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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故で裁判を行った時に受け取れる遅延損害金をご存知でしょうか?
実は、示談をするよりも数百万円多くの損害賠償金が受け取れる可能性もあるのです。
遅延損害金がいくらになるのか、遅延損害金で損をしないためのコツとは何か、交通事故に詳しい弁護士が解説いたします。
2020年の民法改正でどう変わるかについても、これでわかります。
目次
このようなお悩みは、「遅延損害金」についてよく知れば解決します。
交通事故の損害額全体に対し、事故発生日から年5%の割合で加算されていく損害賠償金
つまりどういうことかというと、
『交通事故発生から日数が経つほど受け取れる額が増えていく、損害賠償金の1つ』ということです。
この根拠は、民法に示されています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法709条
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
引用元:民法404条
交通事故の加害者(=故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者)は、お金を払うという形で被害者に対し損害を賠償しなければなりません。
被害者にとって、このように「事故の損害を賠償してよ」とお金を支払うよう請求できる権利を「債権」と呼びます。
この債権の利率は年五分、つまり請求できる金銭の5%が遅延損害金として上乗せされるのです。
遅延損害金の計算方法は、以下のようになります。
損害賠償金×0.05×交通事故発生日から支払い日までの日数/365日
実際にいくらになるか、例を見て確かめてみましょう。
このときの遅延損害金は、以下のようになります。
1000万円×0.05×730日/365日=100万円
よって、損害賠償金1000万円に加えて100万円の遅延損害金を請求できることになります。
交通事故の遅延損害金の起算日(いつから日数の計算を始めるのか)は、事故発生日です。
言い換えれば、交通事故の損害はすべて事故当時から発生している、ということになります。
ですが、
こう思われる方もいるかもしれません。
実は、その点については以下のような判例があるのです。
不法行為に基づく損害賠償債務は、損害の発生と同時に、なんらの催告を要することなく、遅滞に陥るものである。
そして、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする損害賠償債務は一個と解すべきであつて、一体として損害発生の時に遅滞に陥るものであり、個々の損害費目ごとに遅滞の時期が異なるものではないから、同一の交通事故によつて生じた身体傷害を理由として損害賠償を請求する本件において、個々の遅延損害金の起算日の特定を問題にする余地はない。引用元:最判平成7年7月14日
つまり、「同じ事故の怪我から発生したといえる損害はすべてひとまとめにして扱う」ということです。そのため、
などについても、ひとまとめにして起算日を事故発生日として取り扱います。
交通事故との相手方との争い方によっては「遅延損害金」を受け取れなかったり、一部を受け取りそこなってしまうことがあります。
満額受け取るためには何が必要か、確認していきます。
原則として、遅延損害金は交通事故の損害賠償について裁判上の判決が出たときしか請求できません。
交通事故の損害賠償に関する争い方については、いくつかの方法があります。
では、「裁判上の判決」以外の解決方法では一切遅延損害金が受け取れないかというと、そうではありません。
交通事故の相手方(保険会社)と話し合って解決することを示談といいます。
交渉がうまくいかない場合、交通事故紛争処理センターなどADR機関のあっせんを受け、裁判外で紛争解決を図ることもできます。
これら2つの共通点は、互いに話し合って妥協点を見つける形で紛争を解決するということです。
つまりお互い有利な条件で解決しようとするので、相手方が遅延損害金の支払いを受け入れてくれることは、あまりありません。
なお例外的に、
なんらかの理由で相手方が早期の示談を希望している場合
などはまれに遅延損害金の支払いを認めたり、認めないかわりに慰謝料を増額する、ということもあるようです。
裁判になったとしても、裁判官が関与して当事者間で和解が成立することもあります。
この場合も、遅延損害金が支払われることはあまりありません。
なお例外的に、
被害者側が請求の姿勢を貫いている
ような場合には遅延損害金の支払いが認められた例もあるようです。
また、実質的な遅延損害金として調整金という名目で損害賠償金が増額されることがあります。
今までの情報をまとめると、以下のようになります。
解決手段別:遅延損害金はもらえるか?
遅延損害金 | 備考 | |
---|---|---|
示談 | ×* | 慰謝料の考慮要素となることも |
ADR機関 | ×* | |
裁判上の和解 | △ | 調整金として受け取れる |
裁判上の判決 | 〇 | 遅延損害金を受け取れる |
*まれに請求が認められることもある
交通事故では、訴訟の前に自賠責保険から、治療費や慰謝料など損害賠償の一部を受領していることがあります。
通院の治療費を相手方の自賠責保険が払ってくれた場合や、被害者請求により後遺障害慰謝料を先んじて受領をしている場合があてはまります。
このような時は、訴状の作成を交通事故に詳しい弁護士に依頼するようにしましょう。
なぜならば請求の文言によって、損害賠償額が減ってしまうことがあり、被害者に不利になるためです。
本件自賠責保険金等によっててん補される損害についても,本件事故時から本件自賠責保険金等の支払日までの間の遅延損害金が既に発生していたのであるから,本件自賠責保険金等が支払時における損害金の元本及び遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきものであることは明らかである(民法491条1項参照)。
引用元:最判平成16年12月20日
簡単に言うと、事故発生当時から遅延損害金は生じているのだから、自賠責から支払われた金銭もそのぶんの遅延損害金の賠償にまずあてられる、ということです。
それにより、遅延損害金の計算方法や元本も変わってきます。
参考として計算方法を記載します。
ですがこれらをまとめた上で訴状に記載するのは複雑かつ困難ですので、訴状の作成は弁護士に一任して取り逃すことを避けましょう。
2020年4月1日から、改正民法が施行されます。
この改正内容が遅延損害金については非常に重要ですので、最後に記しておきます。
現在、遅延損害金の利率は年5%ですが、これが年3%に変わります。
この利率は、2020年4月1日以降の交通事故について適用されます。
これにより、支払われる遅延損害金は現在より安くなります。先ほどの例で比べてみます。
このときの遅延損害金は、以下のようになります。
1000万円×0.03×730日/365日=60万円
よって、損害賠償金1000万円に加えて60万円の遅延損害金を請求できることになります。
改正前の法定利率5%の時は100万円の遅延損害金が認められていましたから、40万円ぶん減額したことになります。
民法改正によって変わることをまとめると、以下のようになります。
今後は、3年ごとに遅延損害金が2%になったり4%になったりする可能性が出てきた、ということになります。
といっても、利率が変更される場合はきちんと告示なされるので、さほど心配する必要はありません。
法定利率の見直しにより、遅延損害金は減少するということでした。
ですが全体でみれば、この改正は被害者にとって不利なことばかりではありません。
民法改正によって、逸失利益というものは増額する場合があるためです。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
交通事故で後遺障害が残った場合は、通常の保険金に加えて逸失利益が支払われます。
この逸失利益については、法定利率ぶんの控除がなされます。
そのため、法定利率が3%に引き下げられることで控除される金額が減り、結果的に逸失利益は増額します。
この逸失利益は
などには数千万円と非常に高額になることも珍しくありません。
逸失利益についてはより詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
交通事故の紛争は、裁判で争おうとすると数年がかりになってしまうことも珍しくありません。
被害者としては治療費や慰謝料、車の修理費などをすぐに受け取りたいところですが、そういかないのが現実です。
遅延損害金は、そんな被害者への補償でもあるのです。
ですから、受けた損害のぶんだけ遅延損害金はしっかりと回収しなければなりません。
ですが実際のところ、損害額含め、遅延損害金の計算は非常に複雑です。
実際の計算や訴状の作成は、ぜひ交通事故に詳しい弁護士にお任せください。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。まずはお気軽にご相談ください。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
遅延損害金とは、交通事故の発生から日が経つにつれて受けとれる金額が増える損害賠償金のひとつです。民法で定められており、交通事故の損害賠償全体に対して年5%の割合で加算されます。2020年4月1日以降は民法改正により年3%に利率が変更されます。計算式の紹介と計算例は以下のページからご確認ください。 遅延損害金の算定のしかた
遅延損害金は裁判で「判決」が出たときのみに受け取ることができるものです。交通事故の解決手段には、ほかにも「示談」「ADRでの解決」「裁判で和解」などがありますが、これらの解決方法では、原則、遅延損害金は認められません。まれに、ADRで遅延損害金が認められたり、代わりに慰謝料が増額されたり、裁判で和解した時には調整金などの名目で認められるケースはあるようです。 遅延損害金で損をしないための注意点
遅延損害金の利率が5%から3%に下がる代わりに、逸失利益は増額となります。逸失利益は①後遺障害が重いとき②被害者が若いとき③被害者の収入が高いときなどのケースでは、特に影響を受けるでしょう。遅延損害金の利率見直しが、必ずしもマイナスに働くわけではないのです。 民法改正で起こる変化(2020年4月1日以降)