作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

人身事故対応

人身事故の対応|被害者は7ステップ…治療費請求までの道のりをマスター

事故対応の流れは?

突然の人身事故で、初期対応に迷われる方もおられるのではないでしょうか。

  • 人身事故の初期対応(7つ)とは?
  • 人身事故の治療費を確実に支払ってもらうために必要な対応とは?

人身事故初期対応は、大きく分けて7つあります。
被害者の方が行なうべき対応を中心に、加害者の方にも参考になる内容を解説します。


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人身事故の流れは?7つの初期対応とは?

事故対応の流れ(被害者)

まずは、事故の当事者に関する法的義務について、解説していきましょう。

①負傷者の救護(主に加害者側)

交通事故を起こした車両等の運転者には、次のような道路交通法上の義務が課せられています。
ちなみに、「車両等」というのは、自動車、原動機付自転車、軽車両、トロリーバス、路面電車のことです。

運転者の義務

① 運転停止義務・負傷者救護義務(119番)

② 危険防止措置を講じる義務

③ 警察に対する事故報告義務(110番)

運転停止義務・負傷者救護義務の内容は?

まずは、①から解説していきましょう。

人身事故の場合、まずは運転を止め、安全な場所に停車します。

そして、負傷者がいるか確認します。
負傷者がいる場合、次のような救護をします。

負傷者救護義務

負傷者の有無を確認する

119番通報(救急車を呼ぶ)

安全な場所に負傷者を移動させる

負傷者の有無

ほかに事故に巻き込まれた人がいないかどうか、念のため確認しておきましょう。

負傷者を救護しなかった場合、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
自分がひき逃げした加害者だった場合、救護義務に違反すると10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

119番通報

119番通報については、怪我の程度にかかわらず、できるだけ救急車を呼びましょう。
かすり傷程度の軽傷でも、時間が経過してから重篤な症状が現れるケースもよくあります。

ご自身が被害者になってしまった場合、何の自覚症状もないということがあるかもしれません。
しかし、そのような場合も、遠慮せず、必ず検査入院など、頭部に損傷がないかどうか病院で診察を受けましょう。

安全な場所へ移動

頭部を強く打っている可能性がある場合、むやみに動かさないほうがようにしましょう。
ただし、後続事故のおそれがある場合は、そのまま放置するのは危険です。
なるべく頭部を動かさないようにして、安全な場所に移動させましょう。

②危険防止措置(被害者・加害者ともに)

事故の続発を防ぐため、他の交通の妨げにならないような安全な場所(路肩、空き地など)に車両を移動させて、エンジンを切りましょう。

危険防止措置

空き地などに車両を移動、エンジンを切る

停止表示器材を表示する

周囲の人に交通整理を依頼する

③警察へ事故報告・人身事故の届出

被害者が報告・通報してもよい

交通事故の加害者・被害者関係なく、警察に事故報告をする義務が課せられています。
負傷者の救護、危険防止措置を講じたら、警察に連絡をいれます。
携帯電話で110番通報するか、緊急通報アプリで通報しましょう。

警察に報告する内容は、次のとおりです。

警察に報告する内容

人身事故が発生した日時・場所

死傷者の数

負傷者の負傷の程度

物の損壊の程度

事故にあった車の積載物

人身事故について講じた措置 など

怪我をしたら「人身事故」の届出

人身事故とは、人の死傷をともなう交通事故のことです。
これに対して、物損事故とは、物(車、建造物など)の損壊だけの交通事故のことです。

警察を呼んだ場合、事故現場で現場検証され、その結果が捜査報告書にまとめられます。

物損事故の場合は「物件事故報告書」が作成されます。
人身事故の場合は「実況見分調書」が作成され、道路状況は滑りやすいか、暗かったか、時速何キロで走行していたか、どの地点から何が見えるか等くわしく記入されます。

実況見分調書

警察などの捜査機関が場所・人の身体・物の状況を確認(=実況見分)して、その結果を録取した捜査上の文書

物件事故報告書のほうが簡単なであること等から、物損事故としての届出を勧められることも多いです。

物損事故と人身事故の違い
物損事故 人身事故
内容 物の損壊 人の死傷
捜査報告書 物件事故報告書 実況見分調書
簡単な形式 詳細に記録

物損事故の届出をすすめられても、将来を見据えると、怪我をした場合は、人身事故としての届出をするほうがよいでしょう。
詳細な記録を残すことが、過失割合の認定に役立つからです。

損害賠償金は、損害を金銭的に評価し、損害総額から当事者の過失割合にもとづき減額され、最終的な金額が決まります。

過失の有無・程度については、詳しい事故状況がわからなければ、認定できません。
そのため、過失割合が争いになったときは、詳細な記録がされる実況見分調書があると有利です。
実況見分調書を作成してもらうには、人身事故としての届出が必要です。

診断書が必要?物損から人身切り替えも可能

当初、物損事故として届出をしていた場合でも、途中から人身切り替えも可能です。

人身切り替えの流れ

① 病院で「診断書」を入手

② 警察署で人身切替の届出

交通事故の診断書には、事故日、初診日、治療期間のほか交通事故と受傷との因果関係を必ず記入してもらうようにしてください。

診断書の記載項目

事故日

初診日

治療期間

因果関係(受傷の原因が交通事故であること)

人身事故の届出をすると刑事事件で捕まる?

「人身事故として届出をすると刑事事件で捕まってしまうから、やめておいたほうがよい」と言われることもあります。

交通事故の多くの場合、被害者にも何らかの過失要素があることから、刑事事件でも責任を問われるかご不安な方もおられると思います。
もっとも、過失割合の小さい被害者の場合、刑事責任を問われる可能性は極めて低いです。

交通事故の賠償金など民事の問題が示談で解決できた場合、かりに刑事事件の捜査をうけたとしても不起訴になる可能性が高いでしょう。

くわえて、物損についても刑事責任を問われる可能性は極めて低いです。
過失による物損については、刑事罰が科されない(=過失器物損壊は処罰されない)からです。

交通事故と刑事責任
ケース 刑事責任
罪名 根拠
損壊
(過失)
なし
当て逃げ 当て逃げ 道路交通法
傷害
(過失)
重過失致傷 刑法
危険運転
致傷
自動車運転
処罰法
傷害
(故意)
傷害罪 刑法
死亡
(過失)
重過失致傷 刑法
危険運転
致死
自動車運転
処罰法
死亡
(故意)
殺人罪 刑法

*刑法の器物損壊罪(261条)は、故意犯のみ処罰され、過失犯は処罰されない。たとえば、あえて損壊する意図で、被害車両に追突のうえ損壊した場合は、器物損壊罪に該当する。これに対して、通常の物損事故の場合、加害者は不注意で追突するなどして車体を損壊しているため、器物損壊罪は成立しない。

④事故相手の情報を確認

事故相手の情報を確認しておくことも重要です。

なかには、その日にはじめて出会った相手、その上その出会いが事故だったということから、連絡先の交換に抵抗を感じられる方も多いでしょう。
しかし、被害者の方はとくに、後日、加害者側に損害賠償請求したり、示談交渉を開始したりするためには、事故相手の連絡先を確認することは必須です。

相手の氏名や連絡先など身元が分かる情報を確認しておくことが必要です。
車検証などの確実な情報を見せてもらうことをおすすめします。
具体的には、次のような情報を確認しておきましょう。

確認すべき情報

① 相手の氏名・住所・連絡先
運転免許証の提示など)

② 相手の勤務先の名称・連絡先
名刺の提示など)

③ 自動車の所有者が運転者と異なる場合、所有者の氏名・運転の目的・車両の通常の使用状況
自動車車検証の提示など)

④ 相手の自賠責保険及び任意保険の保険会社契約番号
自動車損害賠償責任保険証明書の提示など)

このほか車両の自動車登録番号及び車台番号(下7桁)を記録しておけば、後日運輸支局または自動車検査登録事務所に照会して自動車登録事項等証明書が入手でき、自動車の所有者や使用者の氏名・住所などを知ることができます。

⑤事故の状況を撮影記録

事故現場では警察による現場検証もおこなわれますが、自分自身で事故状況を記録しておくことも大切です。
携帯電話のカメラ機能を利用するなどして、記録をとっておきましょう。
事故状況を把握するためには、事故直後できるだけ早く撮影するというもポイントです。

人身事故の現場検証では「実況見分調書」が作成される

人身事故の現場では、警察によって現場検証がおこなわれます。
人身事故の現場検証の結果は、実況見分調書という捜査報告書にまとめられます。

実況見分調書には、現場検証を担当した警察官によって見聞きされた内容が記録されます。
正確な刑事記録を残せる点で、事故の当事者にとってメリットが大きいのは確かです。

なぜ自分でも記録・撮影するべきなのか?

一方で、実況見分調書は捜査官の編集を経て書面化されるものです。
そのため、当事者の言い分すべてがそのまま記載されるわけではありません。
被害者側の主張が十分に反映されないおそれがあるということです。

加えて、実況見分調書には、詳細な現場写真が添付されるとは限りません。
写真があれば一目瞭然で状況を把握できますが、全てのケースでそうはいかないのです。
さらに、事故発生から実況見分が行われるまでにはある程度の時間がかかります。
事故現場の状況が変わらないうちに記録を撮れるのは、当事者ご本人なのです。

実況見分調書の問題点

警察官に編集されて書面化されている

当事者の主張がそのまま記載されるとは限らない

詳細な現場写真が添付されるとは限らない

何の記録をする?何を撮影する?

記録・撮影すべきポイントは、次のとおりです。

撮影のポイント

現場の状況
(道路状況、信号機、横断歩道、照明、樹木、標識、交通量、交差点の見通し、時刻、天候など)

事故の状況
(破損の部位、スリップ痕の長さ、擦過痕、血痕など)

被害の状況
(転倒位置、衝突地点、血痕の位置、破片の位置など)

警察が実況見分を開始するまで、事故当時の状況をそのままにしておければよいですが、運転者には危険防止措置を講じる義務が課されているので、事故直後の様子をそのまま保ち続けることは不可能に近いことです。
そうなると、事故直後の様子を撮影できるのは、事故当事者の方自身です。
きちんと撮影しておければ、証拠保存としてはベストな対応といえるでしょう。

⑥目撃者の連絡先を確認

事故の当事者の言い分が食い違ったときなど、事故状況を証言してくれる目撃者は、とても重要な存在です。
目撃者がいる場合は、その方の氏名、住所などの連絡先も確認しておきましょう。

確認する情報

氏名

住所などの連絡先

目撃した内容

連絡先などを聞く際に、一方的に情報を聞くだけでなく、捜査協力をお願いしておきましょう。
そうすることで、あとで証言が必要になった際にお願いしやすくなります。
そして、警察に対して「目撃者の存在」を伝えておきましょう。

ポイント

目撃者の身元情報を確認する

目撃者に捜査協力を依頼する

警察に対して「目撃者の存在」と伝える

⑦自分の保険会社へ連絡

人身事故の治療費や賠償金などは、事故相手の保険会社から支払われるのが基本です。

しかし、自分の過失がネックになり支払いを受けられないことや、加害者が無保険の場合もあります。
そのような場合に、自分の保険会社から支払いを受けられる可能性もあるので、是非ご自分の保険会社に連絡を入れてみてください。

弁護士費用特約を利用するためにも連絡は必須

交通事故の示談交渉において、弁護士に依頼すると、保険会社からの提示された示談金を増額できる可能性が高まります。
さらに、複雑な手続き加害者側とのやりとりを任せることができるので、弁護士に事件解決を依頼するメリットは多岐にわたります。

しかし、弁護士費用の問題があって躊躇される方もおられるかもしれません。
そのようなときには、弁護士費用特約の利用をおすすめします。
弁護士費用特約を利用するためには、保険会社に連絡を入れる必要があります。

弁護士費用特約のメリット

弁護士費用特約のメリットは3つです。
自己負担なしで弁護士に交通事故の解決を依頼できます。
弁護士は裁判基準(弁護士基準)で示談交渉を進めてくれるので、保険会社が提示してきた金額を増額することが期待できます。
さらに費用倒れの心配もありません。

弁護士費用特約とは?(くわしい解説)

「弁護士費用特約」の詳しい仕組みについての解説はこちらです。


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人身事故の治療費|保険で対応するには?

①事故直後に通院開始・診断書入手

人身事故の治療費については、交通事故と因果関係がある場合に、保険会社が負担してくれます。
因果関係とは、その怪我の原因が交通事故であるというような意味です。
このような因果関係を認めてもらうには、事故直後から通院を開始する必要があります。

実際に、医師の診察を受ける際には、気になる自覚症状は全て伝えるようにしましょう。

治療開始時のポイント

① 治療は事故後、早期に開始する

② 気になる症状は医師にすべて伝える

他覚症状(=画像診断などの根拠がある症状)がない場合でも、自覚症状を工夫して診断書に落とし込むことは可能です。
こちらは後遺障害診断書の書き方に関するものですが、ご参考までにご紹介しておきます。

②健康保険を利用

交通事故でも保険診療は可能

交通事故で通院するときも健康保険を利用することはできます。
時折、病院側から自由診療を打診されますが、「健康保険を利用する」とはっきり伝えましょう。

保険利用なしだと3割負担

健康保険を利用せずに自由診療にすると、保険の3割負担が適用されません。
そうなると、いったん自費で治療費を立替える場合、経済的負担が大きくなります。

加えて、あとから示談金が入るとしても、過失割合によっては全額支払いをうけることができないこともあります。

さらに、加害者が自賠責保険にしか加入していなかった場合、確実に支払ってもらえるのは限度額の範囲内です。
傷害分の限度額は120万円とされています。

自賠責保険120万円の目安は?

怪我の内容・通院先・通院頻度などにもよりますが、3~4ヵ月通院すると、自賠責保険の120万円の限度額に達することが多くなります。

次のようなむちうちの事案を用いて、シュミレーションをしてみましょう。

事案

追突事故によって頸椎捻挫(むちうち症)と診断された主婦が病院・整骨院への3ヵ月間(実日数は50日)の通院治療を経て完治した

治療(施術)部位にもよりますが、治療費は上記の事案であれば、自由診療だと月15万円程度かかることが多いと考えられます。
1か月の治療費を15万円と仮定した場合、治療費総額は次のとおりです。

15万円/月 × 3ヵ月= 45万円

加えて、通院のための交通費などの実費がかかります。
怪我や治療の内容によっては、以下のような実費がかかることもあります。

看護料

諸雑費

義肢等の費用

休業損害については、主婦の場合、自賠責保険から「1日につき5,700円」が支払われます。
上記の事案では、実際の通院日数が50日なので、休業損害は次のようになります。

5,700円/日 ×50日=28万5,000円

傷害慰謝料については、治療日数1日につき4,200円が支払われます。
治療日数については、次のうちどちらか少ない日数が基準となります。

実治療日数(=実際に治療のために医療機関に通院した日数)×2

治療期間(治療開始日から治療終了日までの日数)の日数

上記の事案では、実治療日数は50日、治療期間は90日(3ヵ月)です。
この場合、実治療日数「50日間」×2で算出した「100日間」と、治療期間「90日」とでは、後者の治療期間のほうが少ない日数です。
そのため、治療期間である90日で計算します。

4,200円/日 ×90日=37万8,000円

上記の内容をまとめると、次のとおりです。

自賠責保険120万円の目安
治療費 ¥450,000
休業損害 ¥285,000
傷害慰謝料 ¥378,000
合計 ¥1,113,000

治療費、休業損害、慰謝料を合計して111万3,000円となります。
これらに実費である交通費が加わると、120万円弱になると考えられます。

③領収書を保管

治療費や、通院のための交通費を自身で立替えていた場合は、あとで保険会社に請求するために、領収書が必要になります。
きちんと保管しておきましょう。

④整骨院通院は保険会社に相談

むちうちなどの場合、整形外科ではなく整骨院に通院したいとお考えの方もおられると思います。
整骨院の施術料については、保険会社が負担する治療費に含まれないこともあるため、注意が必要です。
整骨院に通院したいと考えた場合、通院する前に、保険会社にあらかじめ相談しておきましょう。

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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

全国10事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業依頼、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2019年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。