作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故責任

交通事故の加害者・被害者が負う責任|過失割合(責任割合)とは?

加害者の責任?被害者の責任?

交通事故は、加害者だけの過失(不注意)で発生する場合だけとはかぎりません。加害者と被害者の双方に過失がある場合も多くあります。
過失について、それぞれどのような責任を負うことになるのでしょうか。

  • 交通事故の加害者が負う3つの責任とは
  • 交通事故の被害者が負う責任とは
  • 民事責任に影響する過失割合(責任割合)とは


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交通事故「加害者」が負うべき3つの責任

交通事故の「加害者」には、負うべき3つの責任があります。

加害者が負う責任
  1. 刑事責任
  2. 行政責任
  3. 民事責任

ひとつずつみていきたいと思います。

①刑事上の責任

過失によって交通事故を起こし、人に傷害を負わせたり死亡させた場合、刑事上の責任が発生します。刑事罰を受けることで刑事上の責任を果たすことになります。

交通事故に関する代表的な刑罰を紹介します。

▼自動車運転処罰法
刑罰
過失運転致死傷 7年以下の懲役
7年以下の禁錮
100万円以下の罰金
危険運転致傷 15年以下の懲役
危険運転致死 1年以上の有期懲役
危険運転致傷※ 12年以下の懲役
危険運転致死※ 15年以下の懲役

※アルコール・薬物の影響

▼道路交通法
刑罰
救護義務違反※ 10年以下の懲役
100万円以下の罰金
報告義務違反 3月以下の懲役
5万円以下の罰金

※人の死傷が当該運転者の運転に起因する場合

社会の法秩序の維持のために、交通事故ではこのような懲役・罰金などの刑罰が科されます。

②行政上の責任

過失によって交通事故を起こし、人に傷害を負わせたり死亡させた場合、行政上の責任が発生します。運転免許の違反点数の加算反則金の支払いなどで行政上の責任を果たすことになります。

交通事故に関する違反点数の一部を紹介します。

▼違反点数の例
責任の程度
過失による死亡事故 20 13
重傷事故 治療期間
3月以上
13 9
治療期間
30日以上3月未満
9 6
軽傷事故 治療期間
15日以上30日未満
6 4
治療期間
15日未満
3 2

過去3年間の累積点数が一定基準に達すると、

  • 運転免許の効力の停止
  • 運転免許の取消

といった行政処分がおこなわれることになります。

③民事上の責任

過失によって交通事故を起こし、人に傷害を負わせたり死亡させた場合、民事上の責任が発生します。被害者に与えた損害に対して損害賠償を支払うことで民事上の責任を果たすことになります。

交通事故に関する損害賠償の内訳を紹介します。

損害賠償の内訳

このような損害を賠償することで民事上の責任を果たしていきます。

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交通事故「被害者」が負う可能性のある民事上の責任

民事上の責任

交通事故の「被害者」でも何かしらの過失(不注意)がある場合、民事上の責任を負わなければならない可能性があります。

事故の相手方である加害者が怪我をしたりしているなどの損害がある場合、被害者に過失が少しでもあれば民事上の責任が発生します。

被害者の民事責任

過失割合に応じて、損害賠償責任を負う

つづいては、民事上の責任である損害賠償に影響する過失割合(責任割合)について解説していきます。

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加害者が10対0で責任を負うとはかぎらない

交通事故の過失割合(責任割合)

交通事故では、事故の当事者双方に何らかの過失(不注意)があるケースが多いです。加害者が10対0の割合で責任を負うとはかぎりません。

そこで、「過失割合(責任割合)」という考え方がポイントになってきます。過失割合は、交通事故で負うべき責任のうち「民事上の責任」と大きくかかわってきます。

過失割合(責任割合)とは?

どのくらいの割合で不注意の程度があったのか示したもの

事故の当事者双方に不注意の程度がどのくらいで、どのくらいの責任を果たすべきなのかを数値化したものが過失割合(責任割合)です。

10対0100対010:0100:0
8対280対208:280:20
6対460対406:460:40

などといった具合に表され、過失割合に対応した損害賠償責任を負うことになります。
自分の過失分の責任は、自ら責任を負わなければなりません。

事例|10対0と9対1の違い

過失割合(責任割合)は、過去におこなわれた裁判例を参考にして作成された基準があります。この基準は書籍としてまとめられています。

過失割合の「基準」掲載書籍

「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」
(通称:赤い本)

「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕」
(通称:判例タイムズ)

このような基準にもとづいて、過失割合は決められることになります。

ここで実際にあった事例を見てみたいと思います。
責任を負うということが分かりやすいように、「10対0の交通事故」と「9対1の交通事故」を比較しながら見ていきます。

事例|10対0の交通事故

過失割合が10対0となる交通事故の代表的な事故類型は、後ろから追突するような事故です。

事故状況図

信号待ちなどの駐停車中に後ろから追突されるような事故は、過失割合が10対0になることが多くなっています。

過失割合10対0のポイント

加害者に対して、被害者が受けた損害の100%を請求できる

被害者に過失がないのであれば、被害者が被った損害のすべてを加害者が賠償することになります。

交通事故によって100万円の損害を被った場合は、加害者側に100万円を請求することができます。加害者側にも100万円の損害があった場合は、加害者の損害は全額自己負担することになります。

過失割合10対0でお互いに100万円の損害があったら?
A B
過失割合 0 10
損害額 100万円 100万円
請求可能額 100万円
自己負担額 100万円

事例|9対1の交通事故

過失割合が9対1となる交通事故の代表的な事故類型は、一方が優先道路を走行中の車と交差点で衝突したような事故です。

事故状況図

他にも、直進車に対して道路外の駐車場などに入ろうとした右折車と衝突した事故なども、9対1の事故類型に分類されます。

過失割合9対1のポイント

加害者に対して、被害者が受けた損害の90%を請求できる
損害の10%過失相殺され、被害者の自己負担)

加害者から、加害者が受けた損害の10%を請求される

9対1の過失割合分に応じて、お互いの損害に対してお互いが責任を負うことになります。

交通事故によって100万円の損害を被った場合は、加害者側に90万円を請求することができます。加害者側にも100万円の損害があった場合は、加害者側に10万円を支払う必要があります。

過失割合9対1でお互いに100万円の損害があったら?
A B
過失割合 1 9
損害額 100万円 100万円
請求可能額 90万円 10万円
自己負担額 10万円 90万円

加害者の使用者・会社が責任を負うことも?

交通事故で発生した損害賠償の責任を負う可能性のある人は、事故を実際に起こした当事者だけとはかぎりません。

たとえば、車の運転者が勤務中・業務中に事故を起こした場合などは運転者が勤める会社の使用者が責任を負う可能性があります。

法的根拠を確認しておきたいと思います。こちらをご覧ください。

(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

引用元:民法 第715条 第1項

加害者の使用者は、「損害賠償責任を負う」とあります。

事業主の例
  • タクシー会社
  • 運送会社

などの事業主は、雇用者が業務中に起こした交通事故の損害賠償責任を負う可能性があります。このような場合、運転者と使用者が賠償責任者となります。

もっとも、これは賠償金を二重取りできるという意味ではありません。
請求の選択肢としては、

  • 運転者に損害賠償の全額を請求
  • 使用者に損害賠償の全額を請求
  • 運転者と使用者に損害賠償の合計が総額となるようそれぞれに請求

いずれかをすることになります。

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交通事故の責任の所在を弁護士に相談

過失割合が10対0にならず損害賠償減額?

過失割合が10対0にならなければ、最終的に受け取る損害賠償の金額に影響することになります。ご自身の過失割合の程度によっては、損害賠償が減額されてしまうことになります。

「過失割合が9対1だと保険会社に言われたけど争いたい」
「提示された損害賠償の金額に納得いかない」

このようなお悩みがある方は、弁護士に相談するようにしていただきたいです。

ポイント

交通事故案件に注力する弁護士に相談する

弁護士なしで保険会社と示談交渉をおこなうことは可能ですが、保険会社は示談交渉のプロです。保険会社の言うままに示談してしまったら納得のいく金額が手に入らない可能性があります。

増額交渉(弁護士あり)

交通事故案件の経験を積む弁護士に依頼すれば、あなたに代わって保険会社との示談交渉をおこなってくれます。弁護士は弁護士基準(裁判基準)での交渉が可能なので損害賠償金の増額が期待できます。

アトムの弁護士に相談

アトム法律事務所は、数多くの交通事故案件を担当してきた経験をもつ弁護士が在籍しています。交通事故に注力する弁護士に相談したいという方は、アトムの弁護士にご相談ください。

アトムの弁護士は、対面相談LINE相談電話相談を実施しています。どの相談方法も無料なので気軽にご利用いただけます。

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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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