作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故逸失利益

交通事故の「逸失利益」がわかる!|判例と計算方法から相場を導こう

交通事故の逸失利益って何?

交通事故の被害にあったとき、損害賠償の一つとして支払われるのが逸失利益です。
これは交通事故にあわなければもらえたであろう将来の収入に対する補償です。
ですが慰謝料などと比べると、あまり身近でない概念でもあります。
そこで今回は、逸失利益の計算方法や、増額のための取り組みなどを紹介します。

  • 逸失利益の計算方法とは?
  • 実際に後遺障害等級12級・14級では逸失利益はいくら?
  • 逸失利益を増額するために弁護士が出来ることとは?


1

交通事故の逸失利益とは何か?

交通事故の損害賠償の「逸失利益」とは?

逸失利益とは
逸失利益

交通事故の損害賠償’において,その事故がなければ将来的に得たであろうと思われる利益
例として会社に勤める者が交通事故で負傷し、仕事に支障が出て給料が下がった場合、逸失利益は受け取れるはずだった給料との差額があたる

また、交通事故の逸失利益は2種類あります。

後遺障害が残った場合の後遺障害の逸失利益

被害者が死亡した場合の死亡事故の逸失利益
どちらも、後遺障害が残った/死亡したことにより、得られるはずだったのに得られなくなった収入・利益を指します。

後遺障害が残っても収入が減らなければ逸失利益は受け取れない?

例えば、交通事故にあってひどい腰痛が続いているけれども、何とか今まで通りの給料がもらえている、というとき。
この場合、実際には収入が減っていないのですから、「受け取れるはずだった給料」との差額は存在しないことになります。
そのような場合でも逸失利益は受け取れるのでしょうか。

判例は、そのような場合であっても

被害者が特別の努力をしていて、それがなければ収入が減少していると認められるとき

職業の性質に照らし、昇給、昇進、転職などで不利益な取扱を受ける恐れが認められるとき
以上のようなときは、例外的に逸失利益を認めるという立場をとっています。
また、事故当時収入が無かった・実際に減収が発生していないとしても、逸失利益を受け取れる可能性はあります。
まずは弁護士に相談してみましょう。

2

交通事故の「後遺傷害」に関する逸失利益|計算方法

イメージ画像

後遺障害における逸失利益は、以下のように計算します。

後遺障害の逸失利益・計算方法

基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

それぞれの要素について、詳しく解説します。

逸失利益の基礎収入とは?

基礎収入とは、事故当時の被害者が得ていたと認められる金額です。
以下は、様々な場合の基礎収入の算定方法です。

給与所得者の場合

原則として事故前の給与額を基礎として算定します。
ですが現実の給与額が賃金センサスの平均賃金を下回っている場合、平均賃金を基礎とできる場合もあります。

事業所得者の場合

前年の確定申告などを参照して算定します。
赤字の場合や無申告の場合は、賃金センサスの平均賃金から算定することもあります。

主婦の場合

専業主婦の場合は賃金センサスの女子平均賃金、兼業の場合は現実収入と平均賃金の高い方を採用します。

無職者の場合

無職の場合であっても、事故時に通常の労働能力を有し、労働意思がある場合には男女別・全年齢の平均賃金を基礎とします。
一方で労働意思に乏しい場合は逸失利益が認められない可能性もあります。

学生・幼児の場合

将来得られる収入について、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金額を基礎として算定します。
大学進学の可能性が高いような場合には、大卒の平均賃金が用いられることもあります。

逸失利益の労働能力喪失率とは?

労働能力喪失率とは、交通事故によって何%の労働能力が失われたか、を示す数値です。
原則として、後遺障害等級に応じて労働能力喪失率を認定します。

後遺障害等級に対応

労働能力喪失率

1 2 3 4
100% 100% 100% 92%
5 6 7 8
79% 67% 56% 45%
9 10 11 12
35% 27% 20% 14%
13 14
9% 5%

ですが、この表と異なる喪失率が認定される場合もあります。
例えば、顔面の傷などの場合、上記の表の数字よりも労働能力喪失率が低く認定される傾向にあります。
一方で後遺障害によって仕事を退職していたり、仕事への支障が著しいとされる場合は、上記の表よりも高く認定されることもあります。
すなわち、被害者の職業・年齢・性別・後遺障害の部位・程度・事故前後の稼働状況などがさらに考慮されることもあるということです。

また労働能力が回復していくと考えられる場合にも、表と異なる喪失率となる場合があります。
具体的には、12級で最初の5年は14%、その後の10年は10%…などと認定された判例があります。

逸失利益の労働能力喪失期間とは?

逸失利益が認められる期間、すなわち症状固定日から労働による収入がある期間を指します。
症状固定日については、以下の記事を参照にしてください。

原則として、67歳までは労働による収入があると認められています。
そのため、労働能力喪失期間を求める計算式は67歳-症状固定時の年齢となります。

ですがこの計算式にも例外が多くあります。

被害者が高齢の場合は上記の式と症状固定時の年齢の平均余命÷2のいずれか長期の方

比較的後遺障害が軽い場合は5~15年
など、その認定にも後遺障害の程度や被害者の年齢などによって増減があります。

逸失利益のライプニッツ係数(中間利息の控除)とは?

逸失利益として、本来累積して受け取る収入を一括で受け取ると、預金の利息などの利益が発生します。
その利益を控除する係数がライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数は法定利率を元に計算されているため、法定利率が変更される民法改正(2020年4月1日)以前の事故と以後の事故で異なる数値になります。
以下は、ある程度の期間のライプニッツ係数一覧表です。

改正前&後

被害者が18歳以上のときのライプニッツ係数

労働能力喪失期間 改正前 改正後(民法改正後)
1 0.9524 0.9709
2 1.8594 1.9135
3 2.7232 2.8286
4 3.5460 3.7171
5 4.3295 4.5797
6 5.0757 5.4172
7 5.7864 6.2303
8 6.4632 7.0197
9 7.1088 7.7861
10 7.7217 8.5302
11 8.3064 9.2526
12 8.8633 9.9540
13 9.3936 10.6350
14 9.8986 11.2961
15 10.3797 11.9379
16 10.8378 12.5611
17 11.2741 13.1661
18 11.6896 13.7535
19 12.0853 14.3238
20 12.4622 14.8775

また、事故当時被害者が18歳未満だった場合は数字が異なります。
なぜなら通常18歳になるまでは収入が発生しないため、事故当時から18歳になるまでの期間を労働能力喪失期間から差し引かなければいけないからです。

改正前&後

被害者が18歳未満のときのライプニッツ係数*

事故当時の年齢 改正前 改正後(2020年以降)
0 7.5495 14.9795
1 7.9269 15.4289
2 8.3233 15.8918
3 8.7394 16.3686
4 9.1765 16.8596
5 9.6352 17.3653
6 10.1170 17.8864
7 10.6229 18.4230
8 11.1541 18.9756
9 11.7117 19.5449
10 12.2973 20.1312
11 12.9121 20.7352
12 13.5578 21.3572
13 14.2356 21.9980
14 14.9474 22.6579
15 15.6949 23.3376
16 16.4796 24.0377
17 17.3035 24.7589

*大学進学の蓋然性が認められる場合は数値が異なることもある

3

後遺障害逸失利益の相場はいくら?

では実際の事例で、逸失利益がいくらになるか見てみましょう。

交通事故の判例でわかる:後遺障害14級の逸失利益

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事案

加害車の乗る普通乗用自動車が被害者(個人タクシー運転手・症状固定時63歳)の乗るタクシーに追突した事故(平成25.2.6 東京地判(ワ)第22192号)

基礎収入:203万8091円

後遺障害:14級9号(首の痛み)

労働能力喪失期間/喪失率:5年間/5%

上記の情報をもとに計算すると、逸失利益は以下のようになります。
203万8091円×0.05×4.3295=44万1195円

基礎収入について、個人事業主なので営業利益+確定申告上の控除額から導かれています。
労働能力喪失期間について、比較的軽い14級であることを考慮して、通常より短い5年と定めています。
5年に対応するライプニッツ係数が4.3295です。

また、後遺障害等級14級に該当する交通事故の労働能力喪失期間については以下のような統計があります。

後遺障害14級

労働能力喪失期間の認定*

年数 割合
2 6%
3 30%
4 6%
5年以上 58%

*栗宇一樹・古笛恵子編, 「交通事故におけるむち打ち損傷問題」(2012), p.197

交通事故の判例でわかる:後遺障害12級の逸失利益

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事案

加害者の運転する普通乗用自動車が、被害者(主婦・症状固定時37歳)の運転する自転車に衝突した事故(平成27.9.28 東京地判(ワ)第30234号)

基礎収入:355万9000円(事故当時の女性の平均賃金)

後遺障害:12級13号(右中指の痛み)

労働能力喪失期間/喪失率:症状固定時から10年間は14%,その後の20年間は労働能力喪失率5%

上記の情報をもとに計算すると、逸失利益は以下のようになります。

症状固定時から10年:
355万9000円×0.14×7.7217=384万7414円
その後の20年:
355万9000円×0.05×(15.3725-7.7217)=136万1460円
合計:
384万7414円+136万1460円=520万8874円

まず収入について、主婦なので全女性の平均賃金から基礎収入が導かれています。
そして労働能力喪失期間・喪失率について最初の10年は14%、その後20年は5%…と変則的な認定がされています。
20年間については、「30年に対応するライプニッツ係数-10年に対応するライプニッツ係数」で計算します。

4

交通事故の「死亡」逸失利益の計算方法

死亡事故の逸失利益計算方法とは?

死亡事故における逸失利益は、以下のように計算します。

死亡事故の逸失利益・計算方法

基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

逸失利益の生活費控除とは?

被害者が死亡した場合、収入が得られなくなる一方で生存していれば支払う生活費などが発生しなくなります。
そこで、逸失利益の何割かを本来支払うべき生活費として控除する考え方がとられています。
何割が控除されるかは、家族関係・性別・年齢などによって異なります。

生活費控除率のまとめ
生活費控除率
一家の支柱・被扶養者1 40%
一家の支柱・被扶養者2人以上 30%
女性(主婦・独身・幼児) 30%
男性(独身・幼児) 50%

なお、年金生活者の場合、年金収入における生活費の割合が増えるのが一般的です。
そこで、年金収入に関しては50~70%の控除を認める傾向があります。
また、税金の控除は行わないこととなっています。

交通事故の判例でわかる:死亡事故の逸失利益

イメージ画像
事案

信号待ちのために歩道上で自転車にまたがり停止していた被害者(高校生・16歳)に、加害者の普通乗用自動車が衝突した事故。(平成24.3.26 仙台地判(ワ)第1333号)

基礎収入:654万4800円

生活費控除率:50%

上記の情報をもとに計算すると、逸失利益は以下のようになります。
654万4800円×(18.3390-5.0757)×(1-0.5)=4340万2822円

基礎収入について、高校で優秀な成績を修めていたことから大学に進学する可能性が高いとして、大卒の平均賃金が認定されています。
労働能力喪失期間について、22歳から働き始めることを考慮して、67歳までの51年に対応するライプニッツ係数から働き始めるまでの6年のライプニッツ係数が引かれています。
独身の男性であるとして、生活費控除率は50%となりました。

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交通事故の逸失利益を増額させたいときは弁護士にご相談ください

記事のまとめ

今回の記事の主な点をまとめると、以上のようになります。

後遺障害の逸失利益は被害者の収入・年齢・後遺障害の程度などで決定する

死亡事故の逸失利益は被害者の収入・年齢・性別・家族関係などで決定する

どちらも、計算上の満額が受け取れるとは限らない

交通事故の逸失利益増額を弁護士がお手伝いします

逸失利益の計算式自体は確立されているため、増額するのは困難なようにも思えます。
しかしながら、弁護士に依頼することで

実際の減収がなくとも逸失利益を認めてもらう

基礎収入を多く算定する

労働能力喪失率・期間を多く算定する
ことなどが可能になり、逸失利益の増額が叶います。
逸失利益に限らず、損害賠償金や示談金全体の増額もお手伝いいたします。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

全国10事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2019年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。


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