡した場合、死亡慰謝料を請求できます。
この死亡慰謝料は、被害者の年齢や家族内での立ち位置によって金額が変わります。
- 高齢者の死亡慰謝料の相場は?
- 高齢者の死亡慰謝料は誰が受け取る?
- 高齢者でも働いていたら死亡慰謝料は多くなる?
死亡慰謝料は、その他の交通事故慰謝料と比べても少し決まりや特徴が異なります。
そんな死亡慰謝料について、詳しく解説していきます。
目次
交通事故・死亡慰謝料|高齢者の相場
死亡慰謝料|高齢者の相場
交通事故の慰謝料金額には、3つの基準があります。
それぞれの解説と、その基準での高齢者の死亡慰謝料金額を見ていきましょう。
弁護士基準の場合
高齢者の死亡慰謝料:2000万~2500万円
弁護士基準とは、被害者側が弁護士を立てた場合に、示談交渉で加害者側に提示する金額です。
これは過去の判例をもとに定められた金額基準であり、最も妥当な金額であるといえます。
弁護士基準の死亡慰謝料では、その金額を
- 一家の支柱
- 母親・配偶者
- その他
に分けて設定しています。
高齢者の場合は通常その他に当てはまり、その金額は2000万~2500万円であるということです。
任意保険基準の場合
高齢者の死亡慰謝料:1250万円
任意保険基準とは、示談交渉で加害者側が提示してくる金額のことです。
現在は各保険会社によって金額が異なり非公開です。
したがってここでは、以前各社共通で用いられていた、旧任意保険基準の金額をご紹介しています。
この任意保険基準での死亡慰謝料の金額は、
- 一家の支柱
- 18歳未満の未就労者
- 65歳以上の高齢者
- 上記以外の場合
に分けて設定されています。
したがって、任意保険基準での高齢者の死亡慰謝料は「65歳以上の高齢者」に該当し、1250万円となっています。
なお、64歳や63歳など、65歳に満たない高齢者の場合は「上記以外」に該当し、その死亡慰謝料は1450万円となっています。
自賠責基準の場合
- 本人への死亡慰謝料:350万円
- 請求者
- 1名=550万円
- 2名=650万円
- 3名以上=750万円
自賠責基準とは、加害者側の自賠責保険会社から受け取ることのできる金額を指します。
自賠責保険とは、被害者に最低限の補償を行うことを目的とした保険で、確実に受け取れる最低限の金額ということができます。
自賠責保険基準では、本人への死亡慰謝料は一律350万円となっており、あとは請求者の人数に応じて増額されていきます。
請求者とは、被害者の父母・配偶者・子のことを指します。
なお、弁護士基準や任意保険基準では、遺族分の慰謝料は予め設定された金額に含まれています。
死亡慰謝料|高齢者が働いていた場合
高齢者であっても、仕事をしていた場合には、死亡慰謝料の金額が高めになる可能性があります。
「仕事をしていた」と見なされるのは、
- 一家の大黒柱として働き、扶養している家族がいた
- 一家の主婦として家事をこなしていた
というケースが多いです。
一家の大黒柱だった場合
高齢者であっても一家の大黒柱として働き、家族を扶養していた場合には、家族内での立ち位置が「一家の支柱」とみなされます。
それによって、死亡慰謝料は以下のようになります。
- 弁士基準:2800万円
- 任意保険基準:1700万円
- 自賠責基準
- 本人:350万円
- 請求者1名:550万円
- 請求者2名:650万円
- 請求者3名以上:750万円
- 扶養家族がいれば+200万円
実際の事例を見てみましょう。
無報酬の取締役(男・66歳、年金・配当収入あり)につき、本人分2500万円、妻300万円、子2人各100万円、合計3000万円を認めた(事故日平22.7.3 神戸地判平25.3.11 自保ジ1903・138)
引用元:『損害賠償額算定基準上巻2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
宗教法人役員(男・79歳)につき、事故当日入院し翌日死亡したこと、一家の支柱であり、妻が長年夫婦として同居してきたこと等から、入院分も含め、本人分、近親者分を併せて2800万円を認めた(事故日平24.10.23 大阪高判平30.1.26 自保ジ2020・58)
引用元:『損害賠償額算定基準上巻2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
被害者が主婦であった場合
高齢者であっても、配偶者や子供、子供夫妻や孫などのために家事をしていた場合には、主婦として死亡慰謝料が考えられます。
その場合の死亡慰謝料は、以下のようになります。
- 弁士基準:2500万円
- 任意保険基準:1450万円
- 自賠責基準
- 本人:350万円
- 請求者1名:550万円
- 請求者2名:650万円
- 請求者3名以上:750万円
実際の事例を確認してみましょう。
息子及びその妻子と同居し、家事の多くを行っていた女性(83歳・主婦)につき、本人分2400万円を認めた(事故日平20.11.23 東京地判平22.10.12 自保ジ1843・155)
引用元:『損害賠償額算定基準上巻2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)
交通事故|高齢者の死亡慰謝料相続
高齢者の死亡慰謝料|受取人は誰か
死亡事故の場合、被害者は死亡してしまっているため、死亡慰謝料を被害者本人が受け取ることはできません。
この場合、死亡慰謝料をはじめとする交通事故の賠償金は、被害者の相続人が受け取ることになります。
高齢者の死亡慰謝料|相続人の決め方
死亡した被害者の相続に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人となります。
そのうえでもう一人、以下の手順で相続人が決まります。
相続人の決め方
①子または孫
被害者に子がいれば、配偶者と子が相続人になる。子が死亡していれば、孫。
相続の割合は、配偶者:子(孫)=1:1
②親
子や孫がいなければ、配偶者と被害者の親が相続人になる。
相続の割合は、配偶者:親=2:1
③兄弟姉妹またはその子
子や孫、親もいなければ、被害者の兄弟姉妹が相続人となる。兄弟姉妹が死亡している場合は、その子供が相続人となる。
相続の割合は、配偶者:兄弟姉妹=3:1
高齢者の死亡慰謝料|相続人がすること
死亡事故で被害者の相続人となった場合には、被害者に代わり
示談のための準備
をする必要があります。
示談のための準備とは、具体的には加害者側に請求する示談金の計算です。
死亡事故の場合、死亡慰謝料の他に以下の項目が示談金に含まれます。
死亡逸失利益
死亡によって得られなくなった将来の収入に対する補償。被害者に所得収入があった場合、被害者が家族のために家事をする主婦だった場合に請求できる。
葬祭費
死亡までの間に入通院、休業などをしていれば、以下の項目も示談金に含まれます。
入院関連費
- 入院費
- 入院雑費
治療関係費
- 治療費
- 看護料
休業損害
これらの項目のうち、入院費、治療費、葬祭費は実費となります。
その他の項目の計算方法はこちらをご覧ください。
ただし、ご紹介しているのは弁護士基準の金額であり、示談交渉で相手が提示してくる金額はもっと低いということにご注意ください。
交通事故|高齢者の死亡慰謝料は弁護士に
弁護士に相談するメリット
死亡事故で高齢者が亡くなった場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談することによるメリットは、以下の通りです。
- 妥当な死亡慰謝料等の賠償金を請求してもらえる
- 示談交渉等の手続きを代行してもらえる
死亡慰謝料の金額の際にご紹介したように、慰謝料の金額基準には3種類あり、最も妥当で最も高額なのが弁護士基準の金額です。
しかしこれは、被害者が弁護士を立てた場合でないと相手に提示することができません。
また、弁護士による交渉でないと、加害者側から提示された金額を増額させることも困難なのです。
また、死亡事故後は家族を失ったショックや葬儀関連の手配などで、示談に向けた準備ができない、加害者側とやり取りする気持ちになれないということが大いに考えられます。
そのような場合でも、弁護士に相談することで示談などの準備を代行してもらえ、体力的・精神的な負担も軽減されます。
その場でできる無料弁護士相談
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士