作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
圧迫骨折で障害者手帳は交付される?後遺症の症状、等級、慰謝料もおさらい
交通事故によるけがの1つに、腰椎圧迫骨折があります。
この腰椎圧迫骨折は、後遺症が残る可能性のあるけがでもあります。
- 腰椎圧迫骨折の後遺症とはどのようなものだろう
- 腰椎圧迫骨折で後遺症が残ったら、慰謝料はいくらになる?
- 腰椎圧迫骨折の後遺症に等級が認定されるためのポイントは?
腰椎圧迫骨折による症状と、それが後遺症になったときにすべきこと、請求できる慰謝料について、詳しく解説していきます。
目次
圧迫骨折で障害者手帳は交付される?
障害者手帳が交付される条件
障害者手帳が交付されるためには、その後遺症が、客観的な観点や医学的な観点から見て永続すると認められる必要があります。
そのため、圧迫骨折によって障害者手帳が交付されるのは、その症状が後遺症として残り、永続すると判断されたときになります。
障害者手帳は3種類ある
障害者手帳には、次の3種類があります。
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保険福祉手帳
このうち、圧迫骨折で後遺症が残った場合に交付されるのは、身体障害者手帳です。
障害者手帳が交付されるとどうなる?
障害者手帳が交付されると、法的に障害者であると認められます。
しかし中には、法的に障害者として扱われることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。障害者手帳の申請は義務ではありませんので、そうした場合は申請をしなくても問題ありません。
圧迫骨折で後遺症が残り、障害者手帳の交付を受けた場合には、次のような補助を受けられるようになります。
- 医療費などの助成
- 税金の軽減
- 公共料金の割引
- 障碍者雇用での就職
腰椎圧迫骨折と後遺症の症状
腰椎圧迫骨折とは?交通事故との関係は?
腰椎圧迫骨折
腰椎が上下からの衝撃により圧迫されることで、つぶれるように折れること。
腰椎圧迫骨折をすると、
- 疼痛
- 側腹部通
- 側胸部通
- 下腹部痛
等の痛みを感じることが多い。
人間の背骨は、一本の骨ではなく、椎体と呼ばれるブロック状の骨が積み重なってできています。
以下の図は首の部分ではありますが、C2、C3…となっている部分が椎体です。
これが首、胸、腰へと連なっており、腰の部分にある椎体が腰椎です。
腰椎は5つあります。
交通事故で椎体骨折となるケースとしては、
バイクに乗っていて事故に遭い、お尻から落下した
等の場合が考えられます。
また、骨粗しょう症で骨密度が低い人の場合は、より圧迫骨折をしやすいと言われています。
腰椎圧迫骨折の後遺症で痛みや麻痺が残る?
腰椎圧迫骨折は、後遺症が残る可能性のあるけがです。
具体的な後遺症として考えられるのは、以下の症状です。
後遺症 | 備考 |
---|---|
椎体の変形 | 椎体の形がいびつになる、椎体にとげのような突起(骨棘)ができる、背骨の湾曲具合が変わるなど |
痛み | 腰椎を通る末梢神経が損傷し、痛みを感じる |
麻痺 | 骨折や腰椎の変形により脊髄が圧迫されて麻痺する |
可動域制限 | 腰椎圧迫骨折や脊椎固定術などによって胸腰部の可動域が制限される。 |
腰椎圧迫骨折の後遺症の等級や慰謝料は?
腰椎圧迫骨折の後遺症4つが該当する後遺障害等級
交通事故による腰椎圧迫骨折で後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を申請しましょう。
該当する可能性のある等級としては11級が有名ですが、他にも可能性のある等級が存在します。
後遺症ごとに該当する可能性のある後遺障害等級を確認していきましょう。
椎体の変形による後遺症
椎体の変形が該当する可能性のある後遺障害等級は、6級5号、8級2号、11級7号です。
それぞれについて詳しく見ていきます。
6級5号
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどちらかに該当する。
- 2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じている
- 1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、側彎度が50度以上になっている
8級2号
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどれかに該当する
- 2個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じている
- 側彎度が50度以上である など
11級7号
以下のいずれかに該当するもの
- 腰椎圧迫骨折を残しており、それがX線写真等で確認できる
- 脊椎固定術が行われた
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除等、椎弓形成術を受けた
痛みによる後遺症
痛みによる後遺症は、12級13号、14級9号に該当する可能性があります。
それぞれについて詳しく見ていきます。
12級13号
痛みがあり、X写真やMRI画像などで骨折部分に異常が確認できる
14級9号
X線写真やMRI画像などで骨折部分に異常を確認することはできないが、痛みがある
詳細はこちらもご覧ください。
麻痺による後遺症
麻痺による後遺症は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号に該当する可能性があります。
それぞれについて詳しく見ていきます。
1級1号
- 高度の四肢麻痺がある
- 高度の対麻痺がある
- 中等度の四肢麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの
- 中等度の対麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの
2級1号
- 中等度の四肢麻痺がある
- 軽度の四肢麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの
- 中等度の対麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの
3級3号
- 軽度の四肢麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの。)
- 中等度の対麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの)
5級2号
- 軽度の対麻痺がある
- 一下肢の高度の単麻痺がある
7級4号
一下肢の中等度の単麻痺がある
9級10号
一下肢の軽度の単麻痺がある
12級13号
- 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺がある
- 運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害がある
ここでいう高度、中等度、軽度の麻痺とは、以下の通りです、
高度の麻痺
該当部分の運動性・支持性がほとんど失われ、歩行や物の持ち上げなど基本的な動作ができない状態
中等度の麻痺
該当部分の運動性・支持性が相当失われ、基本的な動作にかなりの制限が生じている状態
文字を書けない、つえがないと歩けないなど
軽度の麻痺
該当部分の運動性・支持性が多少失われ、基本動作における巧緻性や速度が相当損なわれている状態
可動域制限による後遺症
可動域制限による後遺症は、8級2号が該当する可能性があります。
それぞれについて詳しく見ていきます。
8級2号
脊椎圧迫骨折などにより胸腰部の可動域に1/2以下の制限が生じた
腰椎圧迫骨折の後遺症の慰謝料はいくら?
後遺障害等級が認められると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。
後遺障害慰謝料の金額目安は、等級ごとに決められています。
腰椎圧迫骨折が該当する可能性のある後遺障害等級の慰謝料金額を見ていきましょう。
ここでは、示談交渉の際に
の金額をご紹介します。
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
6級 | 1180万円 | 600万円 |
8級 | 830万円 | 400万円 |
11級 | 420万円 | 150万円 |
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
12級 | 290万円 | 100万円 |
14級 | 110万円 | 40万円 |
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
1級 | 2800万円 | 1300万円 |
2級 | 2370万円 | 1120万円 |
3級 | 1990万円 | 950万円 |
5級 | 1400万円 | 700万円 |
7級 | 1000万円 | 500万円 |
9級 | 690万円 | 300万円 |
12級 | 290万円 | 100万円 |
等級 | 弁護士基準 | 任意保険基準 |
---|---|---|
8級 | 830万円 | 400万円 |
実際の金額は、これらの金額基準を参考にしながら、示談交渉で話し合って決められます。
腰椎圧迫骨折の後遺症は医師だけでなく弁護士にも相談
腰椎圧迫骨折で弁護士に相談する理由
交通事故に遭い腰椎圧迫骨折になったら、弁護士に相談することをお勧めします。
その理由として、
- 後遺障害等級認定は必ずしも認定されるとは限らない
- 最終的な慰謝料は示談交渉で決められる
というものが挙げられます。
腰椎圧迫骨折の後遺症には、該当する可能性のある後遺障害等級があります。
しかし、等級認定に申請しても思っていた通りの等級にはならない可能性もありますし、等級認定すらされない可能性もあります。
そうすると、後遺障害慰謝料が想定よりも低くなったり請求できなくなってしまったりするのです。
したがって、弁護士に相談してプロのサポートを受けながら等級認定に申請することが重要です。
また、最終的な慰謝料金額は示談交渉によって決められますが、加害者側が提示してくる金額は低めに設定されています。
妥当な金額を得るためには、加害者側が提示してきた金額を増額させる必要があります。
しかし加害者側任意保険会社は、弁護士の主張でないと聞き入れないことも多いです。
したがって、示談交渉の面から考えても、弁護士に相談することは重要です。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
腰椎圧迫骨折に関するQ&A
腰椎圧迫骨折とは?
腰椎圧迫骨折とは、腰椎が上下からの衝撃により圧迫されることで、つぶれるように折れることを指します。交通事故に遭った際にお尻から転落した、などの場合に発生します。腰椎圧迫骨折が起こると、疼痛、側腹部痛、側胸部痛、下腹部痛などの症状が出ると考えられます。 腰椎圧迫骨折の解説と症状
腰椎圧迫骨折による後遺症とは?
腰椎圧迫骨折では、椎体の変形、痛みの残存、麻痺、胸腰部の可動域制限などの後遺症が残る可能性があります。後遺症が残り、その後遺症に対し後遺障害等級が認定されると、後遺傷害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるようになります。 腰椎圧迫骨折による後遺症の解説
腰椎圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料は?
①椎体の変形では後遺障害6級、8級、11級②痛みの残存では後遺障害12級、14級③麻痺では後遺障害1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級④可動域制限では後遺障害8級が認定される可能性があります。これらの等級に対する後遺障害慰謝料は、弁護士基準で110万円~2800万円になっており、具体的な金額は等級に応じて決まります。 腰椎圧迫骨折の後遺障害等級と慰謝料の解説