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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
頭蓋骨骨折では、骨折の仕方(陥没骨折と線状骨)が症状の重さに影響を与える可能性があります。
頭蓋骨陥没骨折
骨片が内側に陥没している骨折
頭蓋骨線状骨折
一本の線状に骨折線が生じた骨折
陥没骨折によって脳内出血をおこしたり、線状骨折によって頭蓋骨の下の血管を損傷したりすることで、「もしも後遺症が残ったら…。」と、不安に思う方は多いでしょう。
頭蓋骨骨折では、どのような後遺症が残るのか、慰謝料はいくらもらえるのか、弁護士が解説します。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
頭蓋骨骨折では、意識障害が残る可能性があります。また、鼻水だと思って「髄液漏れ」をすすると感染症になるおそれもあります。早期に脳神経外科を受診しましょう。
頭蓋骨骨折では、痛みや出血、腫れのほか、以下のような症状があります。
とくに以下のような症状がある場合、頭蓋底骨折の疑いがあります。
※「頭蓋底」とは、頭蓋骨の底面の骨。視神経、嗅神経、聴神経、血管などが通っている。
髄液漏れが大量の場合、髄液の代わりに空気が頭蓋内に入ってしまうことがあります。
この傷病名を気脳症といいますが、気脳症のCT画像があれば頭蓋底骨折は確定診断されるでしょう。
およそ骨折の診断については、頭部CT検査が行なわれます。
脳損傷の診断には、CT検査のほかMRI検査が行なわれます。
頭蓋骨骨折の場合、救急科や脳神経外科を受診しましょう。
骨片が脳実質を圧迫したり、血管が損傷している場合もあります。
脳内出血が生じると硬膜下血腫や硬膜外血種に至り、重篤な後遺症がのこる可能性が高くなるため、症状があらわれたら早期に受診するようにしましょう。
線状骨折の場合、脳損傷を合併する可能性は低く、入院による経過観察を行ないます。
けいれん発作がおきたら、抗けいれん薬の投与が必要になります。
陥没骨折の場合、脳損傷を合併する可能性は高く、緊急手術が必要になります。
骨片の圧迫によって壊死した脳組織や、外部から入り込んだ異物を除去して、傷口を縫合するというような手術が行なわれます。
入院が必要な頭蓋・頭蓋内損傷の手術費用については、平均して74万円(保険を利用した場合は22万2000円)という国立国際医療研究センター病院のデータがあります。
ある保険サイトによれば、脳にかかわる病気の入院期間の平均は、以下のようになっていました。
入院日数(平均) | |
脳内出血 | 127.4 |
くも膜下出血 | 119.6 |
※単位:日
※参照元
https://hoken.kakaku.com/insurance/gma/select/stay/
乳児に頭蓋骨骨折が生じると、骨がへこんで脳損傷が起きやすいです。
※このほか、頭蓋骨骨折の兆候として、脳を覆っている膜が骨折部位から突出して袋状になり、髄液が溜まるというものがあります。
これを軟膜嚢胞といいますが、通常は経過観察をしながら自然治癒を待ちます。
乳児であっても、検査方法は成人と同様です。
※頭部の画像撮影は、脳の発達に影響があるといわれており、慎重にならなければなりません。
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
頭蓋骨骨折による脳損傷の後遺障害には、以下のようなものがあります。
くわえて、頭蓋骨骨折を生じるような交通事故では、脳損傷以外にも
等による後遺障害が残る可能性があります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
慰謝料相場は、後遺障害等級によって異なります。
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
逸失利益についても、等級ごとの労働能力喪失率の目安があります。1等級異なるだけで賠償金に大きな差がでてしまいます。
本来ならば高い等級が認定されたはずなのに、必要な検査など認定のポイントが分からなかったために、低い等級しか認定されなかったというのでは、あまりにも勿体ないことです。
交通事故に詳しい弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に頭蓋骨骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
骨折部位の画像所見と自覚症状とが一致しているか等について審査がされます。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事をご参照ください。
後遺障害等級の申請について
頭蓋骨骨折による高次脳機能障害で認定される後遺障害等級は、以下のようになります。
頭蓋骨骨折による高次脳機能障害
等級 | 内容 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
それぞれの等級の具体的基準は次のとおりです。
高次脳機能障害の症状例
等級 | 具体的な内容 |
1級1号 | 食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する |
2級1号 | 食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する ひとりで外出困難 |
3級3号 | 記憶・注意力、学習能力、障害の自己認識、対人関係維持に著しい障害 |
5級2号 | 単純くり返し作業ならば、一般就労も可能。環境が変わると作業が継続できない |
7級4号 | 作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどから一般人と同等の作業ができない |
9級10号 | 問題解決能力に障害があり、作業効率や作業維持力などに問題がある |
高次脳機能障害について弁護士に依頼すると画像所見、意識障害、異常な症状を等級認定の基準に照らして立証してもらえます。
一定程度の意識障害があること、XP・CT・MRIなどの画像検査で脳挫傷であることが確認できたら、聞き取り調査をおこない、症状にあった神経心理学的検査から必要な検査を実施することになります。
9級までに認定されない、より軽微な症状については、12級13号または14級9号が認定される可能性があります。
脳挫傷による高次脳機能障害
等級 | 具体的な内容 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
とはいっても障害の程度のみではなく、
が大きな判断要素となります。
神経症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
高次脳機能障害の症状例
等級 | 具体的な内容 |
12級13号 | 画像所見があるもの |
14級9号 | 自覚症状のみのもの ※事故の規模、通院頻度、症状の一貫性、各種検査の結果による |
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
頭蓋骨骨折による高次脳機能障害に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
頭蓋骨骨折による高次脳機能障害の慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
1級1号 | 1,600 | 2,800 |
2級1号 | 1,163 | 2,370 |
3級3号 | 829 | 1,990 |
5級2号 | 599 | 1,400 |
7級4号 | 409 | 1,000 |
9級10号 | 245 | 690 |
12級13号 | 93 | 290 |
14級9号 | 32 | 110 |
※単位:万円
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
遷延性意識障害(植物状態)の後遺障害等級については1級1号が認定されます。
頭蓋骨骨折による遷延性意識障害
等級 | 症状 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
遷延性意識障害(植物状態)に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
頭蓋骨骨折による遷延性意識障害の慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
1級1号 | 1,600 | 2,800 |
※単位:万円
遷延性意識障害(植物状態)の損害賠償金は、介護費用なども多額にのぼります。そのため、賠償金は全体的に高額になります。
外傷性てんかんの後遺障害等級は、以下のようになります。
頭蓋骨骨折による外傷性てんかん
等級 | 症状 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
外傷性てんかんの等級ごとの具体的な症状例は、次のとおりです。
外傷性てんかんの症状例
等級 | 具体的な内容 |
5級 2号 | ・転倒する発作等 ・1ヵ月に1回以上 |
7級 4号 | ▼転倒する発作等 ・数か月に1回以上 ▼転倒する発作等以外の発作 ・1ヵ月に1回以上 |
9級 10号 | ▼転倒する発作等以外の発作 ・数か月に1回以上 ▼てんかん発作の頻度 ・服薬継続により、ほぼ完全に抑制されている |
12級 13号 | ・発作の発現はない ・脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
《用語》
※【転倒する発作等】とは
「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す動作」のこと
※【「意識障害の有無を問わず転倒する発作」】とは
意識障害が起こり、その後ただちに四肢等が強くつっぱる強直性のけいれんが続き、次第に短時間の収縮と弛緩をくりかえす間代性のけいれんに移行する」強直性代発作や脱力発作のうち「意識は通常あるものの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの」が該当する。
※【「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」】とは
意識混濁を呈するとともにうろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないものが該当する。
※【てんかん性棘波(きょくは)】とは
脳波検査における、てんかん性の異常波の一種。棘(とげ)のようにとがった波のことを【棘波】(きょくは)という。
外傷性てんかんに対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
頭蓋骨骨折による外傷性てんかんの慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
5級2号 | 599 | 1,400 |
7級4号 | 409 | 1,000 |
9級10号 | 245 | 690 |
12級13号 | 93 | 290 |
頭蓋骨骨折により脳を損傷した場合は片麻痺(半身不随)になる可能性があります。
四肢麻痺・対麻痺・単麻痺は、脊髄損傷が主な原因です。
区分 | 麻痺の範囲 |
四肢麻痺 | 両側の四肢の麻痺 |
片麻痺 | 一側の上下肢の麻痺 (例)右半身麻痺・左半身麻痺 |
対麻痺 | 両上肢または両下肢の麻痺 (例)下半身麻痺 |
単麻痺 | 上肢または下肢の一肢のみの麻痺 |
半身不随で認定される後遺障害等級は、以下のようになります。
頭蓋骨骨折による麻痺症状
等級 | 片麻痺 (半身不随) |
1級1号 | 高度 (要常時介護) |
2級1号 | 高度 (要随時介護) |
5級2号 | 中等度 |
7級4号 | 軽度 |
12級13号 | 軽微な麻痺症状 |
神経麻痺のレベル(高度・中等度・軽度・軽微な麻痺)について、具体的には以下のとおりです。
高度・中等度・軽度・軽微な麻痺の区別
高度 | 中等度 | 軽度 | |
手 | 完全硬直 または 近い状態 | ▼もち上げる (500g) | |
できない | できる | ||
▼文字を書く | |||
書けない | 困難を ともなう | ||
足 | 完全硬直 または 近い状態 | ▼歩行装具 | |
必要 | 不要 | ||
ー | ▼支持性 転倒し易い ▼速度 遅い |
軽微な麻痺 |
・軽微とは、運動性、支持性、巧緻性、速度にほとんど支障がない程度。 ・運動障害はないが、広範囲にわたる感覚障害があらわれることが多い。 |
頭蓋骨骨折による半身不随の後遺障害慰謝料は、以下のようになります。
頭蓋骨骨折による半身不随の慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
1級1号 | 1,600 | 2,800 |
2級1号 | 1,163 | 2,370 |
5級2号 | 599 | 1,400 |
7級4号 | 409 | 1,000 |
12級13号 | 93 | 290 |
頭蓋骨骨折をしてしまうような交通事故では、内蔵損傷を合併することがよくあります。
内蔵損傷の後遺症について知りたい方は、こちらのページを参考になさってください。
骨盤骨折の後遺症について知りたい方は、こちらのページをご覧ください。
頭蓋骨骨折によって、脳を損傷した場合、意識障害・記憶障害・麻痺など日常生活に大きな影響をあたえる後遺障害がのこる可能性が高いです。
にもかかわらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会)
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