作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
判例からわかる交通事故の脊髄損傷の慰謝料|等級別の慰謝料相場&自動計算機
交通事故で負ってしまう重大な怪我の一つに、脊髄損傷があります。
四肢に麻痺が残ってしまうことも多く、被害者の方は生活に不便を感じる場面も多くあるのではないでしょうか。
少しでも納得のいく解決を目指すため、交通事故で脊髄損傷した事例の慰謝料を紹介します。
- 交通事故が発生したら慰謝料のほかに何がもらえる?
- 判例では慰謝料はいくら支払われた?
- 慰謝料を増額させるためには何をすればいい?
目次
交通事故の脊髄損傷:損害賠償で支払われる相場は?
損害賠償
交通事故により損害’が生じた場合に、その損害を塡補して損害がなかったのと同じ状態にすること。
すなわち、損害賠償の際に支払われる損害賠償金には、あらゆる損害への補償が含まれています。
交通事故で発生する損害で代表的なものは、以下の通りです。
代表例
損害賠償金の内訳
① | 治療費 |
---|---|
② | 休業損害 |
③ | 慰謝料 |
④ | 逸失利益 |
以下、簡単に解説していきます。
交通事故の治療費とは?
実際に病院などでかかった治療費の全額が治療関係費として支払われます。
他の治療関係費として、入院雑費や通院交通費、付添費、文書作成費なども含まれます。
一般に、脊髄損傷の治療期間の目安は1年以上・治療費として1000万円かかると言われています。
交通事故の休業損害とは?
入通院のため、仕事を休んだりした場合に得られなかった収入を休業損害と言います。
1日あたりの収入を基礎に、休んだ日数で計算されます。
被害者が主婦・無職で収入の計算が難しい場合などには、同性・同年代の平均賃金のデータを利用することもあります。
交通事故の入通院慰謝料/後遺障害慰謝料とは?
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金です。
入通院慰謝料は怪我を負ってしまい入通院することになった苦痛に対して支払われ、原則として治療期間や日数に応じて支払われます。
後遺障害慰謝料は後遺症が残ってしまった苦痛に対して支払われ、障害の程度や重さを表す後遺障害等級に応じて支払われます。
実際に、脊髄損傷で該当する可能性のある後遺障害等級とその慰謝料額は以下の通りです。
脊髄損傷
後遺障害慰謝料の目安
等級 | 基準 | 慰謝料額* |
---|---|---|
1級** | 高度の四肢麻痺 高度の対麻痺 中程度の四肢麻痺で常時介護を要するもの 中程度の対麻痺で常時介護を要するもの |
2800万円 |
2級** | 中程度の四肢麻痺 軽度の四肢麻痺であって、随時介護を要するもの 中程度の対麻痺であって、随時介護を要するもの |
2370万円 |
3級 | 軽度の四肢麻痺 中程度の対麻痺 |
1990万円 |
5級 | 軽度の対麻痺 片足に高度の単麻痺 |
1400万円 |
7級 | 片足に中程度の単麻痺 | 1000万円 |
9級 | 片足に軽度の単麻痺 | 690万円 |
12級 | 運動性の支障がほぼ無い警備な麻痺 運動障害は無いが感覚障害があるものなど |
290万円 |
*弁護士に依頼した場合に請求できる金額
**後遺障害等級別表Ⅰ
実際にどの等級に該当するかについては、麻痺の部位・程度からわかります。部位の呼称は以下の画像の通りです。
高度・中程度・軽度がどのような症状を示すか、具体的な基準は以下の通りです。
麻痺障害
高度・中程度・軽度の目安
麻痺の程度 | 部位 | 内容 |
---|---|---|
高度の麻痺 | 上下肢 | 完全強直又はこれに近い状態 |
上肢 | 肩・肘・手首および5本の指のいずれの関節も自分の力で動かせない、またはこれに近い状態 障害を残した腕でものを持ち上げて移動させることができない |
|
下肢 | 股関節・膝・足首のいずれの関節も自分の力で動かせない、またはこれに近い状態 障害を残した片足の歩行・立つ機能が失われている |
|
中程度の麻痺 | 上肢 | 障害を残した腕でおおむね500gを持ち上げることができない 障害を残した腕で文字を書くことができない |
下肢 | 障害を残した片足のため、杖・装具なしに階段を上がれない 障害を残した両足のため、杖・装具なしに歩行が困難 |
|
軽度の麻痺 | 上肢 | 障害を残した腕で文字を書くことに困難を伴う |
下肢 | 日常生活はおおむね一人で歩けるが、障害を残した片足のため不安定で転倒しやすく、速度も遅い 障害を残した両足のため杖・装具なしには階段を上がれない |
実際には麻痺以外の症状がある場合など、さらに上の等級が認定される可能性もあります。
また、入通院慰謝料と併せて慰謝料を計算できる慰謝料計算機も利用できます。利用者情報の登録などは一切不要ですので、ぜひご活用ください。
交通事故の逸失利益とは?
治療が終了するまでの収入は「休業損害」で補償されますが、治療後に後遺障害が残ったときの収入は逸失利益で補償されます。
こちらは年収・後遺障害等級などによって決定されます。およそ収入の何%が喪失したとみなされるかは、以下の表の通りです。
脊髄損傷
労働能力喪失率の目安
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級* | 100% |
2級* | 100% |
3級 | 100% |
5級 | 79% |
7級 | 56% |
9級 | 35% |
12級 | 14% |
*後遺障害等級別表Ⅰ
ここまで出てきた概念について、より詳しく算定方法などをご覧になりたい方は以下のページをご覧ください。
事例:バイク事故で脊髄損傷…慰謝料はいくらになる?
では、実際に被害者の方が脊髄損傷を負ってしまった交通事故の事例を見てみましょう。
事案
被害者(男性・症状固定時43歳)がバイクを運転中に、加害者運転の普通乗用自動車と衝突する交通事故によって受傷し、後遺障害を負った事案。(平成29.5.12 横浜地裁(ワ)第4831号)
- 入院342日/実通院日数115日
- 事故発生日から症状固定日まで3年214日
- 両下肢完全麻痺として後遺障害等級別表1級1号に認定
- 事故前年度の年収は555万1858円
①脊髄損傷の治療費はいくら?
脊髄損傷の位置・程度によっては、入通院期間が大幅に長引くことがあります。
この事案では、入院342日・通院115日の治療費として706万0521円を認めています。
②脊髄損傷の休業損害はいくら?
被害者の事故前年度の年収は555万1858円であり、事故発生日から症状固定日までの3年と214日ぶんの収入を得られなかった損害があります。
よって、555万1858円×(3年+214日/365日)=1991万0635円の休業損害が認められました。
③脊髄損傷の慰謝料はいくら?
慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方があります。
入通院慰謝料は、入院期間342日・実通院日数115日に応じて350万円が認められました。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級1級という認定結果に応じて2800万円が認められました。
④脊髄損傷の逸失利益はいくら?
被害者は車椅子となり、また座り続けることができない状態であり、後遺障害等級1級に認定されています。
そこで労働能力喪失率100%として、労働可能期間の終わる67歳までの24年間の全収入が逸失利益となりました。
555万1858円×1.00×13.7986(24年に対応するライプニッツ係数)=7660万7867円
ここに含まれない脊髄損傷の損害は?
この他に、
- 介護用ベッドや車いすなどの介護器具購入費567万5563円
- 平均余命までの38年間の介護費として4925万4268円
などの費用が認められ、結果的に損害賠償額は1億6070万8280円となっています。
この事案は最も重い後遺障害等級1級に認定された場合であり、麻痺などの後遺症が軽度であると慰謝料も低くなります。
傾向として、
- 後遺障害が要介護1級など非常に重い
- 被害者が若年である
場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などが大幅に増額され、損害賠償金が多額になります。
脊髄損傷の慰謝料について弁護士に依頼しない場合は?
上記の事案は、弁護士を代理人として裁判を行い、そこで認定された額です。
弁護士に依頼せず、相手方の自賠責保険の損害額算定に従うときは注意しなければならないことがあります。
自賠責保険では、保険金の支払い総額に限度額があるため、十分な補償が受けられない恐れがあります。
実際の限度額は以下のようになっています。
自賠責保険
保険金の限度額
等級 | 金額 |
---|---|
1級* | 4000万円 |
2級* | 3000万円 |
3級 | 2219万円 |
5級 | 1574万円 |
7級 | 1051万円 |
9級 | 616万円 |
12級 | 224万円 |
*後遺障害等級別表Ⅰ
上記の事案で損害賠償額が1億円以上となったことを考えると、自賠責基準での補償はやや心もとないようにも思えます。
脊髄損傷の事態ではその後の生活のことを考えると、弁護士に依頼した方がより納得のいく賠償金を得られるでしょう。
このように損害賠償額が高額になる事案では、費用倒れということもまずありません。
交通事故で脊髄損傷を負ってしまったら弁護士にご相談を
記事のまとめ
今回の記事をまとめますと、以下のようになります。
- 交通事故による脊髄損傷の損害賠償として、「治療費・休業損害・慰謝料・逸失利益」などがある
- 後遺障害慰謝料は麻痺障害の部位、程度、介護の必要性の有無により決定する
- 弁護士に依頼することで、より高額の賠償金を受け取ることができる
脊髄損傷の後遺障害等級申請・慰謝料増額などをサポートします
脊髄損傷の後遺症である麻痺障害は、基本的に完治することはありません。
後遺障害を適切に評価してもらい、十分な慰謝料をもらうことは今後後遺障害を負って生きていくことの助けになります。
後遺障害等級の申請に関する手続きや、保険会社との交渉などは弁護士に一任し、治療やリハビリに専念することが社会復帰に繋がることもあります。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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岡野武志弁護士