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自賠責保険の慰謝料請求方法|交通事故被害者が請求できるものとは

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  • 被害者請求の方法とは?
  • 交通事故慰謝料を請求する方法が知りたい
  • 加害者に任意保険の利用を拒否されたため、自賠責保険に請求したい

損害賠償請求をする先は、加害者の自賠責保険か任意保険になることが多いです。

しかし、請求できるものや請求方法がよくわからず、つまずいてしまう被害者の方も少なくないでしょう。

交通事故の被害者は治療費や通院交通費などを加害者側に請求することができます。

しかし、請求の方法が難しく、場合によっては気がつかないうちに損をしてしまうこともありえます。

これから解説
  • 慰謝料を請求する方法や請求項目
  • 健康保険生命保険にも治療費などを請求できるのか

などをこのページで解説していくので、しっかりと学び、慰謝料の請求で今後つまずかないようにしましょう。

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交通事故後に被害者請求をする流れ

【はじめに】請求項目を確認|治療費・休業損害・通院交通費など

加害者への請求項目は3つ

人身事故に遭った場合、加害者側に請求できるものは何でしょうか。

加害者側の自賠責保険に傷害分の慰謝料を請求する場合、主に以下の項目を請求できます。

  1. ① 治療費(治療関係費)
  2. ② 休業損害
  3. ③ 傷害慰謝料

また、自賠責だと人身部分のみ補償されますが、任意保険に請求する場合は物損部分も補償される可能性があります。

①治療費(治療関係費)の請求項目詳細

では、①治療費(治療関係費)は具体的にどのような項目を請求することができるのでしょうか。

1. 治療費(診察料や投薬料等)

2. 交通費(通院、転院、入退院日費)

3. 看護料(12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合等)

4. 諸雑費(入院中の電話代等)

5. 診断書等の費用(診断書等の作成費用)

などを請求することが可能です。

国土交通省から発表されている、

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準

によると、交通事故の傷害分における自賠責の支払基準は以下の表の通り定められています。

自賠責の傷害分の支払基準
(1) 治療関係費解説
① 応急手当費応急手当に直接かかる必要かつ妥当な実費とする。
② 診察料初診料、再診料又は往診料にかかる必要かつ妥当な実費とする。
③ 入院料入院料は、原則としてその地域における普通病室への入院に必要かつ妥当な実費とする。
ただし、被害者の傷害の態様等から医師が必要と認めた場合は、上記以外の病室への入院に必要かつ妥当な実費とする。
④ 投薬料、手術料、処置料等治療のために必要かつ妥当な実費とする。
⑤ 通院費、転院費、入院費又は退院費通院、転院、入院又は退院に要する交通費として必要かつ妥当な実費とする。
⑥ 看護料ア 入院中の看護料
原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合に1日につき4,100円とする。
イ 自宅看護料又は通院看護料
医師が看護の必要性を認めた場合に次のとおりとする。
ただし、12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合には医師の証明は要しない。
(ア) 厚生労働大臣の許可を受けた有料職業紹介所の紹介による者
立証資料等により必要かつ妥当な実費とする。
(イ) 近親者等
1日につき2,050円とする。
ウ 近親者等に休業損害が発生し、立証資料等により、ア又はイ(イ)の額を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とする。
⑦ 諸雑費療養に直接必要のある諸物品の購入費又は使用料、医師の指示により摂取した栄養物の購入費、通信費等とし、次のとおりとする。
ア 入院中の諸雑費
入院1日につき1,100円とする。立証資料等により1日につき1,100円を超えることが明らかな場合は、必要かつ妥当な実費とする。
イ 通院又は自宅療養中の諸雑費
必要かつ妥当な実費とする。
⑧ 柔道整復等の費用免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。
⑨ 義肢等の費用ア 傷害を被った結果、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた義肢、歯科補てつ、義眼、眼鏡(コンタクトレンズを含む。)、補聴器、松葉杖等の用具の制作等に必要かつ妥当な実費とする。
イ アに掲げる用具を使用していた者が、傷害に伴い当該用具の修繕又は再調達を必要とするに至った場合は、必要かつ妥当な実費とする。
ウ ア及びイの場合の眼鏡(コンタクトレンズを含む。)の費用については、50,000円を限度とする。
⑩ 診断書等の費用診断書、診療報酬明細書等の発行に必要かつ妥当な実費とする。

表の参考: http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf

②休業損害はいくら支払われるのか

次に②休業損害についてですが、特に気になるのはいくら支払われるのかという点でしょう。

実際のところ、休業損害はいくら程度支払われるものなのでしょうか。

休業損害に関しては、自賠責基準だと、

傷害分の賠償額の総額が「上限額120万円以下」

上記の範囲で最低でも日額5,700円が支払われます。

なお、1日の休業損害額が5,700円を超える場合、収入を証明すれば19,000円までは日額の増額が認められる可能性があります。

では、自賠責保険ではなく、加害者側の任意保険に休業損害を請求する場合でも最低5,700円が支払われるのでしょうか。

加害者側の任意保険に休業損害を請求する場合、必ずしも最低日額が5,700円になるわけではありません。

任意保険基準の場合、休業損害を含めた賠償額の総額が「120万円以下」なら、自賠責保険と同様の基準に基づいて休業損害が支払われることになります。

しかし、賠償額の総額が「120万円を超えている」なら、120万円の超過分は以下の計算に基づいて支払われます。

1日あたりの基礎収入×休業日数

そのため、賠償額の総額が「120万円を超えている」場合、休業損害の日額が5,700円を下回る可能性がある点にご注意ください。

任意保険なら常に最低でも日額5,700円の休業損害をもらえるイメージがありましたが、必ずしもそうとは限らないようです。

適切な休業損害を支払ってほしい場合は、収入を証明することを忘れないようにしましょう。

休業損害の支払金額
加害者側の保険支払われる休業損害日額
賠償総額120万以下賠償総額120万超え
自賠責保険5,700円~19,000
任意保険5,700円~19,000収入による*

*収入の証明が無ければ日額5,700円を下回る可能性あり

③傷害慰謝料はいくら支払われるのか

最後に、3つ目の③傷害慰謝料いくら支払われるのでしょうか。

傷害慰謝料を加害者側の自賠責保険に請求した場合、

傷害分の賠償額の総額が「上限額120万円以下」

上記の範囲で治療実日数1日につき4,200円が支払われます。

自賠責から支払われる傷害慰謝料についてですが、対象となる日数は以下2つの少ないほうが採用されます。

1. 治療実日数×2

2. 治療期間

「治療実日数」は実際に治療のために病院など医療機関に通院した日数のことです。

「治療期間」は治療開始日から治療終了日までの総日数のことです。

たとえば、治療実日数「30日」で、治療期間「90日」
という場合、治療実日数「30日」×2=「60日」となるため、治療期間「90日」よりも少なくなります。

そうすると、4,200円×60日=252,000円
という計算結果になり、加害者側の自賠責保険から支払われる傷害慰謝料252,000円になることがわかります。

重要
  • 自賠責の傷害慰謝料日額は4,200円
  • 対象日数は「治療実日数×2」か「治療期間」の少ないほうが採用される

では、任意保険の場合、傷害慰謝料はいくら程度になるのでしょうか。

任意保険基準は各保険会社ごとに異なるため、一概には言えません。

ただ、平成10年まで使用されていた「旧任意保険支払基準」では、入通院期間に応じて金額が定められていました。

そのため、現在でも上記の基準を計算の基礎としている任意保険会社の場合、入通院期間から傷害慰謝料が算出されている可能性があります。

各保険会社ごとの傷害慰謝料の計算方法は基本的に非公開となっているため、正確な金額を知ることが難しい点にご注意ください。

重要

任意保険の場合、傷害慰謝料の計算方法は基本的に非公開

方法①加害者側の自賠責保険に被害者請求をする

さて、被害者請求を行う場合は、以下を加害者側の自賠責保険会社に提出することになります。

「損害賠償額支払請求書」を始めとする必要書類

必要書類の種類や提出方法については以下のページで解説されているため、ぜひご確認ください。

また、加害者側の自賠責保険に提出する書類などをまとめた表は以下となります。

ぜひご参考にしてみてください。

自賠責の必要提出書類
請求項目提出書類送付タイミング
傷害慰謝料
治療費
損害賠償額支払請求書治療終了後
交通事故証明書
事故発生状況報告書
診断書
診療報酬明細書
通院交通費明細書
休業損害休業損害証明書治療期間中~治療終了後

損害賠償額支払請求書: http://jiko110.org/images/pdf/e_jidousya.pdf

なお、後遺障害等級の認定申請を行う場合、症状固定後に加害者側の自賠責保険会社に「後遺障害診断書」などを送付する必要があります。

等級の申請手続きに関しては以下のページをご参照ください。

方法②加害者側の任意保険会社に損害賠償請求をする

続いて、加害者側の任意保険会社に請求する場合の解説です。

任意保険に傷害慰謝料を請求する場合、「損害賠償請求書」を送付することになります。

損害賠償請求書に決まった書式はありません。

しかし、加害者側の任意保険会社に申請すれば必要書類を送付してくれることがあるため、それに記入して返送すると良いでしょう。

治療費の請求に関しては自賠責の場合と変わりありませんが、治療関係費の領収書の原本などを提出する必要がある点にご注意ください。

任意保険の必要提出書類
請求項目提出書類送付タイミング
障害慰謝料損害賠償請求書治療終了後
治療費交通事故証明書
事故発生状況報告書
診断書
診療報酬明細書
通院交通費明細書
領収書の原本
休業損害休業損害証明書治療期間中~治療終了後

また、以下のページでは、自賠責・任意保険に請求する方法だけではなく、裁判所へ請求する方法も解説されています。

興味がある方はぜひご参照ください。

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Q&A|被害者が請求できるものについて

Q&A①|交通事故で健康保険・生命保険に請求できる?(使える?)

交通事故の被害者の場合、以下2つの保険は使えるのでしょうか。

  • 健康保険
  • 生命保険

健康保険:使用可能

生命保険:使用可能

どちらも使用可能です。

交通事故の場合、自由診療で治療を受ける必要があると誤解されている方がいますが、健康保険を使用することはできます。

また、生命保険に関しても、被保険者が死亡した場合だけではなく、ケガを負った場合でも使用できるケースがあります。

健康保険は交通事故の場合でも問題なく使用できる、と聞いて安心しました。

しかし、生命保険を使用できるケースもあることに驚きです。

どのような場合だと生命保険を使用できるのでしょうか。

日本生命の生命保険「みらいのカタチ」を例に挙げて紹介します。

日本生命のケース

交通事故を含む「不慮の事故」に遭った場合、以下の保険サービスに加入していれば給付金が支払われる可能性があります。

  1. ① 「総合医療保険」⇒「災害入院給付金」が支払われる可能性あり
  2. ② 「特定損傷保険」⇒「特定損傷保険の給付金」が支払われる可能性あり

具体的に、どのような条件を満たせばいくら給付金が支払われるのでしょうか。

みらいのカタチの「ご契約のしおり(2018年4月改訂)」から引用して解説します。

①総合医療保険

保障対象:「不慮の事故」で1泊2日以上の入院をしたとき

給付金額:(入院1回につき)総合医療保険の入院給付日額×入院日数が給付される(金額非公開)

②特定損傷保険

保障対象:責任開始時以後に生じた「不慮の事故」により、その事故の日からその日を含めて180日以内に、所定の特定損傷(骨折、関節脱臼、腱の断裂)の治療を受けたとき

給付金額:特定損傷保険の給付金額が給付される(金額非公開)

補足として、「責任開始時」とは「申込み」「告知・診査」「第一回保険料の払込み」の3つすべてが完了したタイミングのことを指します。

交通事故だと生命保険が使えないかもしれない」

そう思い込んでいた方も少なくないと思います。

加入している生命保険の補償内容によっては、交通事故の場合でも給付金が支払われることがあります。

そのため、日頃から契約内容をしっかりと確認するようにしましょう。

日本生命の生命保険
保険の種類保障対象給付金額
総合医療保険不慮の事故で12日以上の入院入院給付日額×入院日数
特定損傷保険不慮の事故で骨折、関節脱臼、腱の断裂の治療特定損傷保険の給付金額

「不慮の事故」には交通事故も含まれる

Q&A②|物損で請求できるものを知りたい

物損で請求できるものは何でしょうか。

上述した通り、自賠責には人身部分しか請求することができないため、加害者本人か任意保険に請求することになりますが……

主に以下の項目を請求することができます。

  1. ① 修理代
  2. ② 買替差額費
  3. ③ 評価損(格落ち損)
  4. ④ 代車使用料
  5. ⑤ 休車損害

⑥登録手続関係費

⑦雑費

⑧車両積載物

では、大切な愛車が壊れてしまった
などの場合、物損でも慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

通常、物損の場合は慰謝料は認められません。

しかし、「特段の事情」が認められれば、物損であっても慰謝料が認められる可能性があります。

たとえば、

交通事故によってペットが死傷した場合

などであれば、被害者が被った精神的苦痛に対し、慰謝料が認められることがあります。

物損でも慰謝料が認められる具体的なポイントは何でしょうか。

重要
  1. ① 被害物件が被害者にとって特別な主観的・精神的価値を有しているか
  2. ② 財産に対する金銭賠償だけだと被害者の著しい苦痛が慰謝されない

上記①②がポイントになります。

  1. ① に関しては、上述したように飼い犬などのペットであれば一般的に「特別な価値」があると認められる可能性があります。
  2. ② に関しては、加害行為(事故の状況)が著しく悪質だった場合、認められる可能性があります。

物損で請求できるものに慰謝料が含まれるケースもある、ということがわかりました。

「物損だけど、慰謝料を請求できるだろうか」
と疑問や不安を覚えている方は、弁護士などに相談してみてはいかがでしょうか。

物損で請求できるもの
請求項目概要
①修理代車両の修理相当額
②買替差額費「交通事故直前の車両時価額」-「事故車両の下取り価格」=「買替差額費」
③評価損(格落ち損)事故により機能・外観に欠陥が残ったことが原因で減少した市場価値
④代車使用料修理期間・新車購入までの間の代車使用料
⑤休車損害営業車が使用不能となった場合、営業を休んだ分の減少した営業利益
⑥登録手続関係費自動車取得税など、車両の買替で発生する手続き費用
⑦雑費事故によって支出させられた車両保管料・レッカー代などの費用
⑧車両積載物事故によって破損された積み荷や車両装備品の費用
⑨慰謝料ケースによるが、通常は請求不可

Q&A③|弁護士費用も請求できる?

最後に、弁護士費用も請求することができるのでしょうか。

被害者側が加入している任意保険で弁護士費用特約を使用できる場合、一般的に300万円まで弁護士費用を請求可能です。

加害者側に請求する場合、

  1. ① 弁護士費用の支払いを求めて裁判を提起する
  2. ② 示談の条件として賠償額に弁護士費用を盛り込む

などの方法で請求することが可能です。

「弁護士費用特約」は使用してもノンフリート等級が下がることは無いため、安心して使うことができます。

弁護士費用を加害者側に請求する方法については、以下のページで解説されているため、ぜひご参考にしてみてください。

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最後に一言アドバイス

いかがでしたでしょうか。

最後に岡野弁護士からひと言アドバイスをお願いします。

交通事故の慰謝料請求の仕方がわからず、慌ててしまう被害者の方も少なくないでしょう。

しかし、弁護士に相談すれば、不備なく提出書類を作成するためのアドバイスをくれる場合あります。

内容に不備がない提出書類であれば、加害者側の自賠責・任意保険から早めに保険金が支払われる可能性があります。

そのため、慰謝料の請求方法について相談したい方は、交通事故案件の経験豊富なアトム法律事務所までぜひご相談ください。

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まとめ

まとめ
  • 交通事故の慰謝料請求方法について
  • 被害者が加害者側に請求できるものは何か

ということなどについて、理解が深まったのではないでしょうか。

慰謝料などについて弁護士に相談したい方は、スマホで無料相談よりご相談ください。

また、関連記事もご用意しましたので、交通事故に関する他記事もぜひご覧になってみてください。

このページが、交通事故慰謝料請求についてお悩みの方のお役に立てれば何よりです。

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