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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
この記事では後遺障害1級について解説します。
後遺障害1級の概要と定義、慰謝料についてみていきましょう。
「後遺障害1級」についての知識を深めましょう。
記事の最後ではアトム法律事務所への問い合わせ先もご紹介しています。記事を読んでみて困ったこと・悩み事・相談事があれば、お気軽にお問い合わせください。
後遺障害1級とは、後遺障害のなかで最も障害が重いとされる等級です。
後遺障害は損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)が専門的に認定を行います。
等級は1級から14級まで分かれており、数字が小さいほど障害の内容が重いとされています。
特に1級と2級には、介護を要する1級・2級という項目が別途設けられています。
「介護を要する後遺障害1級」とは、生命の維持のために常に介護が必要なレベルということです。
別表第1の1級1号、1級2号というように「別表」をつけて表されます。
後遺障害1級の場合は2,800万円が基準値です。
この金額には治療費や入院・通院への慰謝料は含まれていません。
後遺障害慰謝料について「自賠責保険の基準」と「弁護士に依頼した場合の弁護士基準」で比較してみました。
「自賠責保険の基準」とは加害者側が自動車の場合の交通事故では、被害者が必ず補償を受ける保険になります。
自賠責保険の基準 | 弁護士基準 |
---|---|
1,600万円(別表第1) 1,100万円 |
2,800万円 |
弁護士に依頼したほうが、基準の時点で1,200万円も高額です。弁護士を通した交渉でないと、同じ交通事故でもこれだけの差が出ます。
この記事の下部に「アトム法律事務所の無料相談窓口」を紹介しています。「まずは増額の見込みがあるのか」の確認をしてみませんか。
次に、後遺障害1級の定義を確認しておきましょう。
別表第1の1級:常に介護を要するもの
からみていきます。
別表第1・1級1号 | |
---|---|
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | |
別表第1・1級2号 | |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
次に、介護を要する後遺障害とはされていない1級になります。
ただしこの区分にあるからと言って、介護が不要という意味ではありません。
次に、1級をみていきましょう。
中身をみれば別表との違いも分かりやすいと思います。
1級1号 | |
---|---|
両目を失明したもの | |
1級2号 | |
咀嚼および言語の機能を廃したもの | |
1級3号 | |
両上肢をひじ関節以上で失ったもの | |
1級4号 | |
両上肢の用を全廃したもの | |
1級5号 | |
両上肢をひざ関節以上で失ったもの | |
1級6号 | |
両下肢の用を全廃したもの |
実際の定義をみてみるとより分かりやすいでしょう。
別表第1・1級は、「生命の維持が一人で出来ない」と考える方が、より分かりやすいです。
後遺障害1級を細かく見ていきましょう。この記事では認定される傾向にある症状・病名も紹介しますが、あくまで傾向ととらえてください。
また、単独で「1級」とならずとも、複数の後遺障害が残った場合に、重い方の後遺障害等級を繰り上げる「併合」などの考え方もあります。
この後の詳細をお読みいただき、「1級に該当するのではないか」という疑問があればぜひ弁護士にお問い合わせください。
ご状況をお伺いし、これまでの例をみながら見通しをお伝えすることができます。
1級該当の後遺障害はいずれも重いものです。
被害者・ご家族、医師、そして弁護士で連携して取り組んでいきましょう。
別表第1の1級についてまずは定義を確認しておきましょう。
別表第1・1級1号 |
---|
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
別表第1・1級2号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
別表第1の「2級」との違いは常にという文言になります。
常時介護が必要な場合には別表第1の「1級」認定ということです。
それでは、これまでの判例・事例から別表第1の「1級」に認定されてきた被害者の怪我・状態をみてみましょう。
別表1級1号・1級2号に認定される傾向があるもの(一例)
怪我
状態や症状
脳が損傷を受ける
中枢神経とよばれる脊髄に影響がおよぶ
心臓や肺に重い障害が残り、自分で呼吸ができない
これらの生命にかかわる重大な機能に常に介護が必要な場合が該当します。
別表第1の1級に該当しうる怪我・状態についてもっと詳しく知りたい方は次の記事も読んでみてください。
<関連記事の紹介>
⇒脳挫傷:解説記事「症状や慰謝料・看護」
⇒硬膜下血腫:解説記事「慢性・急性の症状、後遺障害認定」
⇒脊髄損傷:解説記事「慰謝料・麻痺の程度による後遺障害等級」
⇒遷延性意識障害:解説記事「症状やリハビリ、慰謝料の仕組み」
⇒四肢麻痺:解説記事「後遺症や慰謝料・後遺障害認定について」
⇒高次脳機能障害:解説記事「症状や慰謝料、判例の解説」
次に後遺障害1級1号「両目の失明」について確認していきましょう。
1級1号 |
---|
両目が失明したもの |
眼に関する後遺障害は「視力低下」・「失明」などの眼球に関するものや「まぶた」に関するものに分けられますが、1級1号は最も重い「両目の失明」となります。
両目が失明するほどの怪我は、顔面・頭を強く打ちつけたりする「外傷性」が多いでしょう。
失明は次のように定義されています。
のいずれかに当てはまる状態を失明といいます。
「失明」というのは実際に被害者本人しか体感できません。
後遺障害認定を受けるためには、検査などで「失明状態にある」ことを示す必要があります。
後遺障害1級2号、そしゃく・言語の機能を廃したものの定義を確認しておきましょう。
1級2号 |
---|
咀嚼および言語の機能を廃したもの |
咀嚼(そしゃく)や言語の機能を「廃する」についてもう少し掘り下げてみます。
「機能を廃する」とは「機能を失う」とほぼ同じ意味です。
次の2つの状態のときに「機能を廃する」とみなされています。
(1)流動食しか食べられない ⇒ そしゃく機能を廃する
(2)4種の語音のうち3種以上が発音不能 ⇒ 言語の機能を廃する
「そしゃく」とは簡単にいうと物を噛むことです。
物を噛むことができないので、噛む必要のない流動食しか食べられない状態をさします。
言語機能に関する「語音」は、次の4種類に分けられます。
声帯の振動、舌、歯、唇や声帯のすきまを使って発音します。
⇒4つの語音のうち、3つの音の発音ができない状態を言語機能を廃するといいます。
ちなみに、高次脳機能障害など脳への損傷で起こりうる「失語症(しつごしょう)」も言語機能喪失・低下といえます。
しかし、「失語症」だけでは1級認定ということにはなりません。
1級の要件は、そしゃく機能と言語機能の両方を廃したものだからです。
高次脳機能障害などによる言語機能の障害に関心のある方は、関連記事「脳損傷による言語障害」もお役立てください。
後遺障害1級3号~6号までは手足に関する後遺障害です。
その中で最も障害の程度が重い「両手足」を失ったり、動かない…などが該当します。
1級3号 |
---|
両上肢をひじ関節以上で失ったもの |
1級4号 |
両上肢の用を全廃したもの |
1級5号 |
両下肢をひざ関節以上で失った物 |
1級6号 |
両下肢の用を全廃したもの |
「上肢」や「下肢」という言葉は普段あまり使わないものなので、確認しておきましょう。
と考えてください。
上肢・下肢は、関節を動かすことで思うような動作をとることができます。
具体的に上肢・下肢の関節をみていきます。
が上肢の3大関節といわれています。
3つの関節、そしてさらに手指までが
この状態を上肢の用を全廃といいます。
が下肢の3大関節といわれています。
これら3つの関節が動かない、曲がらないことを下肢の用を全廃といいます。
また、「上肢」・「下肢」ともに麻痺している状態を四肢麻痺といいます。
それぞれの症状についても細かく解説しています。関心のある方は読んでください。
この円グラフは2016年度の後遺障害等級認定件数を示しています。
1級は後遺障害として最も重いもので、認定件数もあまり多くありません。
ここからは実際の「後遺障害1級」の判例をみていきましょう。
3億1,792万9,539円 |
---|
※弁護士費用・遅延損害金を除く
遷延性意識障害で植物状態になってしまった被害者の余命、過失割合が争点となりました。
金額が大きくなったのは、余命については「平均余命」が採用されたこと、被害者の過失割合がなかったこと、そして将来介護費があげられます。
認められた損害賠償の内訳は次の通りです。
損害賠償内容 | 金額 |
---|---|
治療費 | 1,570万6,686円 |
入院雑費 | 44万8,500円 |
入院付添い費 | 194万3,500円 |
治療費(症状固定後) | 707万5,775円 |
休業損害 | 239万1,868円 |
傷害慰謝料 | 350万円 |
逸失利益 | 7,244万1,811円 |
後遺障害慰謝料 | 3,200万円 |
将来の介護付き添い料 | 1億3,441万1,340円 |
将来雑費 | 1,556万4,870円 |
家屋改造費 | 2,370万円 |
車両改造費 | 421万2,313円 |
介護用品代 | 453万2,876円 |
計 | 3億1,792万9,539円 |
内訳はあくまでこの案件に適用されるものなので、遷延性意識障害の案件すべてに適用されるわけではありません。
しかし、重い障害が残ってしまった被害者のこれからの生活を支えていくための費用が多くを占めていることが分かります。
次はこちらの判例です。
認められた損害賠償は次の通りです。
損害賠償内容 | 金額 |
---|---|
治療費 | 688万8,025円 |
入院雑費 | 55万8,000円 |
入院付添い費 | 297万6,000円 |
付き添い関係費用(交通費など) | 69万3,909円 |
逸失利益 | 5,833万8,173円 |
将来介護費 | 1億6,390万8,290円 |
訪問入浴費用 | 121万2,737円 |
頸椎・下肢装具費用 | 68万3,091円 |
車いす費用 | 319万3,113円 |
バスチェアー費用 | 88万6,155円 |
介護用品レンタル費用 | 371万6,215円 |
車両関係費 | 163万9,471円 |
その他機器・用品代 | 153万9,323円 |
将来雑費 | 1,047万8,052円 |
住宅改修関係費 | 2,229万480円 |
傷害慰謝料 | 420万円 |
後遺障害慰謝料 | 3,600万円 |
計 | 3億1,920万1,034円 |
※過失割合考慮前
先の事例と同様、すべての案件に同じ損害項目・金額が認められるわけではありません。
今回は被害者が幼いことから、過失割合もごく少ないと判断されました。
また、後遺障害慰謝料も基準の2,800万円よりも800万円も増額されています。
後遺障害1級は非常に重大な後遺障害です。
被害者、そして周りの方の生活も一変させてしまいます。
後遺障害認定を適切な等級で受けることは、実は簡単なことではありません。
ましてや被害者の方は治療・リハビリに、周りの方もそのサポートに注力なさるべきです。
認定書類の準備、加害者側とのやり取りは弁護士にお任せください。
後遺障害1級認定を受けたら、いよいよ加害者側との示談・裁判を始められる時期でしょう。
判例でご覧いただいた通り、損害賠償請求項目は広範囲にわたります。
もし加害者側から金額を提案されているなら、一度一緒にチェックさせてください。
これまでの経験を踏まえて増額の余地がないか、見落としがないか、弁護士なら精査可能です。
など、あなたの今のお悩み・疑問に対して弁護士がお答えします。
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岡野武志弁護士