作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
脊柱管狭窄症|後遺障害等級は認定される?慰謝料はいくら?
交通事故で脊柱管狭窄症と診断されたときには、いくつかの注意点があります。
- 脊柱管狭窄症による後遺障害は既往症と判断されがち?
- 脊柱管狭窄症でも後遺障害等級に認定される?
- 脊柱管狭窄症で得られる後遺障害慰謝料は?
交通事故で脊柱管狭窄症と診断され、後遺障害が残った場合にはどうすべきなのかについて、解説していきます。
目次
脊柱管狭窄症とは?後遺障害の症状は?
脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症
椎間板の変形やとげ上に変形した骨(骨棘)によって、神経の通り道である脊柱管が狭くなることで、その中を通る神経が圧迫されること。
ある程度までは無症状で進行し、限度を超えると症状が現れる。
脊柱管狭窄症を引き起こす原因として一般的なのは、加齢です。
したがって、交通事故で脊柱管狭窄症の症状が出ても、交通事故というよりも年齢的なものが原因であると判断されてしまう可能性もあります。
脊柱管狭窄症による後遺障害
脊柱管狭窄症で考えられる後遺症は、以下の通りです。
神経性間欠跛行
しばらく歩くと足にしびれや痛みが生じ、休憩するとまた歩けるようになる症状。
これには以下の3種類の症状がある。
馬尾型
両下肢の広範囲にしびれや痛みがある。排尿・排便障害が出ることもある。
神経根型
片足のみにしびれや痛みが出る。
混合型
馬尾型の症状と神経根型の症状が両方出る。
- 手足のしびれ、痛み
- 脊椎固定術による胸腰部の可動域制限
脊柱固定術とは、骨を移植したり、プレートやスクリューなどの金属を入れることで、脊椎を固定させること。
これらの後遺障害が交通事故によるものだと認められると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。
該当する可能性のある等級と、それに応じた慰謝料金額については下で見ていきます。
脊柱管狭窄症の後遺障害等級認定は難しい?
脊柱管狭窄症が該当する後遺障害等級
上でご紹介した脊柱管狭窄症による後遺障害は、以下の後遺障害等級に該当する可能性があります。
後遺障害 | 等級 |
---|---|
しびれ・痛み等神経系統のもの | 7級4号 12級13号 14級9号 |
脊柱固定術の実施 | 11級7号 |
脊柱固定術による胸腰部の可動域制限(1/2以下) | 8級2号 |
後遺障害等級認定についてはこちら
脊柱管狭窄症による後遺障害が該当する可能性のある等級の、後遺障害慰謝料は以下の通りです。
表中の「弁護士基準」「任意保険基準」については、表の下で解説します。
等級 | 弁護士基準 | 旧任意保険基準* |
---|---|---|
7級 | 1000万円 | 500万円 |
8級 | 830万円 | 400万円 |
11級 | 420万円 | 150万円 |
12級 | 290万円 | 100万円 |
14級 | 110万円 | 40万円 |
*任意保険基準は現在では各社で異なり非公開
弁護士基準
示談交渉で、被害者が弁護士を立てていた場合に、加害者側に提示する金額
任意保険基準
示談交渉で、加害者側任意保険会社が被害者側に提示する金額
実際に受け取ることのできる慰謝料金額は、示談交渉の中で決められます。
脊柱管狭窄症の後遺障害等級認定は難しい?
脊柱管狭窄症は、上でもご紹介した通り、加齢によるものと判断されやすいです。
脊柱管狭窄症はある程度までは無症状で進行します。
したがって、交通事故後症状が出始めたとしても、本当に交通事故が原因なのかが争われる可能性もあります。
実際の裁判における被告側の主張をご紹介します。
原告は、本件事故の前から、(略)頸部脊柱管狭窄症を発症していた。
原告の神経症状は、治療中に事故直後よりも増悪しているところ、本件事故による外傷が原因であればそのような機転をたどることは考えられないから、原告の神経症状の増悪は上記の既存障害の進行によるものであるといえ、本件事故との相当因果関係がない。引用元:水戸地方裁判所平成26年(ワ)第731号
平成30年5月23日民事第2部判決
ただし、
- 交通事故が原因で症状が出たということが明らかである
- 交通事故をきっかけに脊柱管狭窄症について脊椎固定術を施した
という場合には、後遺障害として認められる可能性があります。
脊柱管狭窄症の慰謝料は減額される?
たとえ脊柱管狭窄症による症状が後遺障害として認められたとしても、上でご紹介した後遺障害慰謝料に対して、素因減額が適用される可能性があります。
素因減額
被害者が元々持っていた既往症や疾患、心因的な要因のために交通事故による傷害に寄与し、被害を拡大させたと思われる場合に、賠償金を減額すること。
脊柱管狭窄症は加齢によって生じることが多く、交通事故による外傷が原因であるとは認められにくいです。
したがって、脊柱管狭窄症は、交通事故によるけがを悪化させる原因の1つとして被害者が元々持っていたものと考えられ、素因減額の対象になりやすいのです。
実際に素因減額が適用された例をご紹介します。
(略)原告B1に脊髄の圧迫による神経症状が発生したこと(略)重篤なものとなったことについては、原告B1に本件事故前から広範囲にわたる脊柱管狭窄(略)等の既往があったことが大きく影響しているものと認められるから(略)40%の素因減額をするのが相当である。
引用元:東京地方裁判所 平成26年(ワ)第30124号
しかし、
- 元々あった脊柱管狭窄症は年相応のものであり、疾患とは言えない
- 脊柱管狭窄症が事故前からあった、外賀の悪化に寄与したとは言い切れない
等の場合には、素因減額が適用されない場合もあります。
実際の例を見てみましょう。
被告側の主張 |
---|
原告の頸部について、ヘルニア及び脊柱管狭窄症が認められる。 したがって、大幅な素因減額がされるべきである。 |
結果 |
本件事故により発生した損害について、原告の身体的素因又は精神的素因が影響を与えていると認めることはできないから、被告らの主張は採用できない。 |
大阪地方裁判所平成26年(ワ)第791号 平成26年(ワ)第7831号
被告側の主張 |
---|
素因である腰部脊柱管狭窄症等の影響により、著しく損害が拡大していることが明らかであるから、1割ないし2割程度の素因減額がなされるべきである。 |
結果 |
原告の持つ素因が年齢相応の変化を超えるものであると認めるに足りる証拠はなく、本件事故前には、これらの素因を原因とする症状が生じていなかったことに加え、損害の内容等も考慮すると、素因減額を適用するほどではない。 |
横浜地方裁判所平成27年(ワ)第3099号
脊柱管狭窄症は弁護士に相談を
交通事故|脊柱管狭窄症の注意点
ここまで見てきたことから、交通事故で脊柱管狭窄症と診断された場合の注意点をまとめてみましょう。
- 加齢によるものとして後遺障害が認められない可能性がある
- 後遺障害等級認定を受けても、素因減額される可能性がある
どちらも受け取れる賠償金額に大きく影響してきますし、被害者側としては交通事故が原因である後遺障害だと認識しているのにそれが認められないのはつらいものです。
このような場合は、後遺障害等級認定の申請や示談交渉を弁護士に任せることがお勧めです。
- 交通事故を扱う弁護士は後遺障害等級認定の申請サポートもしていることが多く、知識と経験に基づいたアドバイスをしてもらえる
- 示談交渉でも弁護士の主張であれば聞き入れてもらえる可能性がある
のです。
示談交渉については、被害者自身が主張をしても、弁護士の主張でないと聞き入れないという方針をとる保険会社もあるため、弁護士に代行してもらうことが重要です。
その場でできる無料弁護士相談
弁護士に依頼というと、
- 弁護士費用が心配
- 弁護士事務所まで行く時間がない
という問題があるかもしれません。
そのような場合はまず、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士